8月14日、tftc.ioが「Wood Mackenzie: 72% of US AI Data Center Power Requests Are Phantom Load」と題した記事を公開した。この記事では、AIデータセンター向けの電力需要申請の72%が実態を伴わない「幻の負荷」であるとするWood Mackenzieの分析について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
1,066GWのうち、実際に供給されるのは28%
エネルギー調査会社Wood Mackenzieの試算によると、米国内のデータセンタープロジェクトが申請した電力量は合計1,066ギガワット(GW)にのぼるが、グリッドオペレーター(電力系統の運用事業者)が実際に供給を約束すると見込まれるのは約298GW(28%)に留まる。差し引き768GW分の申請は現実化しないということだ。この数字はBloombergが2026年8月12日に最初に報じた。
現在の米国データセンター全体の電力容量は約24GWである。申請総量の1,066GWという数字との乖離は、「AIが電力を食い尽くす」という語りがいかに誇張されていたかを示している。
なぜこれほどの"幽霊申請"が積み上がったのか
仕組みは単純だ。データセンター開発者は、どの電力会社が最速・最安で電力を供給できるか不確かなため、複数の電力会社に同時並行で接続申請を提出していた。各申請はキューの中で独立した実需要として記録され、かつ申請時に意味のある財務コミットメントを求められない構造だった。
この結果、系統連系キュー(電力系統への接続待ちリスト)は投機的・重複的な申請で膨れ上がり、電力会社・グリッド計画者・政策立案者がそれを実需要として扱い続けた。
Wood Mackenzieの2025年Q4パイプラインレポートでは、2025年末時点の米国データセンターパイプラインの開示容量は241GWで、そのうち実際に開発が進んでいるのは33%のみ。Q4に新規追加された容量は約25GWで、Q3の約半分のペースに落ちている。主要開発者の設備投資(capex)見通しも、2023年以降初めての減速が2026年に予測されていた。
2026年4月時点のWood Mackenzieの発表では、600GWが電力供給契約を探している状態に対し、契約を確保済みのものは183GW——確約率は約**23%**であり、今回の28%という数字とほぼ整合する。
Wood Mackenzieのグリッドエッジ担当グローバルヘッド、Ben Hertz-Shargel氏は構造的な問題を指摘している。「計画容量の多くは、南部・南西部に集中した少数の巨大投機プロジェクトを持つ新規開発者によるものだ」。また系統側のミスマッチとして、PJM(米国東部の主要グリッド運用機関)では電力会社が新規大口需要として約束した容量が、それを支える発電計画容量の2倍に達していると指摘した。
電力会社はすでに対策に動いており、申請時に多額の保証金を要求したり、高い信用格付けの提示や担保徴収によって投機的な申請を弾くようになっている。テキサス州でも474GWのデータセンター申請が審査対象となっており、州レベルで同様の問題が表面化している。
物理インフラへの波及
問題は申請数字の話にとどまらない。送電容量調査、変電所の増強、発電計画といった実際の物理インフラへの投資判断が、常に大部分が架空だった需要シグナルを前提に行われてきた。
気候調査機関Sightline Climateの2026年2月レポートでも同様の推計が示されており、追跡中の777プロジェクト・190GW分のうち、2026年パイプライン容量の30〜50%は稼働しない可能性があるとされている。
Wood Mackenzieの現実的なシナリオでは、米国データセンター容量は2030年に約110GWに達する見込みだ。これは確かな成長だが、系統連系申請の生データが示す規模の6分の1以下である。
「AIがビットコインマイニングの電力を奪う」論の崩壊
この記事が政策的に重要な含意を持つ点がある。「AIデータセンターの莫大な電力需要」は、ビットコインマイナーを系統連系キューや電力購入契約から排除する際の政治的根拠として使われてきた。立法者・ESGキャンペーン・一部のグリッドオペレーターがAIの予測需要を後ろ盾にしてきたわけだ。
その72%が幻だとすれば、マイナーが競合していたのは実負荷ではなくプレスリリースだったことになる。ビットコインマイニングは電力を消費するか、そうでなければ停止するかという明確でインタラプティブル(停止可能)な負荷であり、幽霊申請を出さないという点でグリッドにとって合理的なリソースだという主張だ。
なお、DOEがサバンナリバーサイトでの1GW AIデータセンターにAmentumを選定したことや、OpenAIがStargateポートフォリオ向けに直接電力取引に乗り出している動きは、フロンティアプレイヤー自身が「申請ではなく確実な電力確保こそが制約」と認識し始めていることを示している。
今後の検証指標としては、Wood Mackenzieの四半期パイプライン更新とFERC(米連邦エネルギー規制委員会)の系統連系キューデータが焦点になる。28%の確約率が今後の報告で大幅に上方修正されるか、768GW分の幽霊申請のうち相当部分が24か月以内に確約済みグリッド契約に移行すれば、この「過剰申請バブル」の見立ては弱まる。
詳細はWood Mackenzie: 72% of US AI Data Center Power Requests Are Phantom Loadを参照していただきたい。