8月14日、MacStoriesが「Hands-On with Computer History: OpenAI's Take on Agent Memory」と題した記事を公開した。OpenAIが新たに導入したエージェントメモリ機能「Computer History」のレポートだ。最大の驚きは、MacのローカルファイルをAIが自ら読み解き、「今日あなたが何をしていたか」を10分ごとに自動でMarkdown文書にまとめてくれるという点にある。毎回ゼロから説明しなければならなかったAIとのやり取りが、根本から変わる可能性を秘めた機能だ。
Mac上の作業をMarkdownメモリに変換する「Computer History」
OpenAIがPro・Business・Enterprise向けに公開したComputer Historyは、Macでの作業内容を自動的に記録し、ChatGPTおよびCodexのコンテキストとして活用するエージェントメモリ機能だ。
従来、AIエージェントに依頼するたびに「今どのプロジェクトで、どのファイルを使っていて、誰と連携しているか」といった背景情報を毎回ゼロから説明する必要があった。記事の筆者はこれを映画『グラウンドホッグ・デー』に例えており、「エージェントにとって毎スレッドがループ地獄だった」と表現している。Computer Historyはその問題を自動化によって解消しようという試みだ。
仕組み:10分ごとにMarkdownファイルを生成
Computer HistoryはMac専用・デフォルトOFFの機能で、デスクトップアプリの「Integrations」設定から有効化する。
動作の核心はシンプルだ。作業中のアプリ切り替えや操作内容をインタラクションイベントとして記録し、10分ごとにYAML front matterつきのMarkdownファイルとして保存する。スクリーンショットや音声、プライベートブラウジングは記録しない点がChronicle(スクリーンショットを使う旧来の試験的機能)との大きな違いだ。
生成されるMarkdownの内容は具体的で、たとえば筆者の作業セッションでは以下のような記述が含まれていた:
The user continued writing
computer history.mdin Obsidian'sMacStories Vault, refining the section that explains how Computer History differs from the earlier Chronicle preview...
さらに、「重要な非自明なコンテキスト」として使用ファイル名・内部ツール名・会話相手名などが構造化されて記録される:
Important non-obvious context about the user
MacStories Vault- Obsidian vault where the Computer History article draft was active.Federico Viticci- Messages conversation briefly active during the writing session.
1セグメントあたり約700語のレポートが生成され、1日の終わりには数十ファイルがMac内のフォルダに蓄積される設計だ。
プライバシーとデータの扱い
エンジニアが気にする点として、データフローを整理しておく。
- ローカル記録:インタラクションイベントはまずMac上にローカル保存される
- 48時間後に削除:イベントファイルはCodexのエフェメラル(一時)セッションで処理された後、48時間で削除
- Markdownはローカル保存:生成されたメモリファイルはMac上に残る
- ChatGPT/Codexへの送信:質問時に関連するMarkdownファイルがプロンプトのコンテキストとして送信される
なお、ここで言うCodexはOpenAIが提供するコード生成・実行に特化したAIエージェント環境を指す。かつてGitHub Copilotの基盤として知られた旧来のコード補完モデル「OpenAI Codex」とは別のプロダクトであるため、混同に注意されたい。
つまり、ローカルのMac作業内容がOpenAIのサーバーに送信されることを許容できるかどうかが、この機能を使うかどうかの判断基準になる。Passwords・1Password・Keychain Accessといったセンシティブなアプリは除外設定が可能だ。
SiriとChatGPTの比較と「スキル自動化」への期待
記事ではmacOS Golden Gate(Appleが現在開発中とされる次世代macOSの開発コード名)に搭載される新しいSiriとの比較も行われている。「今日作業していた記事のドラフトをFedericoに送って」という指示に対し、ChatGPT+CodexはComputer UseでMarkdownファイルを見つけてMessagesのスレッドに添付したのに対し、Siriはドラフトのテキストを\n文字入りの生Markdownとして本文に貼り付けた。筆者は「それは求めていなかった」と明記している。
筆者がComputer Historyに最も期待するのは、繰り返しタスクのスキル化だ。「さっきやった作業をスキルにして」という一言で自動化を構築できる可能性がある。締め切りに追われる中でオートメーション構築のために手を止めることなく、作業の流れの中でスキルを蓄積できる点が実務的な価値として挙げられている。
ただし、筆者自身「数時間しか使っていない」と明記しており、本格的な評価は今後のレポートに委ねられている。
詳細はHands-On with Computer History: OpenAI's Take on Agent Memoryを参照していただきたい。