8月2日、Thomas Joosが「AI finds plenty of security flaws, but almost none of them get exploited」と題した記事を公開した。この記事では、AIが発見したセキュリティ脆弱性の大半が実際の攻撃には悪用されていないという、VulnCheckの調査結果について詳しく紹介されている。
AIが見つけた脆弱性1,061件、悪用されたのは14件だけ
セキュリティ調査会社VulnCheckのPatrick Garrity氏は、2026年上半期にAIが発見した脆弱性1,061件を集計した。そのうち実際の攻撃での悪用が確認されたのはわずか14件(1.3%)にとどまった。
この1.3%という数字は、AIが関与しない脆弱性全体の悪用率とほぼ同じだ。つまり、AIが大量に脆弱性を「発見」できるようになっても、それが実際の攻撃リスクを示す指標にはなっていない。
なお、脆弱性の深刻度評価として広く使われるCVSSスコア(Common Vulnerability Scoring System)も、実際に悪用されるかどうかとは必ずしも一致しない点が従来から指摘されており、今回の調査はその問題をAI時代の文脈で改めて浮き彫りにするものといえる。
Anthropicが進めるProject Glasswingも例外ではない
元記事によれば、Anthropicが取り組むProject Glasswingは、2万3,000件超の脆弱性を発見した。しかし公開されたエントリは126件に絞られ、実際の攻撃が確認されたのは1件のみだった。
AIによるスキャンや解析の能力が飛躍的に向上しても、「発見件数」と「実際の危険度」の間には大きな乖離がある。大量の発見物がノイズになり、防御側(ディフェンダー)が本当に対処すべきリスクを見極めるのを難しくしている、とGarrity氏は指摘する。
「悪用までの時間」は着実に短縮されている
問題はむしろ別の数字にある。脆弱性が公開されてから最初の悪用が確認されるまでの中央値は、今年(2026年上半期)は80日だった。これは前年の120日から40日短縮されたことを意味する。さらに、約200件は公開から1ヶ月以内に攻撃が確認されている。

2026年上半期における脆弱性公開から初の悪用確認までの時間。公開当日またはそれ以前に悪用されたケースが約23%あり、悪用までの中央値は前年の120日から今年は80日へと短縮された。| 画像: VulnCheck
公開当日、あるいはそれより前に悪用されたケースが全体の**約23%**に上る点も見逃せない。「ゼロデイ」的な運用が常態化しつつある状況だ。CISAが管理するKEV(Known Exploited Vulnerabilities)カタログは実際に悪用が確認された脆弱性を収録しており、こうした「悪用速度の加速」を把握するうえで参照価値の高いデータソースとなっている。
狙われやすいのはCMSとAI製品そのもの
攻撃対象の内訳を見ると、Webサイト向けコンテンツ管理システム(CMS)が全体の3分の1を占め、最も多く狙われている。
また、Garrity氏はAI製品自体が新たな攻撃面(アタックサーフェス)になりつつある点も警告している。モデル構築ツールやエージェントインターフェースがその対象として挙げられた。AIが脆弱性を発見する一方で、AIを組み込んだシステムそのものが攻撃者に狙われるという構図が生まれている。
「発見件数」はリスクの指標にならない
この調査から浮かび上がる核心は、脆弱性の総数が増えても、防御優先度の判断材料にはならないという点だ。なお、報告される脆弱性の総件数自体は引き続き増加傾向にある(関連記事)。また、VulnCheckは独自のVulnerability Intelligenceレポートを通じて悪用状況のトラッキングを継続しており、CVSSスコアだけに依存しない優先度付けの手法を業界に提示している。
AIによるバグハンティングが普及した結果、セキュリティチームは膨大な「要対応候補」を前に、本当に危険なものを選り分ける作業に追われる状況になりつつある。発見能力の向上がそのままリスク低減につながらない以上、トリアージ(優先度判定)の精度こそが防御力の鍵となる。
詳細はAI finds plenty of security flaws, but almost none of them get exploitedを参照していただきたい。