8月3日、The Decoderが「Alibaba's open-weight Qwen3.8-Max takes on long-horizon AI tasks with 2.4 trillion parameters」と題した記事を公開した。この記事では、Alibabaが公開した2.4兆パラメータのオープンウェイトモデル「Qwen3.8-Max」が、数日〜数週間にわたる長期自律タスクをこなす能力について詳しく紹介されている。
※ 本記事中のモデル名(Qwen3.8-Max、Qwen3.5、Qwen3.7-Maxなど)および競合モデル名(Claude Opus 4.8、Claude Fable 5、GPT-5.6 Solなど)はすべて元記事由来の表記であり、TechFeed編集部が独自に確認・命名したものではない。バージョン番号の整合性については元記事および公式リポジトリを参照されたい。
2.4兆パラメータ、クエリ当たり950億を活性化するMoE構造
Qwen3.8-Maxは、総パラメータ数2.4兆、クエリごとに950億パラメータを活性化するMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用している。MoEは全パラメータを一度に使うのではなく、入力ごとに必要な「専門家(Expert)」サブネットワークだけを選んで動かす設計であり、これにより推論時の計算コストをパラメータ総数に比べて大幅に抑えられる。Qwen3.5アーキテクチャを継承しており、単発の質問応答ではなく、長期間にわたって複雑なタスクを自律的に完遂することに設計の焦点が置かれている。
モデルはすでにQwenCloudで利用可能だ。重みの一般公開については元記事(8月3日付)時点で「来週中にHugging FaceおよびModelScopeで公開予定」と報じられていたが、記事公開日(8月4日)との時差により、本記事読了時点では既に公開済みである可能性が高い。Qwen-Maxクラスのモデルとして重みが一般公開される初のケースとなる。
16日間・265コミット——自律コーディングの実績
記事が最も力を入れて紹介しているのが、自律タスクの事例だ。元記事では一部タスクで人間の介入ゼロで実施されたと説明されており、すべてのタスク・工程において完全無人であることを主張しているわけではない点に注意が必要だ。
最も印象的なのはCLIツール「oh-my-cli」の開発事例である。Qwen3.8-Maxはユーザーからの要求をGitHub Issueに変換し、自分にアサインし、コードを書き、テストを回し、改善を繰り返した。16日間で265コミット、127プルリクエスト、151イシューを積み上げた。
2つ目の事例では、論文「Unified Data Selection for LLM Reasoning」を渡してスターターコードなしで再現・改善を指示した。約5日間・125時間の計算時間で7,600行のコードを生成し、33本のGPU学習ジョブを実行。論文の主要な6つの結果をすべて再現したうえで、自ら18のアイデアを4ラウンドにわたって検証し、数学ベンチマーク「AIME24」で論文の手法を2.7ポイント上回った。
3つ目はAlibabaのTianchiプラットフォーム上のコンペ(WWW2025 Multimodal Dialogue Intent Recognition Challenge)への参加だ。526チームの人間が競う中、モデルは24時間以内に複数の中国語モデルとQwen2.5-VL-7Bをファインチューニングし、アンサンブルを組み、45回の提出で精度を0.60から0.853まで引き上げた。526チーム中458チームを上回る順位となった。
チップ設計と仮想EC運営——長期プランニングの実力
さらに長期の計画能力を問う事例として、2つが紹介されている。
暗号回路のチップ設計では、最初に8,298ゲートで動作する設計から出発し、約500回のイテレーションを経て678ゲートまで削減した。オープンソースツール「OpenROAD」でレイアウトを自動生成した結果、物理チップ面積が106×106μmから46×46μmへと81%縮小した。
E-Commerce-Benchは、TaobaoとTmallの匿名データを用いた1年分のECシミュレーションだ。モデルは10万元の資本を元手に複数の店舗を並行運営し、仕入れ、サプライヤーとの交渉、価格調整、返品対応、台風や供給網の混乱といった危機対応をこなす。サプライヤープール内に仕込まれた152人の詐欺師を見抜きながら、最終残高は41万6,252元——出発点の4倍以上だ。2位のGLM 5.2比で38%上回り、前世代のQwen3.7-Maxの2.5倍以上の結果となった。
ベンチマーク結果と学習の工夫
Qwenチームが公表したベンチマークでは、PaperBenchで93点(比較モデル中最高)、TerminalBench 2.1で86.6点(元記事記載のGPT-5.6 Solの88.8点に次ぐ)を記録し、Claude Opus 4.8、Claude Fable 5、GPT-5.6 Solと拮抗する結果を示している。ただし、これらはすべてAlibabaチームによる自社内部の実行結果であり、独立した第三者機関による検証はまだ行われていない。自社ベンチマークは評価条件やプロンプト設計がモデルに有利になりやすいという構造的な問題を抱えており、外部再現による確認が待たれる。
長期タスク対応を実現した技術的な要因として、チームは強化学習(RL)の訓練環境の大規模な拡張を挙げている。従来の単一タスクに加え、複数日にわたるワークフロー、個別ファイルではなくネストされたディレクトリ構造、多様なエージェントハーネスを訓練対象に含めた。内部スコア指数は0.474から0.725に向上しており、約4,000環境で最高スコアを記録した後、わずかに低下する傾向が見られた。
マルチモーダル面では、200ページ超のドキュメントや100時間超の動画を処理できるとされる。ソースコード非公開のアプリをインタラクションのみで再現する新ベンチマーク「RecreationBench」と、画像・動画処理やビジュアルツール利用をエージェントシステムに追加する拡張ライブラリ「Qwen-MM-Plugins」も同時に公開されている。
中国オープンモデルの競争と連携互換性
Qwen3.8-Maxの最も直接的な競合は同じく中国発のMoonshot AI「Kimi K3」だ。7月27日にHugging Faceで公開された2.8兆パラメータ・100万トークンコンテキストのMoEモデルだが、独立したテストではサイバーセキュリティや複雑な数学の分野でトップ西側モデルに明確に届かないことが確認されている。
APIの互換性の面では、Qwen3.8-MaxはOpenAIのChat Completions形式とAnthropicのAPIプロトコルの両方をサポートしており、Claude Code、Codex、Qoder CLI、Qwen Code、OpenClawにそのまま組み込める。reasoning_effortパラメータで速度と精度のトレードオフを3段階から選択できる。
詳細はAlibaba's open-weight Qwen3.8-Max takes on long-horizon AI tasks with 2.4 trillion parametersを参照していただきたい。