7月27日、startuphub.aiが「Dario Amodei's Oversight Plan for AI, and How Altman Took a Different Path」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのDario AmodeiがAI規制における政府の停止権限を主張する一方、OpenAIのSam AltmanはGPT-5.6のリリース前にトランプ政権と「協調的なやり取り」を経て多数の変更を加えていたという、業界トップ2人の対照的な姿勢について詳しく紹介されている。
「企業ではなく第三者に拒否権を」——Amodeiの主張
2026年6月、AnthropicのCEO Dario Amodeiは約5,000語の論考「Policy on the AI Exponential」を個人サイトで公開した。その核心にある主張は、現役のAI企業トップとしてここまで明確に言及したものはないとされる内容だ。
Amodeiが求めるのは、フロンティアAIモデルの公開前に独立した第三者機関による強制的な監査を義務付け、政府がその結果に基づいてデプロイメントを「阻止・抑止する」法的権限を持つべきだというものだ。重要なのは、その停止権限の引き金が「政府機関の裁量」ではなく「監査結果」に依存する点にある。いわば、企業側でも政府側でもなく、独立した監査機関を最終的な意思決定者に置く設計だ。
論考が提示する政策設計の骨格はより具体的だ。監査プロセスは企業によるモデル提出→第三者機関によるリスク評価→評価結果の政府への報告という流れを想定しており、政府の介入権限は「高リスク」判定が下された場合にのみ発動する条件付きの構造となっている。Amodeiが強調するのは、この条件付き発動という設計こそが、政府による恣意的な介入を防ぎながら、同時に企業の自己申告に依存しない独立した安全保証を実現する鍵だという点だ。
主張の背景には、AI安全対策の進展がモデルの能力開発ペースに構造的に追いついていないという危機感がある。ABC Newsとの独占インタビューでもAmodeiはこの問題を強調している。
Altmanは規制当局と「協調的なやり取り」でGPT-5.6を調整
これと対照的な形で報じられたのが、Bloombergによる報道を根拠とするもう一つの事実だ。OpenAIのSam AltmanはGPT-5.6のリリース前に、トランプ政権との「collaborative back and forth(協調的なやり取り)」を通じて「多数の変更(many changes)」を加えた。
Amodeiが「第三者機関への権限委譲」を訴えるのに対し、Altmanは政権との直接的な協議というルートを実質的に選択している。どちらも「規制との関与」ではあるが、その構造は根本的に異なる。一方は法制度による独立性を求め、もう一方は政治的プロセスへの参加を選んだ形だ。
両社とも記録的な評価額で資金調達中——規制スタンスとの関係
この対立が続く中、両社は揃って史上最高クラスの評価額での資金調達を進めている。規制をめぐるスタンスの違いを論じる上でこの数字が重要なのは、巨額の資金調達が進むほど各社にとっての「規制リスク」の重みが増し、それぞれのアプローチがより鮮明な戦略的選択として浮かび上がるからだ。Anthropicは2026年5月に$965億のバリュエーションで$65億ラウンドをクローズし、同月時点での年換算売上高(ARR)は**$470億**に達したとBloombergが報じている。これだけの規模の企業が「自社製品の停止権限を第三者に委ねるべき」と主張することの意味は、スタートアップ段階とは文脈が異なる。
構造的に異なる2つの立場
AmodeiはOpenAIのVP of Researchを経て2021年にAnthropicを共同創業した人物だ。かつて同じ組織にいた2人が、今や同一の問いに対して構造的に異なる答えを出している。
Amodeiの立場を整理すると:
- AI安全対策は能力開発のペースに追いついていない
- デプロイメントの最終的な拒否権は第三者監査機関が持つべき
- 政府の権限は「裁量」ではなく「監査結果への連動」で設計すべき
- 監査フローは企業提出→第三者評価→政府報告の順で、高リスク判定時のみ介入が発動する条件付き構造
Altmanの行動が示す立場:
- リリース前に政権側と直接協議し、モデルを調整する
- 規制対応を企業と政府の協議プロセスとして扱う
フロンティアAIの規制をめぐる議論は、「誰が最終的な停止ボタンを押すか」という問いに収束しつつある。Amodeiの論考とAltmanの行動は、その答えとして現時点で最も対照的な2つの選択肢を体現している。
詳細はDario Amodei's Oversight Plan for AI, and How Altman Took a Different Pathを参照していただきたい。