8月16日、AIチャート専門サービスのaicharts.grok.me(AIサービス間の市場シェアをSimilarwebデータをもとに可視化するダッシュボード)が「ChatGPT lost 22 points of web share in a year」と題したデータ記事を公開した。AIチャットボットのウェブ訪問シェアにおいて、ChatGPTが1年間で22ポイントを失い、GeminiとClaudeが急伸しているという市場動向を示す内容だ。
数字だけを見ればインパクトは大きい。かつて76%を占めていたChatGPTのシェアが1年で54%まで落ち、その分をGeminiがほぼそのまま吸収した。ただし、この「シェア」が何を計測しているかを正確に理解しないと、データの意味を見誤る。
シェア変化の実態
Similarwebのウェブ訪問データ(デスクトップ+モバイルウェブ)に基づき、AIチャットボット主要3サービスのシェアは以下のように変化した(データはMomentic経由、2026年5月時点)。
| サービス | 1年前 | 2026年5月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 76% | 54% | −22pt |
| Gemini | 6% | 28% | +22pt |
| Claude | 1% | 9% | +8pt |
ChatGPTは依然として過半数を維持しているものの、1年間で22ポイントという大幅な下落を記録した。Geminiの増加幅がChatGPTの減少幅とほぼ一致しており、シェアがそのまま移転した格好だ。Claudeはウェブ訪問でも1%から9%と9倍近い伸びを示している。
「ウェブ訪問シェア」が測っていないもの
この数字を読む上で外せない注釈がある。これは月間アクティブユーザー数でも、売上でも、APIコール数でもない。あくまで「ウェブブラウザ経由でサービスのURLを直接訪問した回数」のシェアだ。
GeminiについてはGoogleが月間10億MAUを超えると報告しているにもかかわらず、ウェブシェアは28%にとどまる。これはGeminiのユーザーの多くがAndroidアプリ、Googleアシスタント、あるいはGoogle検索に組み込まれた形で利用しており、gemini.google.comをブラウザで直接開くケースが相対的に少ないためだ。Googleはブラウザ(Chrome)、検索(Google Search)、スマートフォン(Android)という複数の接触点を持ち、ウェブ訪問以外の経路でユーザーを大量に取り込んでいる。
逆にいえば、ChatGPTのウェブシェア低下はChatGPT自体の利用が減っているというより、競合の流入経路が多様化した結果という解釈もできる。OpenAIはアプリやAPI経由の利用が急増しており、ウェブ訪問の比重が相対的に低下している可能性がある。
なぜ今この数字が注目されるか
2023年のChatGPT登場以降、AIチャットボット市場はOpenAIがほぼ一人勝ちの状態が続いてきた。しかし2025年以降、GoogleがGeminiを検索やAndroidに深く統合し、AnthropicがClaudeのアップデートを重ねて企業需要を取り込むなど、競合各社の追い上げが顕著になっている。今回のウェブ訪問データはその変化を可視化した一つの断面として、業界内外で広く参照されている。
データソースはSimilarwebおよびMomentic(Similarwebベース)の2026年7月時点のものだ。Similarwebのウェブ訪問推計は業界標準として広く参照されているが、アプリ内利用やAPI経由のアクセスを含まない点は、このデータを解釈する際に特に意識しておく必要がある。「ChatGPTが敗北」という見出しで拡散されやすい数字だが、計測対象の前提を踏まえた上で参照するのが正確な読み方だ。
詳細はChatGPT lost 22 points of web share in a yearを参照していただきたい。