8月2日、TechRadarが「Israeli startup takes direct aim at Nvidia with Arm-powered AI server」と題した記事を公開した。イスラエルのスタートアップMajestic Labsが、NvidiaのGPU+HBM構成に対抗するArmベースのAIサーバー「Prometheus」を発表したというものだ。HBMの50倍超の高速メモリ容量、プロセッサあたり最大1,000倍のメモリ量、コストは10〜50分の1——数字だけ見れば挑発的とも言える主張を携えた新興勢力の登場である。
GPUとHBMを捨て、LPDDR6の大容量で勝負
Majestic Labsが採用するのは、HBM(高帯域幅メモリ)の代わりにLPDDR6(Low Power Double Data Rate 6)と呼ばれるメモリだ。LPDDR6はもともとスマートフォンやモバイル機器向けに設計された低消費電力DDR規格であり、HBMと比べてチップ単価が大幅に低い。帯域幅ではHBMに劣るが、大量に並べることで総容量を稼ぐという逆転の発想がPrometheusの基本戦略である。
HBMはGPUパッケージに直接積層される非常に高速なメモリだが、製造コストが高く供給も限られる。AIインフラのコスト高騰を支えているのはまさにこのHBMとGPUの組み合わせであり、この構造に真っ向から異を唱えたのがテルアビブ拠点のMajestic Labsだ。
同社は2023年創業で、元GoogleおよびMetaのエンジニアらによって設立された。CEOのOfer Shacham、社長のSha Rabii、COOのMasumi Reyndersが共同創業者で、テルアビブとロサンゼルスに約40名の従業員を抱える。2025年末にシリーズAで1億ドルを調達済みだ。
Prometheusの構造:GPUをAIUに置き換える
Prometheusサーバーの核心は、GPUを使わないという設計判断にある。代わりに採用されるのがIgnite AI Processing Unit(AIU)と呼ぶ独自チップで、Armコアに加えてRISC-Vベースのベクター・テンソルエンジンを組み合わせた構成だ。
各Prometheusサーバーは最大12基のAIUを搭載し、8TBから128TBのLPDDR6メモリを1つの連続した統合プールとして共有する。メモリは各チップに直接接続するのではなく、カスタムの「メモリ集約チップレット」を介し、最長1メートルの銅ケーブルで繋ぐアーキテクチャを採用している。
40Uラック1台あたり4サーバーを収容可能で、消費電力は合計120kW、冷却はエアではなくコールドプレート液冷方式を採用する。
Nvidia DGX B300との比較
Majestic Labsが対比に挙げるのは、NvidiaのDGX B300(Blackwell GPU×8)だ。DGX B300はHBM3eを2.3TB、DDR5システムメモリを最大4TB搭載する。
これに対してPrometheusは、高速メモリ容量で50倍以上、インターコネクト帯域で1.7倍を主張する。さらに同社は次のように述べている。
「Majesticのラック1台が、NvidiaのNVL72 Vera Rubinラック25台分の高速メモリ容量を、わずかな消費電力で実現する。大規模なハイパースケーラーインフラを正当化できなかった組織でも、あらゆるワークロードを実行できる。プロセッサあたりのメモリ量は最大1,000倍になり得る。」
コストについても「同等性能のGPUシステムと比べ10〜50分の1のコストで提供できる」と主張しており、出荷は来年を予定している。
ソフトウェア互換性の面では、OCP準拠設計を採用し、PyTorch・vLLM・OpenAIのTritonフレームワークをサポートするため、既存のAIモデルを修正なしで動作させられるとしている。大手企業、ネオクラウド、ハイパースケーラーからすでに大口受注を獲得しているとも述べている。
数字の裏側:懸念点も残る
ただし、記事はこの発表に対して懐疑的な視点も提示している。
128TB構成を実現するためには、仮に2GBのLPDDR6ダイを使う場合、約6万4,000枚のダイが必要となり、メモリ集約チップレットは1サーバーあたり100枚以上になる計算だ。サーバー1台に実際何枚のチップレットが必要かは、まだ公開されていない。
性能面の数値はあくまでMajestic Labs自身による試算であり、独立した第三者によるベンチマーク検証はまだ行われていない。製品が実際に出荷され、エンタープライズ環境で検証されるまでは、これらの主張の信頼性は保留と見るのが妥当だろう。
詳細はIsraeli startup takes direct aim at Nvidia with Arm-powered AI serverを参照していただきたい。