7月30日、TechStartupsが「Goldman Sachs launches AlphaAI to bring AI investing across public and private markets」と題した記事を公開した。Goldman Sachsのアセットマネジメント部門がAI活用を一元化する専用プラットフォーム「AlphaAI」を立ち上げたことを詳しく報じている。
AIを「投資対象」から「投資プロセスの一部」へ
Goldman Sachsのアセットマネジメント部門(Goldman Sachs Asset Management)が、AlphaAIと呼ぶAI投資プラットフォームを新たに立ち上げた。公開市場・非公開市場(※後述)の双方にわたる投資業務に、AIをより深く組み込むことを目的としている。
これまでのウォール街におけるAI活用は、内部業務の効率化や生成AIの試験的導入が中心だった。AlphaAIはその段階を超え、投資リサーチ、ポートフォリオ管理、プライベート市場の分析といった領域に直接AIを適用しようとする取り組みである。
Goldman Sachsのグローバル資産・ウェルスマネジメント部門トップであるMarc Nachmannは、こう述べている。
「AIは産業を再編しているだけでなく、私たちの投資方法そのものを根本的に強化する力を持つと考えている」
専任リーダーにLou D'Ambrosioを指名
AlphaAIの統括は、Lou D'Ambrosioが「人工知能担当会長(Chairman of Artificial Intelligence for Asset Management)」として就任する。
D'Ambrosioは2018年にGoldman SachsのValue Accelerator(ポートフォリオ企業の運営価値向上を支援する事業)を創設した人物で、同社のAI Investing Leadership Councilの議長も務めてきた。上場・非上場企業の双方でCEO経験を持つ。
合わせて、これまでD'Ambrosioと共同でValue Acceleratorを率いてきたDarius Adamczykが、同事業のグローバル責任者を引き継ぐ人事も発表された。
なぜ今、専用プラットフォームなのか
大手金融機関がAIを活用する場面は増えているが、多くはチームごとに分散した個別ツールとして運用されている。AlphaAIはそれらを一元化された専用プラットフォームにまとめることで、組織横断的に活用できる体制を構築しようとしている。
業界全体でも、大規模言語モデル(LLM)や予測分析、機械学習といった技術が、企業調査・財務モデリング・デューデリジェンス(投資対象の価値やリスクを精査する審査プロセス)・リスク評価などに本格的に使われ始めている。各社が公開AIサービスへの依存を避け、自社の金融データや投資ノウハウを組み合わせた独自AIモデルの構築を急いでいる背景がある。
Goldman Sachsの今回の動きは、その競争に本格参戦することを意味する。AIスタートアップに投資するだけでなく、AIそのものを使って全資産クラスにわたる投資判断の質を高めるという方向性である。ただし、AlphaAIは始動したばかりであり、実際の運用成果や組織への浸透がどこまで進むかは今後を見守る必要がある。
用語補足:公開市場とプライベート市場
AlphaAIが対象とする「公開市場(Public Markets)」とは株式・債券など取引所で売買される資産を指し、「プライベート市場(Private Markets)」とは未上場株式(プライベートエクイティ)・プライベートクレジット・不動産・インフラなど取引所外で取引される資産クラスを指す。後者は情報の非対称性が大きく、AIによるデータ処理・分析の恩恵を受けやすい領域とされている。Goldman Sachsはこの両市場を横断的にカバーする点をAlphaAIの特徴として位置づけている。
まとめ
AlphaAIの立ち上げは、ウォール街におけるAI活用の次フェーズを象徴する動きといえる。「AI企業に投資する」フェーズから「AIで投資判断を行う」フェーズへの移行が、資産運用業界全体で進みつつある。Goldman Sachsが専任リーダーと専用プラットフォームを揃えてこの分野に踏み込んだことは、その流れを加速させる可能性がある。今後はAlphaAIが実際の投資パフォーマンスにどう貢献するかが注目される。
詳細はGoldman Sachs launches AlphaAI to bring AI investing across public and private marketsを参照していただきたい。