7月30日、Cybersecurity Diveが「Shadow AI, leadership resistance make AI governance tough for worried CISOs」と題した記事を公開した。シャドーAIと経営層の無理解がCISOのAIガバナンスを困難にしているというOktaの調査結果を詳しく紹介している。
CISOの81%が「自社のAIは適切に管理されていない」と懸念
Oktaが公開した調査レポートによれば、CISOの81%が自社のAIシステムの統治が不十分だと感じている。対象は米国・英国・日本・ドイツ・カナダ・フランスのCISOおよびサイバーセキュリティ幹部306人だ。
数字を並べると状況の深刻さが浮かぶ。
- 自社ネットワーク上のAIエージェントをすべて把握できている企業は47%のみ
- AIエージェントの企業データへのアクセスを制御できていると答えた企業は**46%**にとどまる
- 何らかの未承認AI利用(いわゆるシャドーAI)を確認したCISOは68%
つまり、企業の半数以上が自社ネットワーク上で何が動いているか把握できておらず、その状況でビジネスを継続している。
シャドーAIと「野良エージェント」問題
シャドーAI(Shadow AI)とは、セキュリティチームへの申請や承認を経ずに従業員が独自に利用するAIツールを指す。ChatGPTや各種コーディングアシスタントを業務に持ち込む行為がその典型だ。可視性のなさが、CISOにとっての防御を困難にする。
承認済みのAIツールでも管理は甘い。約5分の1の組織が、AIエージェントに共有認証情報や過剰な権限を持つ専用アカウントを使わせていると回答した。どちらもエージェントの行動範囲を制限できていない状態だ。同程度の割合の組織が、AIエージェントを作成したチームにそのまま管理を任せている。専用のアクセス管理フレームワークを通じてAIエージェントを管理しているのは回答者の4分の1のみだった。
最大の障壁は「経営層の無理解・抵抗」
技術的な問題以上にCISOを悩ませているのが、経営陣との認識のズレだ。
AIに関するリスク許容度について、CEOや取締役会と「完全に合意できている」と感じているCISOは全体の3分の1未満。米国に絞ると、この割合は**わずか12%**まで落ちる。
背景にあるのは、経営層の多くがAIへのセキュリティ統制を「事業成長の障害」と捉えている点だ。AIセキュリティを事業を支えるものと取締役会が認識していると感じているCISOは半数に満たない。セキュリティ部門が予算や方針の承認を求めるたびに、この価値観の衝突が起きる。
攻撃側のAI活用にも強い警戒感
自社のガバナンス問題に加え、攻撃者がAIを活用して仕掛けてくる脅威への懸念も高まっている。グローバルでは**57%のセキュリティリーダーがAIを使った侵害攻撃を「非常に心配」または「かなり心配」と回答。米国ではこの割合が84%**に跳ね上がる。
具体的に恐れられているのは、AIを使った高精度なフィッシング攻撃、悪意あるAIエージェントの悪用、そして認証をすり抜けるディープフェイクだ。
何が問題の本質か、CISOは何ができるか
この調査が示すのは、技術的な未整備と組織的な機能不全が重なっている状況だ。AIエージェントが増殖する一方で、それを管理する仕組みも、管理する意思を持つ経営層の理解も追いついていない。CISOが孤立無援で問題に向き合っている構図が透けて見える。
こうした課題に対するガバナンスの参照軸としては、NISTのAIリスク管理フレームワーク(AI RMF)や、CISAが公開しているAIセキュリティ関連ガイダンスが存在する。前者はAIシステムのリスクを「ガバナンス」「マップ」「測定」「管理」の4軸で体系化しており、AIエージェントのアクセス管理やシャドーAIの可視化に取り組む際の出発点として活用できる。後者はCISAが継続的に更新しており、政府・民間双方を念頭に置いたAI導入時のセキュリティ要件を整理している。
※編集部の考察:CISOが経営層を動かすうえでは、セキュリティリスクをコスト・損失の言語に翻訳して提示することが有効とされている。今回の調査が示す数字——AIエージェントの把握率47%、制御率46%——は、その議論を経営会議に持ち込む際の具体的な根拠として機能し得る。
詳細はShadow AI, leadership resistance make AI governance tough for worried CISOsを参照していただきたい。