7月30日、The Next Webが「Cyera buys Oasis Security for $1bn to police AI agents」と題した記事を公開した。この記事では、データセキュリティ企業CyeraがAIエージェントの「非人間アイデンティティ」管理を手掛けるOasis Securityを約10億ドルで買収したことを報じている。AIエージェントが企業システムに大量ログインする時代を見越した買収劇の詳細と、急膨張するセキュリティ市場の背景を紹介する。
AIエージェントが「ログイン」する時代のセキュリティ
企業がAIエージェントを動かすとき、そのエージェントはシステムにログインし、データにアクセスする。つまり「アカウント」が必要になる。こうした機械やソフトウェアが使うアカウントは「非人間アイデンティティ(Non-Human Identity)」と呼ばれる。
問題は、その数が爆発的に増えている点だ。Cyeraによれば、大企業における非人間アイデンティティの数はわずか6ヶ月で約500%増加しており、エンタープライズ環境で最も急速に増えているアカウント種別になっている。一方、既存のアイデンティティ管理ツールの大半は人間のユーザー向けに設計されており、何千ものエージェントを一元管理する仕組みは整っていない。
そのギャップを埋める事業が、今回約10億ドルで売れた。
買収の構図:データ把握 × アクセス制御
買収企業のCyeraは、企業が保有するデータの内容と機密度を把握するプラットフォームを提供している。一方、2022年創業のOasis Securityは、機械やAIエージェントが使う非人間アイデンティティのガバナンスに特化したセキュリティ企業だ。
Cyeraは両社の統合により、「人間・機械・エージェントのすべてが何にアクセスできるかを単一システムで管理できる」と説明している。データが何かを知る層と、誰(何)がアクセスできるかを制御する層を一本化する、というわけだ。
取引はキャッシュと株式の組み合わせで、うち現金部分は約7億ドル。なお、元記事が公開された当時の報道時点では、クローズは2025年内を見込んでいるとされていた。
AIセキュリティ領域で過去最大のM&A
Oasisは創業からわずか3年足らずで10億ドル規模の売却を達成したことになる。同社は「サイバーセキュリティ企業として、創業から10億ドル売却までが史上最速」と主張している。
この買収はより大きな流れの一部でもある。AIエージェントのセキュリティ分野には現在、多方面から資金が流入している。Neoが1億ドルを調達したほか、NeuralTrustのシードラウンドなど小規模な投資も相次いでいる。サイバーセキュリティ全体のM&A件数も記録的なペースで推移しており、CyeraはDatabricksによるPanther Labs買収など、包括的なAIセキュリティプラットフォームを目指す他の買い手と並走している。
今回はCyeraにとって数ヶ月以内の5件目の買収にあたる。これに先立ち、Genie Security、Ryft、Trail Securityなども傘下に収めている。
資金力と収益性の乖離
Cyeraがこの買収攻勢を続けられる背景には、潤沢な資金調達がある。同社は2025年6月に6億ドルを調達し、企業評価額は120億ドルに達した。累計調達額は約23億ドルになる。
ただし、現時点ではまだ赤字だ。評価額は売上高の約80倍に相当するとされており、その前提となる「何百万ものAIエージェントが企業に普及する」シナリオはまだ実現途上にある。Cyeraの賭けは、エージェントが普及した時点で、そのアクセス制御の仕組みをすでに握っているという構図だ。
詳細はCyera buys Oasis Security for $1bn to police AI agentsを参照していただきたい。