8月3日、SFistが「California, European Union Enact Laws Requiring Embedded Data on AI-Generated Images」と題した記事を公開した。2028年からはスマートフォンやカメラがコンテンツ生成の瞬間に来歴情報を記録することが義務化される——そのような規制が、カリフォルニア州とEUで同日・意図的に同時施行された。デバイスレベルでのプロベナンス記録という最終段階を見据えると、この法律が単なるソフトウェア規制にとどまらないことがわかる。
※本記事中、元記事の施行日は「2025年8月2日」と記載されているが、本紹介記事の公開は2026年8月4日であり、元記事公開日は2026年8月3日となっている。施行日の「2025年」表記は元記事の記述をそのまま引用したものであり、年表記が記事内で混在している点についてはご留意いただきたい。
2028年義務化が示す規制の射程:デバイス本体に来歴記録を組み込む
今回の施行で最もインパクトが大きいのは、2028年から適用される要件だ。カリフォルニア州で製造されるスマートフォンおよびカメラは、写真・動画・音声を生成した瞬間にプロベナンス(来歴)情報をデバイスのファームウェアレベルで記録・保存することが義務づけられる。ソフトウェアのアップデートや企業側の運用対応では済まず、ハードウェア設計の段階から対応を組み込む必要がある点で、これまでのAI規制とは性質が異なる。
カリフォルニア州はシリコンバレーを擁し世界第4位の経済規模を持つ。同州で製造・販売されるデバイスへの要件は、事実上グローバルなデバイスメーカーに対する要件に近い影響力を持つ。
カリフォルニア州とEU、AI生成画像への透かし義務化を同時施行
2025年8月2日(現地時間)、カリフォルニア州の新たなAI透明性法とEUのAI法(AI Act)が同日に施行された。両者が足並みをそろえたのは偶然ではなく、立法段階から意図的に調整された結果である。
この法律は**2024年に成立したSB 942**で、生成AIを提供する企業に対し、AI生成の写真・動画・音声に「プロベナンスデータ」を埋め込むことを義務づけている。埋め込まれる情報は以下の3点だ。
- そのコンテンツがAIで生成されたか否か
- 使用されたAIシステムの名称
- 生成された日時
このデータは簡単には除去できない形式で埋め込まれ、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)が開発したようなコンテンツ認証ツールで検証・追跡できる。C2PAはAdobeやMicrosoft、Googleらが参画する業界団体で、AI生成コンテンツの来歴管理の標準化を進めている。
法律の背景:選挙偽情報・詐欺・ディープフェイクへの対抗
法案を共同提出したメンロパーク選出の州上院議員Josh Becker(民主党)は、立法の目的を明確に述べている。
「AIにはいくつかのメリットがある一方、選挙に関する偽情報や詐欺、悪意あるディープフェイクへの利用も見てきた」
— Josh Becker議員(KQEDへのコメントより)
Becker議員は、カリフォルニア州の立法者たちがEU側と緊密に連携し、両法律が同時に効力を持つよう意図的に調整したと説明している。ワシントン州もすでに同様の法律を採択しており、Becker議員は「私の法案によって、これは事実上のグローバルスタンダードになった」とKPIXに語っている。
法案成立から施行まで約3年を要したのは、企業が遵守すべき技術標準を実用的なレベルで確定させるためだったとも述べている。
日本国内でもディープフェイクを対象とした名誉毀損・わいせつ規制の議論が進んでいるが、今回のSB 942のように「コンテンツそのものに来歴情報を埋め込む」という技術的アプローチを法的義務とした事例は、国内にはまだ存在しない。違反時のペナルティについては元記事では言及されていないが、SB 942の条文上は民事訴訟の対象となりうる規定が盛り込まれている点も注目に値する。
今後の施行スケジュール
施行は段階的に進む。
- 現在(2025年8月〜):生成AI企業によるプロベナンスデータの埋め込みが義務化
- 2026年1月1日〜:カリフォルニア州で事業展開する大規模SNSプラットフォームが、ユーザーにAI生成コンテンツの来歴情報を表示する手段を提供することが義務化
- 2028年〜:カリフォルニア州で製造されるスマートフォンおよびカメラが、コンテンツ生成の瞬間にプロベナンス情報を記録・保存することが義務化
2028年の要件は特に技術的インパクトが大きい。デバイスのファームウェアレベルで来歴情報の記録が求められることになるためだ。
カリフォルニア州の規制力
Becker議員が強調するのは、カリフォルニア州の経済的・地理的な立場だ。同州は世界第4位の経済規模を持ち、シリコンバレーを擁することから、AI企業への規制影響力が他州とは異なる。
「私は100万人を代表し、シリコンバレーの大部分を地盤としている。この産業を規制する機会と責任がある」とBecker議員はKPIXに語った。
また、AI業界内のリーダーたちも一定のガードレール(規制の枠組み)の必要性を認めているという。法律がオンライン上の懐疑的な目を完全に排除するわけではないが、市民により良いツールを提供するのが狙いだと議員は述べている。
詳細はCalifornia, European Union Enact Laws Requiring Embedded Data on AI-Generated Imagesを参照していただきたい。