7月30日、Benjamin Curryが「Visa to let go of THOUSANDS of employees in AI-driven layoff plan」と題した記事を公開した。Visaが全従業員の7%にあたる約2,600人をAI推進を理由にレイオフすると発表したこの件は、「業績不振による削減」ではなく「好業績のままAI投資を優先して人を減らす」という構図が鮮明であり、テック業界を超えた議論を呼んでいる。
Visaとはどのような企業か
Visaは、世界200以上の国・地域で決済ネットワークを提供する金融インフラ企業だ。クレジットカード・デビットカードの決済処理において世界最大のシェアを持ち、その処理件数は年間数千億トランザクションに上る。銀行や加盟店、消費者をつなぐ「レールの上を流れるお金」を管理するという事業特性上、テクノロジーへの依存度が極めて高く、エンジニアやプロダクト人材を大規模に抱えている。そのVisaが、テック人材を中心に削減するという判断を下したことは、業界全体に対するシグナルとして受け取られている。
好業績と同時のレイオフ発表という奇妙な構図
今回のレイオフ発表が際立って異様なのは、そのタイミングだ。
Visaは人員削減の発表からわずか数時間後に、直近四半期の純利益が116億ドル(前年同期比14%増)という好決算を公表した。調整後の1株利益も3.32ドルで前年比11%増。決済処理量は前年比10%増、国際取引に至っては13%増だ。株価も3月末比で25%上昇している。
要するに、業績は絶好調のまま、数千人を削減するという判断だ。
CEO Ryan McInnerneyは社内向けメモでこう述べている。
「今後のチャンスを掴み、Visaがこの変革をリードするためには、私たちの働き方を進化させ続けなければならない。AIもまたこの進化を加速させ、Visaにおける仕事の進め方を形成している」
削減の対象はテック・プロダクト部門に集中
削減規模は全従業員の7%、約2,600人。削減はVisaの技術部門およびプロダクト部門に集中しているとされる。エンジニアやプロダクトマネージャーが主な対象であり、まさにAIが代替しやすいとされる職種群だ。
ただし、CNBCが報じた社内関係者(匿名)の話によれば、AI化だけが理由ではないという。削減と並行して、ステーブルコイン(価格が法定通貨等に連動するよう設計された暗号資産)を活用した決済、企業間のクロスボーダー決済(国境をまたぐ資金移動)、グローバル展開といった新規事業へのシフトが計画されており、リソースの再配分という側面もある。
McInnerneyはメモの中でこう続けている。
「過去数年間に行ってきた選択の結果として、私たちは真の勢いを持つビジネスとともに、商取引の新時代に突入しつつある」
「AIを理由にした削減」はVisaだけではない
Visaが加わった「AI名目のレイオフ」の列は長い。元記事によれば、直近では以下の大手企業が相次いで人員削減を実施している。
- Meta:2026年5月に全従業員の約10%を削減
- Microsoft:2026年4月に米国従業員の約7%を対象に削減を実施
- その他、Google、Amazon、Oracleなども同様の削減を進めているとされる
※上記各社の数値・時期は元記事に基づく。各社の公式発表については、それぞれのIRページや一次報道で確認されたい。
Visaのケースが象徴的なのは、「業績が悪いから削減する」のではなく、「好業績のままAI投資を加速するために人を減らす」という構図が明確に見える点だ。CEOメモの表現はあくまで「AIが仕事の進め方を形成している」というものであり、「AIが人間を置き換える」とは明言していない。ただ、削減対象がエンジニア・プロダクト職に集中しているという事実は、AIが雇用を補完するフェーズから、一部の職種を実質的に代替するフェーズへの移行を示唆しているとも読める。金融インフラという、テック企業とは異なるセクターでこの動きが起きた点に、業界全体を通じた潮流の変化が見て取れる。
詳細はVisa to let go of THOUSANDS of employees in AI-driven layoff planを参照していただきたい。