8月10日、MacRumorsが「Apple Briefly Posts China Guide for Connecting Siri to Qwen AI」と題した記事を公開した。Appleが中国向けサポートサイトにSiriとAlibabaのQwen AIを連携させるためのガイドを掲載したのは8月8日のことだったが、翌9日には削除されており、公開はわずか1日足らずで終わった。Appleのカスタマーサービスが「新機能ローンチの通知は受けていない」と認めたことで、Mac向け展開の不透明さが改めて浮き彫りになっている。
SiriにQwen AIを接続する手順書が一瞬だけ公開された
Appleの中国向けサポートサイトに中国語のガイドが掲載されたのは8月8日で、Reutersが最初に発見した。内容は、中国本土の対象MacユーザーがAlibaba製のQwen AI(通義千問:Alibabaが開発する生成AIモデルファミリー)をSiriおよびWriting Toolsに接続する方法を説明するものだった。
ガイドによれば、この連携機能には以下の条件が定められていた。
- macOS 26.6以降が必要(macOS 26はAppleの2026年版メジャーアップデート)
- ユーザー自身のQwenアカウントへのサインインが必須
- Alibabaは送信されたデータをモデルの訓練・改善に使用することを禁じられている
機能的には、Siriが写真やドキュメントの分析など複雑なリクエストをQwenに委譲できるようになり、Writing ToolsはQwenを用いてテキストや画像を生成できる。iPhoneやiPad向けの同等ガイドは今回公開されなかった。
この構成は、他国で既に提供されているChatGPT連携機能と同様の設計だ。SiriがChatGPTに複雑なリクエストを渡し、Writing Toolsに「Compose」オプションを追加する、いずれもオプトイン形式の仕組みを踏襲している。Qwen連携においても同様に、ユーザーが能動的に設定を行わない限り有効化されない設計が採用されていた。
公開翌日に削除、Appleは「新機能のローンチ通知は受けていない」
ガイドは8月9日に削除された。中国のニュースアグリゲーターReadHubが消滅を報告し、TechNodeによればAppleのカスタマーサービスは中国メディアに対し「新機能ローンチの通知は受けていない」と回答した。公式に機能がリリースされる前にガイドだけが先行して掲載されてしまった形だが、その経緯についてAppleは公式に説明していない。
テックアナリストのLiu Dingding氏はGlobal Timesに対し、「削除は完全な撤回ではなく、規制プロセスに絡む技術的な調整が残っているためではないか」と述べている。専門家の見立てでは、Appleが意図的に公開を取り下げたというよりも、規制対応の最終ステップが未完了のまま誤ってページが公開された可能性が高いとみられている。
繰り返されるパターン:中国のAI規制が背景に
この展開は3月に起きた一件と同じパターンだ。あの時は、Apple Intelligenceそのものが規制当局の承認なしに一部の中国ユーザー向けに一時ライブ状態になった後、オフラインに戻された。AppleとApple Intelligenceを取り巻く中国での「フライング公開→削除」という流れは、これで二度目となる。
中国はAI機能のリリースに厳格な規制を設けており、Appleのような外資系IT企業には国内プロバイダーとの提携を事実上義務付けている。提供前にはCAC(Cyberspace Administration of China:中国サイバースペース管理局)による審査・承認が必要であり、このプロセスが機能公開のボトルネックとなり続けている。
パートナー選定の面でも紆余曲折があった。Appleはもともと中国AI連携の主要パートナーとしてBaiduを選んでいたが、2025年2月の報道でBaiduのモデルがAppleの品質要件を満たさなかったとして、Alibabaがメインパートナーに交代し、Baiduはサポート役に回ったことが明らかになっている。
その後、CACは7月にApple Intelligenceの中国展開を承認した。ただしこの承認はiPhone向けのみであり、iPadおよびMac向けの承認時期については明言されていない。今回削除されたガイドがMac向けに限定されていた点は、このiPhone先行という承認状況と整合している。
Macへの展開時期は依然不明
今回の一時公開は、Mac向けQwen連携の具体的なタイムラインを示す最も明確なシグナルだった。macOS 26.6というバージョン番号が明記されていたことは、Appleがソフトウェア側の準備をある程度進めていることを示唆している。しかし規制承認が完了していない以上、ガイドの掲載が近々のロールアウトを確約するものではなく、Appleが正式にMac向けQwen連携を再ローンチする時期は現時点では不明なままだ。
詳細はApple Briefly Posts China Guide for Connecting Siri to Qwen AIを参照していただきたい。