8月14日、WCCFtechが「NVIDIA & LG Bring Next-Gen Humanoids To Life To Advance The Physical AI Realm While Also Building Vera Rubin Factories」と題した記事を公開した。NVIDIAとLGが次世代ヒューマノイドロボット・AI工場・自動運転の3領域で包括的な提携を締結したことを伝えており、2027〜2028年にかけて具体的な製品・インフラが動き出す段階に入っている。
NVIDIAとLGが3領域でMoU締結
NVIDIAのCEO Jensen HuangとLGのCEO Kwang Mo Koが、カリフォルニア州サンタクララのNVIDIA本社で覚書(MoU)に署名した。対象領域はロボティクス・AI工場・モビリティの3つで、それぞれ具体的な製品・サービスが動き始めている段階だ。LGは家電・ディスプレイ・自動車部品・製造設備まで手がける大手コングロマリットであり、NVIDIAにとっては製造・家電・モビリティのすべてのドメインを一度にカバーするパートナーを取り込んだ格好となる。
最大のポイント:2足歩行ヒューマノイドがCES 2027でデビュー
エンジニア視点で最も注目すべきは、LGが開発中の次世代2足歩行ヒューマノイドだ。
このロボットの構成は以下の通りである:
- コンピュート: NVIDIA Jetson Thor(ヒューマノイド向けに最適化されたSoC。前世代のJetson Orinから大幅に強化されたTransformer演算性能を持つ)
- AIフレームワーク: NVIDIA Isaac GR00T(ロボット基盤モデルの学習・推論を統合するプラットフォームで、NVIDIAのPhysical AI戦略の中核を担う)
- 安全システム: NVIDIA Halos for Robotics(ロボット向けに設計された機能安全ソフトウェアスタック。ISO 26262などの安全規格に対応し、ロボットが人間と同じ空間で安全に動作するための監視・フェイルセーフ機能を提供する)
- 基盤モデル: LG独自のOpen Humanoid Foundation Model
公開予定は2027年第1四半期、CES 2027での発表が予告されている。
また、LGはこれとは別にCLOiDと呼ばれる車輪型ロボットも発表する。CLOiDはテネシー州にある洗濯機製造ラインへの投入が予定されており、実際の生産環境での検証を経てから工場全体に展開される計画だ。「まず本番環境で検証してからスケール」という現実的なアプローチを取っている点が特徴的であり、2足歩行のヒューマノイドとは異なる実用フェーズの製品として位置づけられる。
AI工場:Vera Rubin採用、80MW規模も計画
もう一つの大きな動きがAI工場の構築だ。LGはNVIDIA Vera Rubin(NVIDIAの次世代GPU/NPUアーキテクチャ)とNVIDIA DSX(AI工場向けのリファレンスアーキテクチャ。ネットワーキング・ストレージ・コンピュートを統合した大規模推論・学習環境の設計指針を提供する)を組み合わせたAI工場リファレンスサイトを建設する。
- 2027年: AI工場リファレンスサイト稼働予定
- 2028年前半: 韓国・天安(チョナン)に80MW規模のAI工場を建設予定。Physical AIおよびロボティクス向けの計算基盤となる
80MWという数字は大規模データセンターと同等のスケールであり、LGが自社のロボット・AI開発向けに相当の計算リソースを内製しようとしていることを示している。単なる外部クラウド利用にとどまらず、垂直統合型でPhysical AI開発を加速する意図が読み取れる。
自動運転:DRIVE Hyperionを車載プラットフォームへ
3つ目の柱として、LGはNVIDIA DRIVE Hyperionを採用したAI定義車両(AI-Defined Vehicle)向けプラットフォームを開発する。AI定義車両とは、車両の機能・性能をソフトウェアとAIによって動的に定義・更新できるアーキテクチャを指し、従来のハードウェア中心の設計から大きく転換する概念だ。DRIVE Hyperionは車両のインフォテインメントシステムや各種自動車ソフトウェア機能を担う統合コンピュートプラットフォームとして機能し、LGはこれをベースに自動車メーカー向けの車載ソリューションを展開する構えだ。
背景:Physical AIが本格加速するタイミング
NVIDIAはJensen Huangが「Physical AI時代の幕開け」と繰り返し強調しており、日本での人型ロボット企業との連携など、グローバルでパートナーシップを積み上げている段階にある。今回のLGとの提携は、そのエコシステム戦略において製造・家電・モビリティを横断する大手を取り込んだ点で特筆に値する。ロボティクス向けコンピュートから工場インフラ、そして車載プラットフォームまでを一社との連携でカバーするという構造は、NVIDIAがGPUベンダーからPhysical AIプラットフォーマーへと転換を図る姿勢を改めて示している。
Jensen Huangはこう述べている。
「Physical AIの本質的な機会は、あらゆるマシンに現実世界を理解し、人間と安全に共存しながら行動する能力を与えることだ。家庭から工場の現場、そして道路に至るまで、日常生活を再定義することになる」
この言葉が示す通り、今回の提携はNVIDIAにとって特定の製品リリースにとどまらず、Physical AIエコシステムの構築に向けた長期的な布石として読むべきだろう。
詳細はNVIDIA & LG Bring Next-Gen Humanoids To Life To Advance The Physical AI Realm While Also Building Vera Rubin Factoriesを参照していただきたい。