8月12日、Varietyが「AI Music Generator Suno Strikes Licensing Deal With BMG as It Preps New Label-Backed Models」と題した記事を公開した。AIによる音楽生成サービスのSunoが音楽会社BMGとライセンス契約を締結し、業界公認モデルの開発に向けた動きを加速させているという内容だ。
SunoとBMGが合意——AI音楽の「正規化」に向けた布石
Sunoは、AIによる楽曲生成サービスとして知られる米国のスタートアップ。その学習データに著作権楽曲を無断使用したとして、複数の音楽レーベルから訴訟を受けている。
今回の契約では、SunoがBMGの原盤音源の利用料を支払うとともに、過去モデルの学習にBMGの楽曲が使用されていた分についても遡及的に清算する内容が含まれている。BMGはWarner Music Group(WMG)に続いてSunoと和解した大手音楽会社となる。なお、WMGとの和解は2025年末ごろに成立したとされており、今回のBMGとの合意はその流れを受けた第二の大型和解として位置づけられる。
Sunoの共同創業者兼CEOのMikey Shulman氏は声明の中で「音楽の未来を責任ある形で構築するには、音楽を作る人々や彼らを代表する企業と直接協力することが必要だ」と述べた。
BMG側のCeline Joshua氏(エグゼクティブ・バイスプレジデント/グローバルマーケティング&ストリーミング担当、Executive Vice President, Global Marketing & Streaming)は、「選択肢を持つことが原則」と述べ、今回の契約がアーティストとソングライターに対して「明確な経済的保護」と「新たな創造的可能性」を確立するものだと位置づけた。
BMGの立場——Anthropicは訴えつつ、Sunoとは和解
今回の合意で注目すべきは、BMGの二面的な姿勢だ。
BMGは今年初め、Anthropicを著作権侵害でカリフォルニア連邦裁判所に提訴している。Bruno MarsやRolling Stonesなどの楽曲が無断で学習データに使われたと主張しており、同訴訟は現在も継続中だ。つまり、BMGはAI企業全般を拒絶しているのではなく、「条件次第で協調する」という実利的な路線を選んでいる。
また、BMGは先月、WMG・Universal Music Group・Sony Musicとともに、AIが生成した楽曲のチャートランキング資格に関するガイドライン案を共同提案した。「実質的に人間が制作した」楽曲のみをチャートの対象とするという内容で、業界がAI音楽の扱いを制度的に整理しようとしている動きの一環だ。
Sunoが進める「正当化」の取り組み
Sunoは今回の契約に加え、業界からの信頼獲得に向けた複数の施策を同時進行させている。
- 業界公認モデルの準備:ライセンスを取得した楽曲データをもとにした新モデルを近日公開予定と発表
- 透かし(ウォーターマーク)の導入:ダウンロードした楽曲にAI使用を示す透かしを埋め込む
- **ダウンロード制限の設定**:無料・有料の各利用ティアでダウンロード上限を設け、低品質なAI生成コンテンツの乱用を抑制
訴訟は続く——和解で全てが解決するわけではない
SunoはUMGおよびSony Musicからの著作権侵害訴訟をまだ抱えており、先月にはドイツの裁判所がSunoがアメリカおよびドイツのGEMA(著作権管理団体)の著作権法に違反しているとの判決を下した。
BMGおよびWMGとの和解はSunoの業界内での立場を強化するが、現時点では全方位的な解決には程遠い状況だ。
AI音楽生成サービスの著作権問題は、SunoとBMGの契約のような「個別和解」を重ねることで業界標準が形成されていく段階にある。ライセンスの経済条件や遡及的な清算の仕組みは、今後のAI企業と権利者との交渉の雛形になり得る。
詳細はAI Music Generator Suno Strikes Licensing Deal With BMG as It Preps New Label-Backed Modelsを参照していただきたい。