8月3日、CNBCが「Big Tech's Anthropic and OpenAI stakes are distorting the corporate earnings picture」と題した記事を公開した。この記事では、Microsoft・Amazon・AlphabetのAnthropicやOpenAIへの出資益が、大手テック企業の決算数字を実態以上に押し上げている実態について詳しく紹介されている。
S&P 500の増益率48%、うち「本業以外」が占める割合
AIブームを受け、AnthropicとOpenAIはいずれも時価評価額が1兆ドル近くに達している。Microsoft・AmazonはAnthropicとOpenAIの双方に出資しており、AlphabetはAnthropicに加えてSpaceXの株式も保有している。これらは未公開株であるため、四半期ごとに評価額の変動を損益計算書に計上しなければならない。問題は、この「含み益の計上」がソフトウェア販売やクラウドサービスから生まれる利益と混在し、決算の見た目を大きく変えている点だ。
金融データ会社LSEGの株式リサーチ責任者タジンダー・ディロン氏によれば、最新四半期のS&P 500全体の増益率は前年比**約48%。しかしAlphabetとAmazonの未公開株投資益を除外すると、約29%**まで下がる。アナリストのコンセンサス予想は24%成長だったため、実態はほぼ予想通りの水準だったことになる。なお、48%から29%への変化は約6割の水準への低下であり、「含み益が全体の4割近くを押し上げていた」と読み取るのが正確だ。
各社の実態:Amazonは240%増益→除外すると17%増
各社の数字を並べると、乖離の大きさが際立つ。
- Amazon:前年比で増益率240%超。ただし投資益(主にAnthropicから534億ドルの評価益)を除くと約17%。2026年2月には追加でOpenAIに500億ドルの出資を表明している。
- Alphabet:増益率が**約300%**急増。SpaceX(約5%保有)とAnthropicの評価益を除外すると約23%。
- Microsoft:影響はやや小さく、Anthropicへの出資益が増益率に約10ポイント上乗せ。OpenAI株の評価益は4億8000万ドル、AnthropicからはNet incomeで32億ドルの押し上げ。
これらの含み益は多くの場合「その他収益(Other income)」に計上されるため、各社で開示方法にばらつきがある点も分析を難しくしている。
「非GAAP」では除外されるが、サプライズ指標には影響
D.A. Davidsonのテクノロジーリサーチ責任者ギル・ルリア氏はCNBCに対し以下のように述べた。
"The headline earnings numbers were very much inflated by equity gains in OpenAI, Anthropic and SpaceX. Having said that, these types of moves tend to even out over time, which is why we typically exclude them from a non-GAAP view and from forecasts."
(意訳:「決算の見出し数字は、OpenAI・Anthropic・SpaceXの株式評価益によって大幅に水増しされていた。ただし、こうした動きは時間をかけて均されていく傾向があり、だからこそ私たちは通常、非GAAPベースの見方や業績予想からはこれらを除外している」)
ここで言うGAAP(Generally Accepted Accounting Principles=一般会計原則)とは、米国で法定された財務報告の基準であり、未公開株の評価変動も損益に含めて開示することが求められる。一方、非GAAPは企業や分析者が独自に定義する補足的な指標で、株式評価損益のような「一時的・非経常的な項目」を除外して本業の収益力を示すために用いられることが多い。アナリストの予想モデルは主に非GAAPベースで組まれているが、決算発表の見出し数字(EPS等)はGAAPベースで報じられることも多く、今回のような「見た目のサプライズ」が生じやすい構造になっている。
ほとんどのアナリストはこれらの一時的項目を予想から除外しているが、GAAPベースの決算発表数値には含まれるため、短期的に「予想を上回った」企業数が増える。今四半期、企業の実績はコンセンサス予想を平均7%上回った。長期平均は**4.4%**であり、見かけ上のポジティブサプライズが増幅されている形だ。
変動は双方向に働く:SpaceX株価急落の影響
ルリア氏が指摘するように、この評価益の計上は良い方向にも悪い方向にも振れる。SpaceXは未上場企業であり、直近の評価額は取引高値から約50%下落している。Alphabetは2026年9月期の決算で大幅な評価損を計上する可能性がある。
一方、AnthropicとOpenAIはいずれもSECに秘密裏(confidentially)に上場申請を済ませており、今後1年以内の上場が見込まれている。仮にAnthropicが近い時期にIPOを実施した場合、その評価益がSpaceXの評価損を相殺できる可能性があるが、IPOの時期・条件・評価額はいずれも現時点では確定していない。
未公開のうちからここまでBig Techの決算に影響を与えている構図は、両社が実際に上場した後はさらに複雑になりうる。
本業の成長は?
KKM FinancialのCEOジェフ・キルバーグ氏は、投資益を「ケーキの上のスプリンクル」と表現しつつも、それを除いた本業の成長も「jaw dropping(驚くべき)」水準だと評価している。また、マグニフィセント・セブンと呼ばれる大型テック株グループはS&P 500全体の時価総額の約3分の1を占め、最新四半期の売上高の**約35%**を担っており、こうした企業の決算が市場全体の数字を左右する構図は今後も続く。
詳細はBig Tech's Anthropic and OpenAI stakes are distorting the corporate earnings pictureを参照していただきたい。