8月15日、Eric Hal Schwartzが「10 minutes babbling to ChatGPT works better than any perfect prompt」と題した記事を公開した。プロンプトを丁寧に磨けば磨くほど良い回答が返ってくる——そう信じていたSchwartzが、まったく逆のアプローチを試した結果、ChatGPTから「自分でも意識していなかった本音」を言い当てられた。その体験が、AI活用の常識を揺さぶる内容として注目を集めている。
「完璧なプロンプト」を磨くほど、情報が削れていく
多くのChatGPTユーザーは、プロンプトを何度も書き直し、関係なさそうな情報を削り、送信前に頭の中で整理する、という手順を踏んでいる。プロンプトエンジニアリングと呼ばれるこの実践は、より正確で的確な回答を引き出すための定石とされてきた。Eric Hal Schwartzもその一人だった。
しかし彼が試したのは、まったく逆のアプローチだ。ChatGPTのAdvanced Voice Modeを起動し、約10分間、頭に浮かんだことを無編集でひたすら話し続けるというものだ。途中で話題が変わっても、文章が途中で終わっても、修正しない。
Advanced Voice ModeはOpenAIが2024年秋に一般公開した音声会話機能で、従来の音声入力とは異なり、感情のトーンや間(ま)を含んだ自然な会話をリアルタイムで処理できる。テキストの書き起こしを経由しない分、話し言葉の"ゆらぎ"がそのままモデルに届くという特性がある。
実験の内容は次の通りだ。最初に「これから数分間、いろんな話題を話し続けるので、終わるまで返答しないでほしい」とChatGPTに伝えてからスタート。実際に話した内容は、旅行の候補地、新しいテレビの購入検討、子どもを連れてアクション映画に行く適切な年齢、誕生日プレゼントのアイデア、昔もらって気に入った本シリーズの話……と、脈絡なく飛び回った。
ChatGPTが返した分析が核心をついていた
10分間の"雑談"を受け取ったChatGPTは、数秒で応答した。
「いくつかのトピックを話されていましたが、それほどバラバラではありません。考えていることのほとんどは、時間をうまく使うことに集約されます。楽しめる家族旅行を選ぶこと、個人的なプレゼントを贈ること、日常の決断を必要以上に難しくしないこと。それぞれを個別に解決しようとするより、あなたは本当は、普通の瞬間を少しだけ豊かにする方法を探しているのだと思います。」
さらに追加で感想を求めると、ChatGPTは少し皮肉を交えてこう返した。
「あなたの頭は、30個のタブを開いたまま閲覧しているような状態に見えます。表面上はホリデー、テレビ、本、料理、誕生日プレゼントをバラバラに話しているようでしたが、すべて同じゴールを指していました。日常をより楽しくしながら、複雑にしない方法を探しているようです。それが明らかになると、個々の決断がずっと理にかなって見えてきました。」
ここでSchwartzが強調しているのが、タイトルにも通じる「本音を言い当てられた」という感覚だ。彼はプレゼントについて意識的に話したつもりはなかった。しかしChatGPTは会話の中から「あなたはギフトを値段で語ることがほぼない。熱量が上がるのは、相手が理解されたと感じた瞬間や、驚いた瞬間の話をしているときだ」という観察を返してきた。Schwartzが自覚していなかった「プレゼントに対する価値観」を、ChatGPTは10分間の雑談から抽出してみせたのだ。
なぜ「雑談」の方が機能するのか
Schwartzが得た最大の気づきはシンプルだ。丁寧に書いたプロンプトは、実は有益な情報を削り取っている。
編集前の思考には、矛盾、未完成のアイデア、繰り返し登場するテーマが含まれている。これらはまさに「自分が本当に何を求めているか」を示す手がかりだ。しかし、2〜3文にまとめようとした瞬間、それらは消える。
音声で話し続けると、ChatGPTは「何度も戻ってくる話題」「興奮しているポイント」「途中で静かにやめてしまったアイデア」を拾える。これらのパターンは、整理されたプロンプトにはほぼ現れない。
プロンプトエンジニアリングの文脈で言えば、これは「コンテキストの量と質」に関わる問題でもある。簡潔なプロンプトは指示の明確さを高める一方で、モデルが推論に使えるコンテキスト情報を意図せず削ぎ落としてしまう。雑談アプローチはその逆で、ノイズに見えるものの中に、本人すら整理できていない優先順位や価値観が埋め込まれているという前提に立つ。
「雑談」アプローチが特に有効な場面
Schwartzは「特定のアウトプットが欲しいときは、きちんと書いたプロンプトの方が適している」とも述べている。雑談アプローチが有効なのは、自分の考えをまとめたいとき、何が本当にやりたいことか整理がついていないときだ。そういった場面では、ChatGPTにしばらく聞き役に徹してもらい、まとめてもらう方が機能する。
具体的に有効だと考えられる場面を整理すると、次のようになる。
- キャリアや進路など、選択肢を絞り込めていない意思決定の場面
- 創作や企画の初期段階で、アイデアの方向性が定まっていないとき
- 日常の複数の悩みが混在していて、何から手をつけるべきかわからないとき
音声モードが前提のテクニックではあるが、テキストで同様に「これから長めに話します、読み終わるまで返答しないで」と前置きした上で、箇条書きすら使わず思ったまま書き連ねるという応用も考えられる。
試し方:実践のポイント
この手法を試す際の手順をSchwartzの実験から抽出すると、次の通りだ。
- Advanced Voice Modeを起動し、「話し終わるまで返答しないでほしい」と最初に伝える
- テーマを決めず、頭に浮かんだことを10分程度話し続ける(修正・編集しない)
- 話し終えたら、ChatGPTにパターンや共通テーマをまとめてもらう
- 「自分が特に熱量を持って話していた部分はどこか」を追加で問う
重要なのは「終わるまで返答しない」という最初の一言だ。これがなければ、ChatGPTは途中で話題に反応し始め、雑談の流れが途切れる。
詳細は10 minutes babbling to ChatGPT works better than any perfect promptを参照していただきたい。