8月8日、InfoWorldが「A brief guide to AI-powered software development environments」と題した記事を公開した。現在注目されているAI搭載開発環境6種の特徴と使い分けを論じた内容で、中でも並列実行と仕様駆動開発(SDD)を軸に設計されたZenflowが最も詳しく取り上げられており、単なるコード補完の枠を超えたワークフロー全体の自動化という方向性が鮮明に打ち出されている。
各ツールの特徴と位置づけ
AI支援の開発環境は急速に多様化しており、どのツールを選ぶかは実務上の判断が問われる場面になってきた。記事では以下の6ツールが取り上げられている。なお、これらのツールはVS CodeやJetBrains IDEといった既存エディタのプラグインとして動作するものから、スタンドアロンのIDEまで形態が異なる点に留意が必要だ。
**GitHub Copilot**はVS Code向けとして最も成熟したAIコーディングプラグインの一つであり、幅広いAIモデルに対応している。市場での実績と統合の成熟度という点では現状トップクラスに位置する。
Google Antigravity 2.0はGeminiモデルを最大限に活用するための手段として紹介されている。スタンドアロンのデスクトップアプリ(Antigravity本体)、別途ダウンロードするIDE版、そしてターミナルからエージェントを操作できるCLI版の3形態が存在するとされる。
JetBrains AI(旧称:JetBrains Air)は比較的新しいエージェント型開発環境で、OpenAI・Anthropic・Googleのモデルに対して自前のサブスクリプションまたはAPIキーを持ち込む形式(BYOKモデル:Bring Your Own Key。利用者が自身のAPIキーを用いてモデルを呼び出す方式)を採用している。
Kiro IDEはバイブコーディング(大まかな自然言語の指示だけでコードを生成させるスタイル)と仕様駆動開発(SDD)の両方のフローをサポートする。無料プランではClaude系モデル2種が利用可能だ。ZenflowとともにSDDを正式にサポートする数少ないツールとして、記事内で対比的に言及されている。
**Zed**は記事内で「これまで使った中で最速のIDE」と評されており、多数の言語モデルとBYOKスタイルで連携できる。コラボレーティブコーディングやリモート開発機能も備える。
最も構造化されたアプローチ:Zenflow
記事の中で最も詳しく解説されているのが**Zenflow**だ。単なるコード補完プラグインではなく、ワークフロー全体を管理するオーケストレーション基盤として設計されている点が他ツールとの大きな違いである。CursorやWindsurfといった近年普及したAIエディタが「コード補完・チャットの高度化」を中心に据えているのに対し、Zenflowは「プロジェクト全体のタスク管理と並列実行」という次の層を狙っているといえる。
Zenflowのアーキテクチャは「ワークフローの頭脳がZenflow、実行はZencoder(同社製コーディングエージェント)」という分業構造になっている。なお、Zencoderという名称は会社名・IDEプラグイン名・エージェント名の3つに使われており、記事内でも「命名の混乱がある」と率直に指摘されている。
エージェントの選択肢はZencoderのほか、Claude Code・Codex・Geminiの計4種。IDEプラグイン向けには約9種のモデルが利用できる。
プロジェクト開始時には以下のワークフローから選択する:
- Quick Change:小規模な変更向け
- Fix Bug:バグ修正特化
- Spec and Build:仕様から実装まで
- Full SDD Workflow(仕様駆動開発):最大スコープ。要件定義を構造化された仕様書としてシステムに保持させ、実装が要件から乖離(ドリフト)することを継続的に防ぐフロー
仕様駆動開発(SDD)とは、コードを書く前に機能要件・データモデル・インターフェース仕様を明文化し、その仕様をエージェントの実行基盤として使い続けることで、実装の要件からのズレを防ぐ開発手法だ。AIエージェントが長期・大規模なタスクを自律的にこなすうえで、コンテキストの一貫性を保つ仕組みとして注目が高まっている。
カスタムワークフローの定義も可能で、チームの開発規約に合わせた設定ができる。
複数タスクの並列実行と分離環境も特徴的だ。各タスクは独立した**Git worktree**(単一のリポジトリから複数の作業ディレクトリを同時にチェックアウトできるGitの機能)上で動作し、エージェント間の作業がコードベースを汚染しない設計になっている。検証も自動化されており、テスト失敗時は自動修正が走り、すべての検証ゲートを通過した後にのみコードがシップされる。タスクの状態はKanbanボードまたはスタックリストビューで確認できる。

Zenflowはクイックチェンジから仕様駆動開発まで複数のワークフローに対応し、カスタムワークフローの定義も可能だ。
「勝者なし」という結論
記事の結論は明快で、「どのツールが最善かという答えはない。自分のユースケースに合うものを選べ」というものだ。
記事では、理想のツールとして「Zedのスピードと性能、KiroとZenflowの仕様駆動開発能力、GitHub Copilot・Google Antigravity 2.0・JetBrains Airのエージェント機能をすべて一つに詰め込んだもの」と表現しており、現状はどのツールも一長一短であることが示されている。
記事全体を通じて浮かび上がる軸は明確だ。単機能のコード補完で事足りるのか、それともワークフロー全体をエージェントに委ねる水準の自動化が必要なのか——この問いへの答えが、ツール選定の起点となる。SDDへの対応を明示的に謳うKiroとZenflowは、後者のニーズに応える方向性を先行して打ち出しており、今後のAI開発環境の一つの潮流を示している。
詳細はA brief guide to AI-powered software development environmentsを参照していただきたい。