8月5日、Euronewsが「German court rules AI music generator Suno broke copyright rules」と題した記事を公開した。AIモデルの学習データ問題が法廷で決着しつつある中、欧州で初となる司法判断がAI著作権をめぐる国際的な議論に新たな基準を持ち込んだ。
ミュンヘン地裁、SunoのAI学習を「著作権侵害」と断定
2026年7月31日、ドイツのミュンヘン地方裁判所は、AI音楽生成サービス**Suno**がドイツおよびアメリカの著作権法に違反したと判断する判決を下した。「AIモデルが楽曲を無断で学習データとして使用することは、ライセンスなしには著作権侵害に当たる」と裁判所が明言した点で、この判決はAI開発の実務に直接影響しうる先例となる。
訴訟を起こしたのは、ドイツの音楽著作権管理団体**GEMA**(Gesellschaft für musikalische Aufführungs- und mechanische Vervielfältigungsrechte)だ。GEMAは10万人以上の音楽クリエイターを会員に持つ著作権管理団体である(「欧州最大級」という表現は編集部による補足であり、元記事に同表現はない)。2025年1月に提訴したGEMAは、SunoがAIモデルの学習にGEMA管理下の楽曲を無断使用し、ライセンス取得も報酬の支払いもしていなかったと主張していた。
裁判所は、SunoがGEMAの管理楽曲を「違法に取得・処理・複製した」と認定した。Sunoが支払うべき損害賠償額はまだ確定していない。
GEMAが強調する「国際的な先例」
GEMAのCEO、トビアス・ホルツミュラー博士(Dr. Tobias Holzmüller)は勝訴後、次のようにコメントした。
「今日、裁判所は一点を明確にした。盗まれた知的財産の上に構築されたAIモデルは、法的保護を受けられない。AIサービスプロバイダーは、会員の作品を無断で使うのではなく、ライセンス料を支払わなければならない」
GEMAの理事長ラルフ・ヴァイガント博士(Dr. Ralf Weigand)も、この判決が「アメリカを含む各国でも権利行使が可能になることを示した」と強調し、クリエイターにとっての希望と自信につながると述べている。
今回の判決で注目されるのは、ドイツの裁判所が米国著作権法への言及を判決に含めた点だ。ただし、ドイツ裁判所が米国法を直接適用・執行する管轄を持つわけではなく、これはあくまでドイツ国内の判断における法的評価として示されたものである点には留意が必要だ。その上で、欧州の司法判断が米国法の文脈にも踏み込んだことは、今後の国際的な訴訟戦略や和解交渉において先例として援用される可能性がある。
相次ぐ音楽業界との法的対立
Sunoを巡る訴訟はGEMAが初めてではない。2024年には、Warner Music Group、Sony Music Entertainment、Universal Music Groupの3大レーベルがSunoとUdioを著作権侵害で提訴している。
ただし、その結果は今回と異なった。Warnerはライセンス契約を締結することで和解に至っており、訴訟が必ずしも全面対立で終わるわけではないことを示している。
GEMAとの今回の判決は和解ではなく司法判断による認定であり、業界への影響は大きく異なる。ライセンス交渉のテーブルにつく前に、「学習データの無断使用は違法である」という裁判所のお墨付きが得られた形だ。これにより、今後GEMAが他のAI事業者に対して交渉や提訴を行う際の根拠がより強固になると見られる。
AI開発者が注視すべき点
今回の判決が示す論点は明快だ。「学習データとして楽曲を使うこと」がライセンスなしには著作権侵害に当たると、裁判所が明確に認定した。
米国では同様の訴訟が複数進行中であり、欧州での先例が米国の裁判にどう影響するかが今後の焦点となる。なお、画像・テキスト生成モデルの学習データ問題への波及については、元記事の直接の論点ではないが、学習データの無断使用をめぐる法的論理は音楽以外の領域にも共通する構造を持つ。※編集部の考察として付記する。
詳細はGerman court rules AI music generator Suno broke copyright rulesを参照していただきたい。