8月4日、Morgan Taylorが「Workers say AI promised a productivity boost, but left them missing pre-AI office life」と題した記事を公開した。プロフェッショナルサービス企業Adaptavistによる調査をもとに、AIの導入が職場の生産性向上どころか業務の単調化や疲弊感をもたらしている実態を報告している。「AIが導入されれば、より価値の高い仕事に集中できる」——この数年のAIブームを支えてきた最大の約束が、現場の声によって真っ向から否定されている。
調査の概要:Adaptavistとは
本調査を実施したAdaptatvistは、AtlassianツールやDevOpsソリューションを中心に企業のデジタル変革を支援するプロフェッショナルサービス企業だ。同社は定期的に職場環境や技術導入に関する調査レポートを公表しており、今回の調査はオフィスワーカーを対象に実施された。記事では調査対象国やサンプル数の詳細は明示されていないが、結果として導き出された数字の一貫性は、AI導入の現場実態を示す一次資料として参照に値する。
「AI導入前が懐かしい」——3人に2人がそう答えた
調査の結果、回答者の約3分の2がAI導入前の働き方を懐かしく思っていると回答した。さらに3人に1人以上(36%超)が、生成AIを職場から完全に排除したいと答え、同じく36%が「なぜこの技術を使わされているのか理解できない」と回答した。
現場の声はAIブームの語り口と大きく乖離している。ツールを押し付けられた側の不満と困惑が、数字に端的に表れている。
AIが生み出しているのは「余計な仕事」
調査が浮き彫りにした問題は、単なる使い勝手の悪さにとどまらない。
- **49%**:AIの出力品質が低く、業務が遅延している
- **42%**:AIの出力をチェックする時間が、ツールで節約できる時間を上回っている
- 約半数:AIによって仕事が単調になり、やりがいを感じにくくなっている
生成AIの出力内容の検証、エラーの検出、意図した結果を得るための試行錯誤——これらはいずれも、本来の業務とは無関係のタスクだ。「時間を生み出すはずのツール」が逆に時間を奪っている構図が、数字として鮮明になっている。
なお、記事中で言及されている「AIの出力をチェックする」作業の具体的な内訳については元記事に詳述があるため、後述のリンクを参照されたい。
雇用不安が追い打ちをかける
効率への不満に加え、より根深い問題も浮かび上がった。回答者の54%が、AIによって5年以内に自分の仕事が危うくなると懸念していると回答した。
生産性が上がらないどころかストレスが増している状況で、雇用喪失への不安が重なれば、モチベーションや組織への信頼が損なわれるのは当然の帰結だ。
Adaptavistのレポートは次のように述べている。
「明確なガードレール、説明責任、そして方向性の一致がなければ、AIが効率化をもたらすという約束は、本来それが支援するはずの人々への負担増によって相殺されるリスクがある。」
企業に求められる対応
記事では、AI導入の失敗を防ぐためにいくつかの具体的な方向性が示されている。
まず、すべての業務にAIを強制するのではなく、技術が実際に効果を発揮できる領域に絞って展開することが重要だとされる。AIの使用が必須なのか任意なのか、生成された出力の検証責任は誰が負うのか、システムが誤りを犯した際の責任の所在はどこかを、導入前にあらかじめ明確にしておく必要がある。
従業員側でできる現実的な一手として、AIが実際に時間を節約できているタスクと、逆に工数を増やしているタスクを記録・整理することが挙げられている。これにより、自動化に値する作業とそうでない作業の判断精度が上がり、ツールの導入範囲を見直す際の根拠にもなる。
「AI導入=生産性向上」という単純な図式が現場では成立していないことを、この調査は数字で示している。調査対象はオフィスワーカー全般だが、ソフトウェア開発や技術職においても、AIツールの検証コストや習熟コストが本来の開発業務を圧迫するという類似の構造的問題は広く報告されている。ツールの選定だけでなく、導入プロセスの設計と現場への説明責任が、AI活用の成否を分けるという本調査の示唆は、技術組織にとっても重い問いを投げかけている。
※編集部の考察:上記のソフトウェア開発領域への言及は、元記事の調査対象から敷衍した編集部の解釈であり、元記事に直接記述されているものではない。
詳細はWorkers say AI promised a productivity boost, but left them missing pre-AI office lifeを参照していただきたい。