8月4日、Knight First Amendment Institute at Columbia Universityが「Ninth Circuit Vacates Injunction Against Perplexity's AI Agents」と題した記事を公開した。米連邦第9巡回控訴裁判所がPerplexityのAIブラウザエージェントに対する差止命令を取り消した判決を詳報している。
事件の背景:AmazonはなぜPerplexityを訴えたか
AmazonはPerplexity AIを相手取り、PerplexityのAI搭載ブラウザがユーザーの操作を通じてAmazon.comのサーバーに不正アクセスしているとして提訴。コンピュータ詐欺・濫用防止法(CFAA: Computer Fraud and Abuse Act) およびカリフォルニア州の対応法(CDAFA)への違反を主張し、Perplexityのブラウザエージェントを用いてユーザーがAmazon.com上でタスクを実行することを禁じる予備的差止命令を申請した。一審の地裁はこの申請を認め、差止命令を発令していた。
これに対してPerplexity側が控訴し、Knight First Amendment Institute at Columbia University、ACLU、ACLU of Northern Californiaがアミカス・キュリエ(第三者意見書)を提出してAmazonの広義の法解釈を退けるよう裁判所に求めた。
CFAA解釈を狭めた重要判決
米連邦第9巡回控訴裁判所は、地裁が発令した予備的差止命令を取り消した。
争点はCFAAの「権限なくコンピュータにアクセスする行為」という要件が、AIブラウザエージェントの提供事業者に適用されるか否かだ。CFAAは企業がスクレイピングやbot対策の法的根拠として長年援用してきた法律であり、誰を「アクセス主体」と見なすかが本件の核心だった。
裁判所はAmazonの主張を退け、「Amazonのコンピュータにアクセスしているのは、Perplexityのツールの助けを借りたユーザー自身であって、Perplexityではない」 と判断した。AIエージェントはあくまでユーザーの操作を自動化するツールに過ぎず、ツールを提供する事業者がCFAAの「アクセス主体」にはあたらないという論理だ。
amicus briefで介入したKnight Instituteの立場
Knight Instituteのスタッフ弁護士であるJake Karrは判決を受けて次のようにコメントした。
「PerplexityやAIについてどう思うかにかかわらず、これはユーザーコントロール、そしてオンラインプラットフォームが公論をいかに形成するかを市民に伝える独立したジャーナリズムや研究活動にとっての勝利だ。CFAAのようなコンピュータ犯罪法は、ユーザーが自分自身の情報にアクセスする行為を自動化するツールを罰するために拡大解釈されるべきではない。」
なぜこの判決がエンジニアに関係するか
CFAAは長年にわたり、利用規約(ToS)違反をCFAA違反と同視する解釈を企業が主張し、スクレイピングツールやbot、研究目的のクローラーを法的に封じ込める手段として使われてきた。この解釈を巡っては、同じ第9巡回区においてhiQ Labs v. LinkedInでも争われており、第9巡回区控訴裁はLinkedInによるスクレイピング禁止を退ける判断を下している。今回の判決はその延長線上に位置づけられ、第9巡回区としてCFAA解釈を狭める方向での一貫した姿勢を示したものといえる。
今回の判決は、AIエージェントがユーザーの代わりにウェブ操作を行うという新たな文脈でCFAAの射程を明確に限定したものであり、ブラウザ自動化・AIエージェント開発に直接関わるエンジニアにとって参照価値の高い先例となる。
裁判所の判決全文はこちら、Knight Instituteのアミカス・ブリーフはこちら、本件の詳細はこちらで確認できる。
詳細はNinth Circuit Vacates Injunction Against Perplexity's AI Agentsを参照していただきたい。