8月14日、RuntimeWireが「SCOOP: OpenAI is Building a ChatGPT Wallet for Agentic Purchases」と題した記事を公開した。OpenAIがChatGPTのエージェント操作に使える決済ウォレット機能を開発中であることを、アプリのリバースエンジニアリングによってスクープしたものだ。まだ公式発表はなく、OpenAIはコメントを拒否しているが、コード内には「Introducing ChatGPT Wallet」と題されたUIが完全な形で埋め込まれていた。
ウォレット機能をリバースエンジニアリングで発見
RuntimeWireは、WindowsのChatGPT/Codexデスクトップアプリのバンドル(パッケージバージョン 26.803.10989.0、内蔵アプリ 26.803.81509、Codexビルド 6415)をリバースエンジニアリングし、未公開の機能を発見した。
アプリのASARファイル(Electronアプリで使われるアーカイブ形式)を解析したところ、「Introducing ChatGPT Wallet」と題されたアナウンスモーダル、カード登録フロー、保存・リトライ・成功の各状態を示すUIコンポーネントが含まれていた。フィーチャーゲート 3398492218、コネクタ connector_openai_wallet、リソース internal://wallet-vgs-card-enrollment が実装内に参照されている。
ここで登場する VGS(Very Good Security) は、カード番号などの機密データをアプリケーションに直接触れさせることなくトークン化・保管するサービスだ。フィンテック領域で広く採用されており、internal://wallet-vgs-card-enrollment というリソース名はOpenAIがVGSのセキュアなフォームを使ってカード情報を収集する設計であることを示唆している。
RuntimeWireはASARを改変せずにハッシュ・展開し、クライアント側の表示条件をバイパスしたクローンアプリ上でUIを再現。カード情報の入力は一切行っておらず、バックエンドが有効かどうかも未確認と明記されている。OpenAIは取材に対してコメントしていない。
なぜこれが重要か——サブスク課金とは別の「エージェント専用」決済レイヤー
OpenAIはすでにサブスクリプション課金のためにユーザーのカード情報を保持しているが、ChatGPT Walletはそれとは別物だ。UIに添えられたコピーには、「ChatGPTがタスクを実行する際に、保存された支払い方法を使用できる」と記載されており、エージェントが自律的にチェックアウトまで完結できる設計であることが読み取れる。ユーザーがカードを登録するのはOpenAI側のアカウントに対してであり、エージェントはそこに紐づいた支払いトークンを利用する形だ。
OpenAIのエージェント決済への取り組みはこれが初めてではない。時系列を整理すると:
- 2025年9月29日:StripeとのInstant CheckoutおよびAgentic Commerce Protocolを米国向けに提供開始。暗号化された支払いトークンを加盟店に渡し、決済・配送・サポートは加盟店が担う設計だった。
- 2025年12月:Instacartとの統合を追加。ChatGPTを離れずに食料品カートを組み立てて購入できるように。
- 2026年3月24日:方針転換。初期のInstant Checkout設計では「必要な柔軟性を提供できなかった」として、加盟店が独自チェックアウト(会員プログラム・既存決済システムを保持したまま)を持ち込む形にシフト。
ChatGPT Walletはこの方針転換のあとも、アカウントレベルの支払い認証情報をOpenAIが保持し続けようとする姿勢を示している。加盟店がチェックアウトを制御しつつ、ChatGPTがユーザー承認済みの支払いトークンを供給したり安全なフォームを自動入力したりする形であれば、両者は共存できる。エージェントが複数の加盟店やサービスをまたいで動く際に生じる「カード情報を何度も入力する」という摩擦を解消することが主な狙いだ。
「タスク」という言葉が示す射程範囲
UIのコピーが「タスクの実行」という表現を使っている点は、EC以外への拡張を示唆する。OpenAIは2026年7月にChatGPT Work(複数アプリをまたいで長時間の作業を自律的にこなすエージェント)を発表しており、ウォレットが加わると、予約・注文・有料サービスの購入まで含めた「金銭が絡む操作」をエージェントが担える構成になる。
認証と権限管理という難問
ブラウジングやドキュメント作成と比べて、決済は認証の難易度が格段に上がる。OpenAIの元来のInstant Checkoutポリシーでは、ユーザーが各ステップを明示的に承認し、特定の加盟店・金額に対して暗号化トークンを認可する設計だった。
ウォレットの実装にはカード情報を会話の外で収集するセキュアな入力セッションが含まれており、OpenAIが別途案内している「チャットやファイルにカード情報を入力しないこと」というガイドラインとも整合している。VGSを介したトークン化により、OpenAI自身がカード番号の平文を保持しない設計にできる点も、このガイドラインとの一貫性を保つうえで重要だ。
ただし、コードからは以下の点は判明していない:
- OpenAIが手数料を受け取るか
- コンバージョンデータを収集するか
- 複数の無関係な加盟店にウォレットが提供されるか
- 一回限りの購入・定期実行・長時間エージェント後のトランザクションのどれを対象とするか
それぞれで必要な承認フロー・利用上限・不正検知の仕組みが異なり、設計の複雑さはここに集中する。
現時点での評価
コードの存在は「製品として開発が進んでいる」ことを示す確度の高い証拠だが、リリース時期・最終仕様・認証ルールはいずれも未定だ。エージェントが金銭を扱う時代への布石として、今後の公式発表が注目される。
詳細はSCOOP: OpenAI is Building a ChatGPT Wallet for Agentic Purchasesを参照していただきたい。