7月29日、The Decoderが「GPT Transcribe improves on its predecessor but can't catch ElevenLabs, Google, or Mistral on error rates」と題した記事を公開した。OpenAIが新たにリリースした音声認識モデル「GPT Transcribe」と「GPT Live Transcribe」の性能を、競合他社のモデルと比較したベンチマーク結果を伝えている。
2モデルの役割分担:バッチ処理とリアルタイムストリーミング
OpenAIはAPIを通じて利用可能な2つの新しい音声認識モデル、GPT TranscribeとGPT Live Transcribeをリリースした。
- GPT Transcribe:録音済み音声ファイルを処理するバッチ向けモデル。処理速度はリアルタイムの約34倍
- GPT Live Transcribe:低レイテンシのリアルタイムストリーミング向けモデル
どちらのモデルも、テキストによる文字起こしコンテキスト、キーワード指定、複数言語入力に対応している。
2モデルの使い分けは明確だ。GPT Transcribeは収録済み音声を高速に処理したい用途に向き、GPT Live Transcribeはレイテンシを抑えたリアルタイム書き起こしが求められる場面を担う。ただし、後者のベンチマーク上のレイテンシ数値については元記事において具体的な数字は示されておらず、精度面での詳細なデータはGPT Transcribe側の評価が中心となっている。
ベンチマーク結果:前世代より改善、ただしトップ3に届かず
音声認識の精度指標として広く使われるWER(Word Error Rate:単語誤り率)で評価するArtificial AnalysisのAA-WERベンチマークによると、GPT Transcribeの単語誤り率は3.31%。約1年前の前世代モデルGPT-4o Transcribeから0.7ポイント改善している。
しかし、競合他社との差は依然として残る。現時点のランキングは以下の通りだ。
| モデル | 単語誤り率 |
|---|---|
| ElevenLabs Scribe v2 | **2.3%**(1位) |
| Google Gemini 3 Pro | **2.9%**(2位) |
| Mistral Voxtral Small | **3.0%**(3位) |
| OpenAI GPT Transcribe | **3.31%**(4位) |
ElevenLabs Scribe v2がトップを走り、Google Gemini 3 Pro、Mistral Voxtral Smallが続く形だ。
WERの差は絶対値で見れば1ポイント強だが、精度を最優先する業務用途—たとえば医療記録や法廷速記—では、この差が実運用上の選択に直結する。OpenAIが前世代から改善を重ねていることは事実だが、競合との差を縮めるペースは現時点では追いついていない。
速度は強み、ただし精度とのトレードオフを理解して使う必要がある
GPT Transcribeの特徴として強調されているのが、リアルタイムの約34倍という処理速度だ。これは大量音声データを短時間でさばく非同期バッチ処理において大きな優位性になりうる。
ただし、速度優位が活きる場面と精度優位が求められる場面は異なる。高速処理を重視するならGPT Transcribeに分があるが、文字起こし精度を最優先するならElevenLabsやGoogleが現時点では上回っている。GPT Live Transcribeについてはリアルタイム処理という性質上、バッチモデルとは異なる速度・精度のバランスが求められるが、元記事ではそのベンチマーク数値は公表されていない。エンジニアが採用判断をする際には、速度・精度・コストの三軸を用途に応じて整理することが重要になる。
価格競争でも後手に回るOpenAI
GPT Transcribeの価格は25%値下げされ、音声1分あたり$0.0045となった。ただし、コスト面でも競合は厳しい。
Mistralは最近Voxtral Transcribe V2を投入しており、価格は1分あたりわずか$0.003。OpenAIの価格を1.5倍以上下回る水準だ。精度でも価格でも、現時点ではOpenAIが競合に追いつけていない状況が浮き彫りになっている。
位置づけ:Realtimeモデル群の一部として
新しい文字起こしモデルは、OpenAIが先日発表したRealtimeモデル世代の補完として位置づけられる。同世代にはリアルタイム文字起こしモデル「GPT-Realtime-Whisper」も含まれる。OpenAIは音声AIをAPIエコシステム全体で段階的に強化している格好だ。なお、APIの詳細な利用方法についてはOpenAIの公式ドキュメントを参照されたい(元記事執筆時点では具体的なURLは明示されていない)。
精度・価格ともにトップを取れていない現状ながら、処理速度34倍という軸は依然として一定の競争力を持つ。音声AIの採用を検討するエンジニアにとっては、用途ごとにモデルを選定するための比較軸が整理された形だ。
詳細はGPT Transcribe improves on its predecessor but can't catch ElevenLabs, Google, or Mistral on error ratesを参照していただきたい。