8月2日、The Decoderが「Snap and LinkedIn are fighting back against a flood of low-quality AI content」と題した記事を公開した。低品質なAI生成コンテンツの氾濫に対してSnapとLinkedInが相次いで対策を打ち出したことを報じた内容で、その背景にはYouTubeショートの21%がすでにAI生成コンテンツで占められているという調査結果がある。プラットフォームが推薦アルゴリズムでエンゲージメントを最大化しようとするほど、大量生産が容易なAIコンテンツが有利になるという構造的矛盾が、今や業界全体の課題として浮上している。
SnapがAI生成動画を推薦対象から除外
Snapは今月から、完全にAIで生成された動画をSpotlightの推薦対象から除外した。Spotlightとは、Snapchat内のショート動画フィードで、TikTokのような形式でコンテンツを発見・視聴できる機能だ。ユーザーがフォローしていないクリエイターのコンテンツにも広くリーチできる仕組みであるため、AIによる大量投稿が流入しやすい構造を抱えていた。
Snapは公式声明で、「低品質で反復的なAI生成コンテンツ」の拡散を問題視し、Spotlightを「実在する人々による本物の創造性」に集中させたいと説明している。
ただし、Snapchat自身が提供するAI編集ツールを使って加工された動画は引き続き許可される。その代わり、透明性ラベル(AIを使用した旨の表示)が付与される。完全なAI排除ではなく、「人間が関与しているか否か」を基準として線引きしている点が特徴的だ。
Spotlightへの投稿者数はこれまでに120%以上増加しているが、そのうちどれだけがAIコンテンツによる増加だったかは明らかにされていない。急激な増加の背景にAI投稿の流入があったとすれば、今回の方針転換はその是正を狙ったものとも読める。
LinkedInはAIスロップ専用の通報ボタンを設置
LinkedInも同様の問題に直面している。同プラットフォームはAI生成の低品質コンテンツ、いわゆる「AIスロップ(AI slop)」の温床として知られており、402 Media Institute(旧Sparktoroチームによる調査機関)の調査では、5つのプラットフォームの中で最もAI長文スロップが多いと指摘されている。ビジネス特化型SNUとしての性質上、「専門的に見える」AI生成の長文投稿が評価されやすい傾向があり、問題が顕在化しやすかったと考えられる。
対策として、LinkedInは「AIスロップ」専用の通報ボタンを新設した。注目すべき点は、このボタンが既存のスパム報告や低品質コンテンツ報告の仕組みとは独立して設置されていることだ。これは、LinkedInがこの問題を通常のスパムや規約違反とは別次元の課題として位置づけていることを示している。ユーザーの集合知を使ってAIスロップを検出しようという発想は合理的だが、一方で課題もある。通報機能は悪用のリスクを抱えており、また「AIスロップ」を正確に見分けられるかどうかはユーザーのリテラシーに大きく依存する。自動検出と人力通報をどう組み合わせるかが、今後の実効性を左右するだろう。
プラットフォーム全体に広がる問題
SnapとLinkedInの動きは孤立した事例ではない。
動画編集・コンテンツ制作ツールを提供するKapwingが実施した調査によると、YouTubeショートの21%がすでにAI生成であり、InstagramやFacebookも同様の状況にあるとみられる。新規ユーザーのフィードに表示されるコンテンツの5本に1本がAI生成という数字は、推薦アルゴリズムがすでにAIコンテンツを積極的に拾い上げている実態を示している。
こうした状況を象徴するエピソードとして、OpenAIが提供したソーシャル動画アプリ「Sora」の失速がある。Soraは1日あたり100万ドルを費やしながらもユーザーの半数を失うという結果に終わっており、AI生成動画そのものへのユーザー需要が必ずしも高くないことを示唆している。SnapやLinkedInが今回の対策に踏み切った背景には、こうした「AIコンテンツへの飽き」という市場からのシグナルもあると読めるかもしれない。
プラットフォーム各社が推薦アルゴリズムでエンゲージメントを最大化しようとすると、大量生産が容易なAI生成コンテンツが有利になりやすい。クリエイターがコンテンツの質ではなく量で競争するインセンティブが生まれ、フィード全体の質が低下するという悪循環だ。今回のSnapとLinkedInの対応は、その構造的問題に対してプラットフォーム側が明示的にルールで介入した初期事例として注目される。各社がどこまで実効性ある運用を続けられるかが、今後の焦点となる。
詳細はSnap and LinkedIn are fighting back against a flood of low-quality AI contentを参照していただきたい。