7月27日、Inside AI News が「Apple Targets June 2027 Launch for AI Glasses to Rival Meta and Google」と題した記事を公開した。Appleが Meta・Googleに対抗するAI搭載スマートグラスを2027年6月の開発者向けカンファレンスで発表する方向で開発を進めているという報道について詳しく紹介されている。
Appleのスマートグラス、2027年6月発表へ
Bloombergの報道によれば、Appleは2027年6月のWWDC(開発者向けカンファレンス)でAI搭載スマートグラスを披露し、同年ホリデーシーズンの一般発売を目指している。当初は2026年のリリースも取り沙汰されていたが、スケジュールが後ろ倒しになった。その主因は、製品の根幹に関わる設計上の議論——プライバシー——にある。
現時点でAIグラス市場を実質的に牽引しているのはMetaだ。EssilorLuxotticaと共同開発したRay-Ban Metaグラス(税込み$299〜)は、見た目が普通のサングラスと変わらないため内蔵カメラが目立たない点が売りだが、それが「無断撮影」批判を引き起こしてもいる。
プライバシーを最優先にした設計が最大の差別化点
Appleの設計アプローチは、競合とは一線を画す。現在テストされているプロトタイプにはカメラを一切搭載しないバージョンと、カメラがあっても写真・動画を記録できないバージョンの2種類がある。後者では、センサーは周囲の状況をAIに認識させるためだけに機能し、記録には使えない——ファームウェアレベルでの録画無効化を検討している可能性がある。
Bloombergは「Appleはプライバシー問題に対処するため、ハードウェアとソフトウェアの両面で内部的な変更を行った」と報じており、同様のカメラレスセンシング技術が将来のAirPodsに搭載される可能性にも言及している。
この慎重な姿勢の背景には、業界の苦い歴史がある。Google Glassは目立つカメラへの反発から、消費者市場への投入からわずか2年で撤退に追い込まれた。現在Googleはサムスンと組んで今年後半に新たなAIグラスを投入予定で、Snapも独自のAR(拡張現実)デバイス「Spectacles」を展開しているが、大型のフォームファクターがネックとなっている。
カメラで撮れないカメラ——開発者をどう説得するか
プライバシー設計の徹底は差別化につながる半面、課題も孕んでいる。写真も動画も撮れないカメラ向けにアプリを開発しろと開発者に求めることになるからだ。これが初期の普及の足かせになる可能性は否定できない。
2027年6月の発表が実現すれば、小売ローンチまでに約1年の開発者向け期間を確保できる計算になる。Metaが自社グラスをコンピューティングプラットフォームとして積極的に押し出している中、この期間をどう活用するかが普及の鍵を握る。
スマートグラスが次世代のメインプラットフォームになり得るかという問いへの市場の関心も高い。IDCは拡張・仮想現実ヘッドセット市場が**2028年まで年率43.8%**で成長すると予測している。
Appleのエコシステムが武器になるか
Appleはファッション業界との提携(MetaにおけるRay-Banのような)を持たない。一方で、iPhone・Mac・Apple Watchとのシームレスな連携という既存エコシステムの強みがある。カメラ、マイク、スピーカー、Siriとの深い統合が予定されており、MetaのRay-Ban Metaと同様にハンズフリー通話、ナビゲーション、AIアシスタント機能を備える見通しだ。
Metaが開発者エコシステムの拡充を急ぐ中、Appleが取り得る差別化軸は「ハードウェアとOSの垂直統合」にある。iPhoneやApple Watchで培ったヘルスケアデータの取り扱いノウハウや、App Storeの審査・配布インフラはそのままスマートグラス向けプラットフォームに転用できる資産だ。カメラによる記録を排除した設計であれば、企業・医療・教育といったプライバシー要件の厳しい領域での採用にも道が開けるとみられる。
※編集部の考察:Appleがプライバシーを前面に打ち出す戦略は、消費者市場での普及ペースを犠牲にしてでも「信頼できるプラットフォーム」としての地位を確立しようとする判断と読める。短期的な競争よりも、エコシステム形成を優先する同社の伝統的な手法とも一致する。
2026年リリースという当初の予定から開発が長引いていることは、Appleらしからぬ形で内部の葛藤を外部にさらしている。プライバシーを守りながらどこまで実用的なAI体験を提供できるか——その答えが、AIウェアラブルというカテゴリの命運を左右することになる。
詳細はApple Targets June 2027 Launch for AI Glasses to Rival Meta and Googleを参照していただきたい。