8月5日、Futurum Researchが「Amazon Q2 2026: AWS Momentum Accelerates as AI Investment Climbs」と題した記事を公開した。Amazonの2026年Q2決算におけるAWSの成長加速、カスタムシリコン戦略、AIインフラ投資拡大の動向が詳しく紹介されている。
カスタムシリコンが戦略的差別化軸に
エンジニアの視点で特に興味深いのが、カスタムチップ事業の動向だ。
TrainiumとGravitonを合わせたチップ事業の年間売上は250億ドル超の水準に到達した。
- Trainium:AIトレーニング向けチップ。AnthropicとOpenAIから複数年・複数ギガワット規模のコミットメントを獲得しており、大規模AIの主要プレイヤーから実需要を得ている
- Graviton:汎用クラウドコンピューティング向けチップ。上位1,000社のEC2利用企業のうち98%が使用。Graviton5は同4比で最大25%の計算性能向上、同等インスタンスとの比較で最大30〜40%のコストパフォーマンス改善を主張。前四半期比でGraviton全体の売上コミットメントはほぼ3倍に増加し、Graviton5の成長ペースはGraviton4の約2倍だった
NVIDIAへの依存を減らしつつ、サプライチェーンと価格設定の主導権をAWS側に引き寄せる狙いだ。生成AIブームによってGPU需要が急増する中、NVIDIAのH100/H200系チップは慢性的な供給不足が続いており、HBMメモリの逼迫もあってクラウド各社のコスト構造を直撃している。自社設計チップへの移行はその対抗策として位置づけられる。※編集部の考察
AWSが18四半期ぶりの最高成長率を記録
Amazonの2026年Q2決算で最も注目すべき数字は、AWSの前年同期比36.7%成長だ。これは過去18四半期で最速の成長率であり、年換算売上高は1,690億ドルに達した。
AWS全体の受注残(バックログ)は4,960億ドルに膨らみ、前年同期比で3桁成長を記録。2027年末までに電力供給容量を2025年比で倍増させる計画を進めており、2027年分および2028年の一部容量はすでに予約済みだという。AIラボや生成AIアプリケーションが大規模な計算リソースを消費しているが、Futurum Researchは「より大きな長期的機会は、推論をまだ本格導入していないエンタープライズの本番ワークロードにある」と分析している。
Amazonの決算全体でも売上高は2,006億ドル(前年同期比+20%)、営業利益は275億ドル(同+43%)、営業利益率は**13.7%**(前年同期11.4%から拡大)と好調だった。
エージェントAIでスタックの上位へ
AWSはBedrock、Bedrock AgentCore、Kiro、Quickなど複数のエージェント型AIサービスを展開している。
Bedrock(AWSのフルマネージド基盤モデルサービス)は現在数十万社の顧客を抱え、直近6か月で獲得した顧客数はローンチから最初の2年間の累計を上回った。Q2 2026の顧客支出は過去全四半期の合計を超えた。
Kiro(仕様ドリブンのコーディングエージェント)は前四半期比でユーザー数が3倍に増加。AWSは競合比で最大50%コスト効率が高いと主張している。
Quickは企業向けのAIワークコンパニオンとして、メール・カレンダー・ファイルのほか、Slack、Salesforce、Jira、Teams、ServiceNow、Adobe、Moody's、Snowflakeと連携しつつ、既存のアクセス制御を維持する設計になっている。
Continuum(AWSが提供するエージェント型セキュリティサービス)は、エージェントを使ってコードの脆弱性を自動で発見・優先順位付け・検証・修正する機能を持ち、エンタープライズのAI採用における実際の障壁に対処するものだ。
小売・広告でもAIが成長を牽引
AWS以外の事業でも、AIとの連動が数字に表れてきた。
- 2026年上半期に同日・翌日配送の件数が前年比40%超増加
- Amazon Nowは全世界250都市以上に展開
- 食料品のGMV(流通総額)は昨年1,500億ドル超。同日配送対応都市は米国内2,300都市に拡大し、生鮮品の月間アクティブ顧客数は2026年初頭から50%増
- Alexa for Shoppingの直近12か月のユーザー数は3億5,000万人超。アクティブユーザーはほぼ2倍、インタラクション数は前年同期比5倍超に増加
投資拡大がフリーキャッシュフローを圧迫
課題も明確だ。Amazonは2026年通期のキャピタルエクスペンディチャー(設備投資)見通しを約2,000億ドルから約2,200億ドルに引き上げた。この数字はAmazon全体の設備投資総額であり、データセンター・物流・AIインフラを含む広範な支出を対象とする。主な上振れ要因はメモリコストの上昇とAWS需要の継続だ。
その結果、直近12か月のフリーキャッシュフローは76億ドルのマイナス(流出超)となった。不動産・設備の純購入額が前年同期比で661億ドル増加したことが主因だ。
Q3 2026のガイダンスは売上高1,970億〜2,020億ドル(市場予想2,039億ドルをやや下回る)、営業利益は225億〜265億ドルを見込む。
Futurum Researchは「次の段階の実行は、AWSとコンシューマー事業の両方でAI採用ペースを維持しながら、業界最大級のインフラ投資プログラムを正当化する十分なリターンを生み出せるかにかかっている」と締めくくっている。
詳細はAmazon Q2 2026: AWS Momentum Accelerates as AI Investment Climbsを参照していただきたい。