7月29日、Matthias Bastianが「Amazon reportedly scales back its Nova AI models and bets on a new Frontier research team」と題した記事を公開した。AmazonがNovaモデル群の開発を縮小し、新たなFrontier Model Researchグループに経営資源を集中させるという戦略転換の実態が、内部関係者の証言をもとに明らかにされている。
NovaモデルはKTLO(現状維持)モードへ
Business Insiderが内部関係者の話として報じたところによると、Amazonは社内開発のAIモデルの大半を縮小する方向に舵を切った。影響を受けるのは以下のモデルだ。
- Nova Premier(旗艦テキストモデル)
- Nova Omni(マルチモーダルモデル)
- Reel(動画生成モデル)
- Canvas(画像生成モデル)
これらは既存ユーザー向けに「Keep the Lights On(KTLO)」モードで残されるが、積極的な開発は停止する。KTLOとは、新機能開発や性能改善を凍結し、システムの稼働維持に必要な最低限の作業だけを続ける運用状態を指す業界用語だ。Novaモデル群は2024年12月に発表されたばかりであり、わずか半年余りでの方針転換となる。
この縮小は、AGI部門でのレイオフと、2024年にAdeptを買収した後に設立したAGI Labの閉鎖に続く動きだ。短期間で大規模な組織再編が繰り返されており、Amazonの社内AI開発で混乱が続いていた様子がうかがえる。
賭けの行き先:Pieter AbbeelのFrontier Model Research
資源の移転先は、Frontier Model Researchグループだ。このチームを率いるのはPieter Abbeel(ピーター・アベール)。カリフォルニア大学バークレー校の著名な強化学習・ロボティクス研究者であり、深層模倣学習(Deep Imitation Learning)の分野で国際的に知られる人物だ。
AbbeelはAIを活用した産業用ロボティクスを手がけるスタートアップCovariantの共同創業者でもあり、AmazonはCovariantの技術・人材を獲得する形で2024年にAbbeelを迎え入れた。Covariantは倉庫や物流現場向けのロボット制御AIを専門とし、Amazonの物流インフラとの親和性が高い企業だ。
Frontier Model Researchグループが開発する新しい基盤モデルは、今秋のre:Inventカンファレンスで発表予定とされている。re:InventはAmazonが毎年ラスベガスで開催する大規模な開発者向けイベントで、新サービスや技術の発表の場として広く知られる。
外部への投資は継続、むしろ拡大
自社モデル開発を縮小する一方で、Amazonは外部AIへの投資を積み上げている。
- Anthropicへの投資総額は330億ドル超
- OpenAIのAWSへのランディングも直近で決定
元記事の時点では、AnthropicへのAmazon単体での投資が330億ドル超であることが確認されている。OpenAIとのAWS契約の規模は別途報じられているが、両社分の合算額については元記事内に明示的な数字の記載はない。Amazonの広報担当者はBusiness Insiderに対し、「AIモデルは引き続き同社の最重要プロジェクトの一つ」と述べている。
何が起きているのか
Amazonの動きをまとめると、「自前で全部作る」路線から「外部モデルに乗っかりつつ、一点突破の研究チームに賭ける」路線へのシフトに見える。AnthropicとOpenAIという競合同士の両方に巨額を投じるのは異例だが、Amazonにとってはどちらが勝ってもAWSのクラウドインフラが使われればよい、という判断が背景にあるとみられる。
※編集部の考察:この構造は、かつてGoogleがOpenAIとAnthropicの双方に出資しつつ自社Geminiも展開した「全方位ヘッジ」戦略と類似している。ただしAmazonはその中で自社モデルの開発優先度を明確に下げており、クラウド収益の確保を最優先に据えた割り切りが際立つ。
Frontier Model Researchグループが秋のre:Inventで何を出してくるかが、この戦略転換の評価を左右する。
詳細はAmazon reportedly scales back its Nova AI models and bets on a new Frontier research teamを参照していただきたい。