8月5日、Next Platformが「AMD Catches The Agentic AI Wave And Will Ride It Up Masterfully」と題した記事を公開した。この記事では、AMDが2026年第2四半期に過去最高収益を達成し、Nvidiaとの競争において独自のポジションを構築しつつある現状について詳しく紹介されている。注目すべきキーワードは「エージェンティックAI(Agentic AI)」だ。AIが自律的にタスクを連鎖実行するこの手法が急速に普及したことで、データセンター向けの高速CPUおよびGPU需要が一気に押し上げられており、AMDはその波を巧みに捉えつつある。
AMDがNvidiaに勝てない、という前提は正しいのか
AIハードウェア市場でNvidiaの独占が続くという見方が一般的だが、Next Platformの執筆者Timothy Prickett Morganは「それはCPU市場でも同じことを言われていた」と釘を刺す。AMDはかつてIntelとのCPU戦争を二度戦い、最終的に追い抜いた実績がある。
この「CPU戦争」の経緯は重要な文脈だ。AMDは2000年代初頭にAthlonでIntelのPentiumシリーズに肉薄し、一度は市場を席巻したが、その後Intel Core世代に押し返された。しかし2017年以降、Epycサーバー向けCPUでクラウド事業者への浸透を着実に進め、今やハイパースケーラー市場で無視できない存在となった。この歴史的な「盛り返しのパターン」こそが、筆者がGPU市場でも同様の軌跡を描きうると主張する根拠だ。
現時点でAMDは、MetaおよびMicrosoftと共同開発したラックスケールシステム「Helios」を2026年後半に投入し、Nvidiaの「Vera-Rubin Oberon」ラックと真正面から競合する体制を整えている。記事によれば、HeliosはOberonに対してHBMメモリ容量で50%多く、AIフロップスで15%上回り、コスト・パー・トークン・パー・ワットでも30%優れるという初期ベンチマーク結果が示されている。なお、これらの数値はAMDの公式発表に基づくものであり、比較対象はVera-Rubin Oberonの公開仕様であると記事内で言及されている。独立した第三者による検証は現時点では行われていない点は留意が必要だ。
Q2 2026:数字で見るAMDの現在地
2026年第2四半期は同社史上最高の四半期となった。
- 総収益:115.4億ドル(前年同期比+50.1%)
- 営業利益:19.9億ドル(前年同期は1.34億ドルの営業損失)
- 純利益:約30億ドル(前年同期比+2.6倍、売上高比19.9%)
- 現金・投資残高:131.1億ドル
特にデータセンター部門が牽引役で、売上67.2億ドル(前年同期比+107.3%、前四半期比+16.3%)、営業利益21億ドル(営業利益率31.3%)を記録。前年同期は1.55億ドルの営業損失だったことを考えると、1年間での転換は鮮明だ。営業利益21億ドルは1ドル=約145円換算で約3,045億円、前年同期の損失1.55億ドル(同換算で約225億円の損失)からの反転という意味で、タイトルで訴求している「2,100億円超の黒字転換」はこの換算に基づいている。
内訳:CPU・GPU・DPUをどう読むか
AMDはEpyc CPU売上とInstinct GPU売上を明示しないが、記事筆者の試算では以下の通り:
- Epyc CPU:約33.5億ドル(前年同期比+74%、前四半期比-8.3%)
- Instinct GPU:約30億ドル超(前年同期比+2.6倍)
- Pensando DPU・AI NIC:約2.75億ドル(前年同期比約3倍)
- データセンター向けFPGA:約0.95億ドル(前年同期比+1.7倍)
Epyc CPUのうち73%はハイパースケーラー・クラウド事業者向け(前年同期比+75%)、残り27%が企業・通信・学術・政府向け(前年同期比+71.4%)という構成だ。
CEOが示した2027年へのロードマップ
Lisa Su CEOがウォール街向けの決算説明で示した見通しは強気だ:
- Epyc CPUビジネス:2026年後半に前年同期比+80%以上、2027年通年で+70%以上
- データセンタービジネス全体:2027年に倍増以上
- HBM・ウェーハ・基板・インターポーザーの調達余力も十分確保済みで、「Helios」向けに上振れ需要にも対応可能とした
この強気な見通しの背景には、前述のエージェンティックAIの急拡大がある。AIエージェントが自律的に複数のタスクを連鎖実行するワークロードは、従来の推論・学習とは異なるレイテンシ要件とスループット要件を持ち、高速なCPU・GPU双方への需要を急激に押し上げた。AMDは2026年前半、このエージェンティックAI向けサンドボックス需要の急増に一時的に対応しきれなかったと認めており、今回の調達余力確保はその反省を踏まえたものでもある。
市場全体の拡大という「AMDにとって都合のよい構造」
AMDがNvidiaのシェアを削っているわけではない、という点は記事内で明確に指摘されている。むしろ市場そのものが急拡大しており、AMDはその拡大分を比例的に取り込んでいる形だ。
AMD自身の市場分析によれば:
- データセンター向けAI GPU/XPU市場:2026年に3,600億ドル(+75.6%)、2027年に6,300億ドル(+75%)
- データセンター向けCPU市場:2026年に530億ドル(2025年比倍増)、2027年に960億ドル(+81.1%)
筆者は最終的に、CPU市場と同様にGPU市場も将来的には「NvidiaとAMDとArmコレクティブ(クラウド事業者の自社設計SoCを含む)でおよそ三等分」に落ち着く可能性を示唆する。その水準に達するのがいつになるかは不明だが、Heliosがラックスケール市場でゼロから始まる以上、AMDにとってはすべてがアップサイドだ。
詳細はAMD Catches The Agentic AI Wave And Will Ride It Up Masterfullyを参照していただきたい。