7月27日、TechTargetが「OpenAI expands ChatGPT Health to all adult U.S. users」と題した記事を公開した。OpenAIが医療情報特化機能「ChatGPT Health」を米国18歳以上の全ユーザーへ開放したという内容だが、最も注目すべき数字は健康関連会話の約70%が専用タブ外で発生していたという実態だ。この発見が、今回のアップデートの核心にある。
「ChatGPT Health」とは何か
ChatGPT Healthは、ユーザーが自身の医療記録を対応プラットフォームからChatGPTに連携できる機能だ。医療記録を参照しながら回答することで、より文脈に即した個人化された医療情報の提供を目指している。今年1月に発表された段階では限定的なパイロット運用にとどまっていたが、今回の発表で米国の全成人(18歳以上)へ開放された。
最も重要なアップデート:健康情報を「全会話」に統合
従来のChatGPT Healthは独立したインターフェースとして設計されており、健康に関する質問をする際にはタブを切り替える必要があった。しかしOpenAIが調べると、健康関連会話の約70%が専用タブ外で発生していたことが分かった。食事の準備、旅先でのレストラン探し、家族向けのアウトドア活動を調べる会話の中で、食事制限や怪我の有無をChatGPTが尋ねるケースが珍しくなかったためだ。
この実態を踏まえ、今回の改修ではユーザーが許可を与えることで、ChatGPT Healthに連携した情報をトピックを問わず全会話で活用できるようになった。専用の「Health」タブ(左サイドバー)は引き続き残り、検査結果の解釈や健康トレンドの経時的な分析といった医療特化の用途に使われる。
モデルの強化:無料ユーザーと有料ユーザーで異なる提供
OpenAIは過去数ヶ月のパイロット期間中に医師と連携してモデル改善を進めた。元記事によれば、無料ユーザーと有料ユーザーにそれぞれ異なるモデルが提供されるとされている。
- 無料ユーザー向け:より軽量なモデルを採用。医師コンサルタントから、精度・コミュニケーションの明確さ・完全性・指示への追従性・医療判断への有用性において改善が認められたと報告されている。
- 有料ユーザー向け:OpenAIが「健康領域で最も強力なモデル」と位置づけるモデルを提供。複雑な医療的問い合わせへの対応力が高いとされる。
※元記事に記載されているモデル名は執筆時点で公式アナウンスとの照合が取れていないため、本稿では具体的なモデル名の表記を省いている。正確なモデル名は元記事およびOpenAIの公式ブログで確認されたい。
プライバシーとHIPAAへの対応状況
重要なリスク情報として明記しておく。ChatGPT Healthは現時点でHIPAAには準拠していない(少なくともOpenAIの公式発表にはその記載がない)。HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)は米国の医療情報保護に関する連邦法であり、医療機関や関連事業者に厳格なデータ管理を義務付けるものだ。医療記録を全会話に反映するという機能の性質上、この非準拠という点は利用前に十分に認識しておく必要がある。
ただしOpenAIは以下の点を明言している。Healthに連携した健康情報はモデルの学習や広告ターゲティングには使用しない。ユーザーはいつでも健康情報の連携を解除できる。また、Health上での会話をChatGPTのメモリから切り離すことも可能だ。HIPAA準拠ではないが、独自のプライバシー保護措置を講じているという立場である。
背景:医療AIへの需要は急速に拡大
KFFが今年公開したデータによれば、米国成人の29%がAIを医療質問の回答に活用している。2年前の17%から大幅に増加した数字だ。また、1,250人の米国成人を対象とした別の調査では、健康保険に関する質問で**ChatGPTを好んで使うと答えた回答者が28%**に達している。
一方、医療機関側も患者ポータルに独自のAIチャットボットを組み込む動きを加速しており、OpenAIのような商業技術企業との競合関係がどう展開するかは今後の注目点だ。HIPAA非準拠という現状がどこまで普及の障壁になるかも、医療機関との連携を進めるうえでの課題として残る。
詳細はOpenAI expands ChatGPT Health to all adult U.S. usersを参照していただきたい。