8月14日、Kim LaCapriaが「As AI boosts productivity, Meta workers are hearing a harder message: Expect even more work」と題した記事を公開した。AIによる生産性向上の恩恵が労働者の休息ではなくさらなる仕事量の増加に転化されているというMetaの実態について詳しく紹介されている。
MetaのCTOが「休暇を求めるな」と一蹴
2026年7月、Meta社内で開かれたQ&Aセッションで、ある社員がこんな質問を投げかけた。「AIで生産性が上がったなら、かつてあった『Meta Days』(従業員への追加休暇制度)を復活させることはできないか?」
これに対するCTO(最高技術責任者)Andrew Bosworth(現MetaのCTO。ハードウェア・AIインフラ部門を統括する)の返答は、会場の空気を読まないものだった。
「親御さんに聞いてみてください。『ボスと話す機会があるたびに、休みをもっとくれって言え』と。それがキャリア戦略として正しいかどうか、親御さんに判断してもらってください」
Business Insiderが報じ、Futurismが引用したこの発言は、AIが生産性ツールとして普及するなかで、その恩恵が誰に渡るのかという問題を浮き彫りにした。
「AIが来ても4時間労働にはならない」
Bosworthの発言は、業界全体に広がるトーンとも一致している。
同じく2026年7月、OpenAI CEOのSam Altmanはポッドキャストで「AIが週4時間労働をもたらすとは思っていない」と発言。むしろAIによって人々はより多く働くようになると示唆した。さらにBosworthは「ユーザーのためにもっと多く、もっとクールなものを作るために余分な時間を使ってほしい」と付け加えたとされる。Altmanも「労働者は秘かに、もっと忙しくなることを喜ぶだろう」と述べたという。
テック企業の経営陣が描くAI活用の未来像は、「効率化→余裕の創出」ではなく「効率化→アウトプット増大」という方程式になっている。
生産性の果実は誰のものか
この問題の核心は、AIがもたらす生産性向上の分配にある。
作業が速く終われば、勤務時間の短縮や柔軟な働き方につながると考える労働者は多い。しかしBosworthの発言が示すのは逆方向の論理だ。生産性が上がれば期待値も上がる。休息の余地は増えない。
Metaを取り巻く状況も、この発言の重みを増している。同社は2026年初頭に約8,000人を解雇しており、CEO Mark ZuckerbergはAIに触れながら、6月には「社員の士気が急落している」と認めていた。解雇の不安と生産性プレッシャーの両方にさらされている社員に向けた発言として、Bosworthのコメントはあまりにも無頓着だという見方もある。
Futurismはこの状況を「ナレッジワーカー(知識労働者)にとって特に危険なシグナル」と表現している。AI企業が労働市場の混乱に対して無関心に見える以上、その警戒感は根拠のないものではない。
労働現場に分配されない「効率化の利益」
記事が一貫して問うているのは、AIによる効率化の恩恵が誰に帰属するかという構造的な問題だ。経営陣の論理に従えば、生産性が向上した分だけ労働者への要求水準も引き上げられる。余剰時間は休息ではなく追加アウトプットの原資として吸収される。
この構図は、AIの普及にともなう「労働の代替と補完」をめぐる議論とも接続する。効率化による利益を誰がどのように享受するかというルール形成が追いついていない現状では、現場の労働者が交渉力を持ちにくい。Bosworthの発言は、その非対称性を端的に示した事例として読むことができる。
AIが「働き方を楽にする」というナラティブが普及する一方で、少なくともMetaにおいては、生産性向上はより多くの成果を求める根拠として使われている。この構図が業界全体のスタンダードになるとすれば、エンジニアを含むすべての知識労働者にとって他人事ではない。
詳細はAs AI boosts productivity, Meta workers are hearing a harder message: Expect even more workを参照していただきたい。