8月5日、The Decoderが「US appeals court allows Perplexity's AI shopping agent back on Amazon」と題した記事を公開した。米第9巡回控訴裁判所がPerplexityのAIショッピングエージェントに対するAmazonの差止命令を取り消した判決について詳しく紹介されている。
「アクセスしたのはユーザーであり、Perplexity社ではない」
米第9巡回控訴裁判所(サンフランシスコ)は、PerplexityがAmazon上でAIエージェントによるショッピング機能を利用することを禁じた差止命令を取り消した。Reutersの報道によれば、裁判所はAmazonの主張——PerplexityのAIエージェントが連邦コンピュータ詐欺法(Computer Fraud and Abuse Act、CFAA)に違反するという訴え——が認められる可能性は低いと判断した。
判決の核心は「アクセスの帰属」という法的論点だ。CFAAはコンピュータへの無許可アクセスと情報取得を禁じているが、控訴裁はAmazonのプラットフォームにアクセスしているのはAIエージェントを通じたユーザー自身であり、Perplexity社そのものではないと結論付けた。つまり争点は「AIか人間か」という技術的二項対立ではなく、「誰がアクセスの法的主体か」という帰属の問題である。
これは米連邦控訴裁がAIエージェントによるオンラインプラットフォームへのアクセスの合法性について下した初の判断だ。自律的に計画・推論し、ウェブ上のショッピングや取引を人間に代わって実行するエージェント型AIシステム全体に影響する判決といえる。
訴訟の経緯
Amazonは2024年11月、PerplexityがCometブラウザおよびそれに統合されたAIエージェントを通じて、Amazonの顧客アカウントに秘密裏にアクセスしていると訴えた。CometはPerplexityが2025年にリリースしたAI統合ブラウザで、AIエージェントがユーザーに代わってウェブ操作を自律実行できる点が特徴だ。このエージェントはユーザーに代わってショッピングアカウントにログインし、注文を実行できる。Amazonはセキュリティリスクを主張し、Perplexityが繰り返しの停止要求を無視したと訴えた。
2025年3月、カリフォルニア連邦地裁のMaxine Chesney判事はPerplexityのAIエージェント利用を一時的に禁じる仮差止命令を発令。ユーザーの許可を得つつもAmazonの承認なしにパスワード保護アカウントへアクセスした「強力な証拠」があるとし、Perplexityに対してAmazonデータのコピー削除も命じた。今回の控訴審判決によりこの仮差止命令は無効となった。ただし、訴訟本体の決着はついていない。
両社の主張と複雑な利害関係
Amazonは、サードパーティのAIは透明性を持って運用し、公式APIを尊重すべきだと主張。自社ツールの「Buy For Me」や「Rufus」アシスタントを引き合いに出した。一方、PerplexityのCEOであるAravind Srinivasはこれを「いじめ」と表現し、「ユーザーの代理として行動するエージェントは、人間ユーザーと同じ権利を持つべきだ」と主張した。Perplexityの広報担当Jesse Dwyerは「インターネットユーザーが望むAIを自由に選ぶ権利のために戦い続ける」とコメントした。
両社の関係には複雑な側面もある。PerplexityはAWSの顧客であり数億ドル規模のコミットメントを持つ。また、Jeff BezosはPerplexityの投資家の一人だ。
Amazonは今回の判決を不服として「判決に敬意を持って異議を唱える」とし、次の対応を検討中だと述べた。
エンジニアが注目すべき点
今回の判決が示した「アクセス主体はユーザーか、Perplexity社か」という論点は、今後のAIエージェント開発に直結する法的フレームワークの問題だ。ウェブスクレイピング、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ブラウザ自動化ツールなどは長年グレーゾーンで運用されてきたが、AIエージェントが一般化するにつれ、この種の訴訟が増えることは確実だ。
類似の法的文脈として参照すべきはhiQ Labs v. LinkedInの判例だ。第9巡回区はこの訴訟でも、公開情報へのスクレイピングがCFAAに違反しないとする判断を示しており、今回の判決と一貫した姿勢をとっている。なお、CFAAの違反は民事請求に加え、最大10年の禁固刑を含む刑事罰の対象ともなりうる重大な法域であり、サービス側がどこに「アクセス権限の境界」を設定するかがシステム設計上も重要になる。
第9巡回区の判断は、少なくとも西部地区における法的先例として機能する。AIエージェントがユーザー認証情報を引き継いでプラットフォームを操作するアーキテクチャを採用している開発者・企業は、この判決の射程を注視すべきだろう。
詳細はUS appeals court allows Perplexity's AI shopping agent back on Amazonを参照していただきたい。