8月16日、The Next Webが「Qwen is the world's most downloaded open model, by a smaller margin than Alibaba says」と題した記事を公開した。この記事では、AlibabaのQwenモデルがオープンモデルのダウンロード数で世界首位であることは事実だが、Alibabaが主張する数字とHugging Faceの実測値に大きな乖離がある点について詳しく紹介されている。
Alibabaが「30億ダウンロード」と主張、Hugging Faceの実測値は?
Alibabaは8月15日、自社のQwenモデルファミリーが累計30億ダウンロードを突破し、MetaやGoogleを抑えてオープンウェイトモデルの世界トップになったと発表した。中国のAIラボが「オープンモデル競争で勝利しつつある」と示す、最も明確な主張だ。
ただし、この数字の根拠として引用されたHugging Faceのレポート「State of Open Models」(前日公開)を実際に確認すると、数字が食い違う。
同レポートが記録したQwenのダウンロード数は約20億4500万(全リポジトリ含めると約20億6100万)。Alibabaが主張する30億との差は約10億弱、すなわちヘッドライン数字は実測値の約1.5倍に相当する。
首位であることは変わらない。だが、引用元のプラットフォームが実際に記録した数字より約3分の1大きい数字が独り歩きしている構図だ。
派生モデル数でも同様の乖離
同じパターンは派生モデル(fine-tuneやアダプテーションによる二次モデル)の数でも見られる。
- Alibabaの主張: 30万以上の派生モデル
- Hugging Face Hub上の実測値: 151,448件(同レポートの集計時点における計測値)
なお、この151,448件という数字はHugging Face Hubに公開されているリポジトリを対象に集計されたものであり、プライベートリポジトリや他プラットフォーム上の派生モデルは含まれない点に留意が必要だ。
それでも151,448件という数字は、MetaのHugging Face上のフットプリント全体の2.6倍に相当する。Qwenがコミュニティに根付いていることは数字が示している。
数字の解釈には注意が必要
Hugging Face自身もレポートの中で注意書きをしている。同社のダウンロード数はHugging Face Hub内の活動のみを計測したものであり、API経由の利用、プライベートな社内デプロイ、他プラットフォームで配布されたモデルは含まれない。
AlibabaはModelScopeという独自の配布プラットフォームを中国国内で運営しており、そこでのダウンロードは当然Hugging Faceの集計には入らない。Alibabaの30億という数字はこうした複数チャネルを合算した自社集計と見られるが、根拠の詳細は示されていない。
なおThe Next Webは以前にも、AlibabaがQwen3.8を世界2位のモデルと主張しながら根拠を示さなかった件を指摘している。
Qwenの実力と今後のリスク
数字の誇張があったとしても、Qwenがオープンモデルのデファクトスタンダードになりつつある実態は揺るがない。Hugging Faceのレポートは「Qwenは、開発者がfine-tuneやデプロイするモデルを選ぶ際のデフォルトワークフローの一部になった」と記している。
Alibabaは460以上のモデルをパーミッシブライセンスでオープンソース化し、東南アジアやアフリカにも自社クラウドを通じて展開している。一方でヘビーユーザーへの課金も検討している。
MetaとNvidiaも対抗して新しいオープンモデルをリリースしており、Nvidiaは中国を意識してオープンウェイトの強化を明言している。
Qwenの勢いに対するより大きなリスクは国内からかもしれない。中国政府は自国の主要AIモデルへの海外アクセスを制限する規制を検討中であり、実現すれば今のダウンロード数を支えてきたグローバルなリーチが失われる可能性がある。
詳細はQwen is the world's most downloaded open model, by a smaller margin than Alibaba saysを参照していただきたい。