7月27日、Simon Willison氏が「An opinionated guide to which AI to use to do stuff」と題した記事を公開した。この記事では、Ethan Mollick氏(ペンシルバニア大学ウォートン校教授、AIの実務活用に関する著作で知られる)が定期的に更新しているAIツール使い分けガイドの最新版を、Willison氏が紹介・解説している。
「チャット」から「エージェント」へ
Mollick氏のガイドは過去1年で根本的に性格を変えた。Willison氏はその変化を端的に指摘している——1年前はChatGPT・Claude・GeminiといったチャットUIが中心だったガイドが、今やエージェント型システムの解説に様変わりしている。
Mollick氏はエージェントをこう定義している。
AIが一度に何時間分もの人間の作業に相当することを実行できるシステム
1年前のガイドでは、o3・Claude 4 Opus・Gemini 2.5 Proといったモデル選定と、Deep Researchの活用が主題だった。現在のガイドはそれとは根本的に異なる。
GeminiがMollick氏のリストから脱落
注目すべき変化として、GeminiがMollick氏の推奨リストから外れた。理由は明確で、GoogleがまだCodex・ChatGPT Work・Coworkに相当するエージェントカテゴリの製品を確立できていないためだ。Gemini Sparkは現時点では実績を示せていない、とMollick氏は評価している。
現在の主役はOpenAIとAnthropicの2社に絞られている格好だ。
最も混乱しやすい「モード名」問題
ガイドの実用的な核心部分は、ChatGPTとClaudeにコンピュータを使わせる方法の整理だ。この箇所はMollick氏自身の説明とWillison氏の補足が交差するため、以下では発言者を明示しながら整理する。
まずMollick氏はこう説明している。
AIが提供するコンピュータを使うには、ChatGPTでは「Work」、Claudeでは「Cowork」というモードを選ぶ。名前が分かりにくくなることはない、残念ながら。
AIの最も強力な使い方は、自分のコンピュータへのアクセスを与えることだ。ChatGPTまたはClaudeのデスクトップアプリをダウンロードしてモードを選ぶ。ChatGPTのエージェントモードはWorkとCodex、ClaudeはCoworkとCode。これらの名前は互いに対応していない。そして、上述のWorkとCoworkと同じ名前を使っているが、動作が異なり、自分のコンピュータにアクセスできるためより多くの機能を持つ。
この説明だけでも十分に複雑だが、Willison氏はさらに一歩踏み込んだ解説を加えている。モバイルのChatGPT WorkとデスクトップアプリのChatGPT Workは別物であり、デスクトップ版は実質的にCodexの上に乗った使いやすいUIに近い、という点は「spectacular に非直感的」と表現している(Willison氏の言葉)。
5つのモード・製品を一覧で整理
混乱を整理するため、登場する5つの主要モード・製品の関係を以下にまとめる。
| 名称 | プラットフォーム | 環境 | 概要 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT Work(モバイル) | OpenAI | モバイルアプリ | Workモードに切り替えるとCode InterpreterがインターネットにアクセスできるようになるWebエージェント |
| ChatGPT Work(デスクトップ) | OpenAI | デスクトップアプリ | 実質的にCodexのUI。自分のPCへのアクセスが可能 |
| Codex | OpenAI | デスクトップアプリ / Web | コーディング特化のエージェント。デスクトップWork版の基盤 |
| Claude Cowork | Anthropic | モバイル / Web | MollickガイドでのChatGPT Work(モバイル)相当。AIが提供するコンピュータを操作 |
| Claude Code | Anthropic | デスクトップアプリ | MollickガイドでのChatGPT Work(デスクトップ)相当。自分のPCへのアクセスが可能 |
同じ「Work」「Cowork」という名前が異なる文脈で異なる動作を指すことが、Mollick氏もWillison氏も認める最大の混乱ポイントだ。
見落とされがちな重要な仕様差
Willison氏が特に強調するのが、ChatGPTモバイルの隠れた仕様だ。
ChatGPTモバイルで「Chat」から「Work」モードに切り替えると、Code Interpreterのコンテナがインターネットへアクセスできるようになる。
通常のChatモードではCode Interpreterはインターネット接続が制限されているが、Workモードに切り替えることでその制限が解除される。これはドキュメントに大きく書かれていない仕様であり、モバイルでの活用可能性を大きく変える。この点はWillison氏の観察として特記されている。
「どのモードか」を選ぶための具体的な指針
タイトルで約束した「モード名の混乱を整理する」という目的に立ち返ると、Mollick氏とWillison氏の両者の議論から導ける実践的な選択指針は以下の通りだ。
- Webブラウジングや調査を伴う作業をモバイルで行いたい → ChatGPT Work(モバイル)またはClaude Cowork。Code InterpreterのWeb接続が有効になる
- 自分のPCのファイルやアプリを直接操作させたい → ChatGPT Work(デスクトップ)またはClaude Code。ローカル環境へのアクセスが可能
- コード生成・実行を中心に据えたい → Codex(OpenAI)またはClaude Code(Anthropic)
- Geminiを使いたい場合 → 現時点ではMollick氏のガイドは推奨を留保しており、Gemini Sparkの成熟を待つ状況
重要なのは、モデルの性能差よりも「どのモードで・どの環境で使うか」の理解がボトルネックになっているという点だ。Mollick氏のガイドがモデル比較からモード解説へと主軸を移したこと自体が、現在のAI実務活用の状況を象徴している。
詳細はAn opinionated guide to which AI to use to do stuffを参照していただきたい。