8月6日、PYMNTSが「Google Eyes $1.5 Billion Mechanize Deal to Enhance AI Coding」と題した記事を公開した。設立からわずか数か月、評価額5億ドルのスタートアップに対して15億ドル超の契約交渉を持ちかけるという異例のディールは、GoogleがAIコーディング競争において従来の買収とは異なるアプローチで技術と人材の囲い込みを加速させていることを端的に示している。
GoogleがMechanizeに15億ドル超の契約交渉
Business Insiderの報道(8月5日付)によると、GoogleはAIコーディングエージェントスタートアップのMechanizeと、人材の採用および技術の非独占的ライセンス契約に向けた交渉を進めている。契約の総額は15億ドル超とされているが、交渉は継続中であり、詳細は変わる可能性があるとされている。
Googleがこのディールで狙う目的は明確で、自社AIモデルのコーディング能力の強化だ。
Mechanizeとはどんな会社か
Mechanizeは2025年4月に設立を発表したスタートアップで、「経済の完全自動化」を目標に掲げている。具体的には以下を手がける。
- フロンティアコーディングエージェント(最先端のAIコーディングAI)向けの実行環境と評価基盤の構築
- モデルがその環境内でソフトウェアエンジニアリング作業を実行できるようにする仕組みの提供
- 強化学習および評価をサポートするためのモデルスコアリング
同社はX(旧Twitter)上で以下のようにコンセプトを説明している。
「コンピューターの操作、成功基準が曖昧な長期タスクの遂行、他者との連携、障害や割り込みに際した優先順位の再調整――人が仕事でやっていることの全範囲を捉えたシミュレーション環境と評価基盤を構築する」
設立発表と同時期の2025年4月には、ポストマネー評価額5億ドルで910万ドルの資金調達を完了している。それがわずか数か月後に15億ドル超のディール交渉の対象となっているわけだ。
Windsurf買収との類似構造
このディール構造で注目すべきは、従来型の買収ではなく非独占ライセンス+人材採用という形態を取っている点だ。
Googleは2025年7月にも、AIコード生成スタートアップWindsurfから複数の幹部・研究者の採用に成功した。このときも完全買収ではなく、24億ドルのライセンス料を支払い、非独占的な技術利用権を得るという形を取っている。
Mechanizeとの今回の交渉も同様の構造であり、Googleが「買収」を避けながら実質的に人材と技術を囲い込む戦略を繰り返していることは明らかだ。競合規制(独占禁止法審査)を意識した動きとも読める。
AIコーディング市場の競争激化
AIコーディングエージェント領域では、OpenAIのCodexがエンタープライズ向けの重要な成長エンジンになりつつあると2026年5月に報じられている。GoogleがMechanizeの技術と人材を取り込もうとしているのは、この競争への直接的な応答といえる。
なお、GoogleもMechanizeもPYMNTSのコメント要請には回答していない。
詳細はGoogle Eyes $1.5 Billion Mechanize Deal to Enhance AI Codingを参照していただきたい。