8月16日、gHacksが「Perplexity Makes $34.5 Billion Unsolicited Bid to Buy Google's Chrome Browser」と題した記事を公開した。AI検索スタートアップのPerplexityが、Googleの主力ブラウザChromeに対して345億ドル(約5兆円)の非公式買収提案を行った。注目すべきは、この提案額がPerplexity自身の企業評価額を上回るという異例の構図だ。米国の反トラスト訴訟によってChromeの売却命令が現実味を帯びる中、AIスタートアップが"世界最大のブラウザ"を狙った動きとして業界に波紋を広げている。
自社評価額を超える買収提案という異例の構図
この提案で真っ先に目を引くのは、提案額がPerplexity自身の評価額を上回っているという点だ。Perplexityは2025年初頭の資金調達ラウンドで約140億ドル(約2兆円)の評価額を獲得したと報じられており、345億ドルという提案額はその2倍以上に相当する。自分の時価評価より高い資産を買おうとしている格好であり、買収を完結させるには外部投資家などからの大規模な追加資金調達が不可欠になる。
現時点でGoogleはChromeの売却に応じておらず、Perplexityの提案はあくまで「ポジショニング上の動き」にとどまる。とはいえ、法的プロセスが実際に進行する前から買い手候補として名乗りを上げることには、競争入札での優位性確保という戦略的意味がある。
※なお、本文中の「約5兆円」は執筆時点の為替レートに基づく概算換算であり、公開時のレートによって実際の円貨換算額は異なる場合がある。
なぜ今、Chromeなのか — 反トラスト訴訟という文脈
背景にあるのは、米国で進行中の反トラスト(独占禁止)訴訟だ。米司法省(DOJ)はGoogleが検索市場において違法な独占を形成していると主張し、連邦裁判所もこれを認定した。その是正措置として浮上しているのが「Chromeの強制売却命令」であり、DOJはGoogleの検索支配を支えるブラウザ配布チャネルを切り離すことを求めている。Googleはこの判断の一部について控訴する見通しで、実際に売却が命じられるかどうかはまだ不透明な段階にある。
この訴訟をめぐっては、OpenAIやYahooも将来的なChrome取得に関心を示していると報じられており、Perplexityはこれらの競合に先んじて意思表示を行った格好だ。法的プロセスが具体化する前から存在感を示し、競争入札になった際に有利な立場を確保しようという戦略とみられる。
ChromeはなぜAI企業にとって魅力的か
Chromeは世界で数十億人のユーザーを抱える、最も広く使われているウェブブラウザだ。その価値の核心は、ブラウザのデフォルト検索エンジン設定にある。歴史的にこの設定がGoogleの検索・広告ビジネスへのトラフィックを支えてきた経緯があり、反トラスト訴訟の焦点もここにある。Googleはかつて、Chromeのデフォルト検索エンジンとしての地位を維持するためにAppleに年間数百億ドル規模の対価を支払っていたと報じられており、このデフォルト設定がいかに巨大な経済的価値を持つかが伺える。
AI検索を主力製品とするPerplexityにとって、Chromeを手に入れることは自社のAI検索を数十億人のブラウジング体験に直接組み込む手段になり得る。これはGoogleが長年、検索支配の基盤として活用してきた仕組みをそのまま引き継ぐことを意味する。ユーザーがブラウザのアドレスバーに検索クエリを入力するたびに、GoogleではなくPerplexityのAI検索が呼び出される世界を想定した動きといえる。
不確定要素が多い「提案」の現状
現時点では確認されていないことが多い。Perplexityが345億ドル規模の資金調達を実現できるかは未知数であり、仮にChromeが売りに出された場合、より資本力の大きい企業が名乗りを上げる可能性も排除できない。前述のとおりOpenAIやYahooも関心を示しているとされ、競争入札となれば価格はさらに高騰することも考えられる。
また、そもそもGoogleの控訴が認められれば売却命令自体が覆される可能性もあり、Chrome売却が現実に起きるかどうか自体がまだ見通せない。Googleはこの提案に対してコメントを出しておらず、反トラスト手続きと控訴のプロセスはなお進行中だ。Perplexityの提案は、法的手続きの不確実性を前提にした「先手を打つ」姿勢の表明という側面が強い。
詳細はPerplexity Makes $34.5 Billion Unsolicited Bid to Buy Google's Chrome Browserを参照していただきたい。