7月26日、MarkTechPostのMichal Sutterが「Black Forest Labs Releases FLUX 3: A Multimodal Flow Model for Image, Video, Audio and Robot Action Prediction」と題した記事を公開した。Black Forest Labs(BFL)がリリースしたマルチモーダルAIモデル「FLUX 3」の構造・性能・アクセス状況について詳しく紹介している。
なぜFLUX 3が注目されるのか
BFLが公表した人間選好評価において、FLUX 3はLuma Ray 3.2との比較で93%の選好率を獲得した。Runway Gen-4.5に対しても77%、有力な競合モデルが揃う中でこれだけの差をつけた点が、今回の発表で最も注目すべき数字だ。
BFLはStable Diffusionの主要開発者らが2023年に設立したスタジオで、画像生成モデルFLUXシリーズを通じてオープンウェイト・商用両面での展開を続けてきた。FLUX.1(2024年8月)、FLUX.1 Kontext(2025年)と世代を重ね、今回のFLUX 3はシリーズとして初めて動画・音声・ロボットアクション予測を画像生成と同一の重みに統合した点で、大きな飛躍となる。単にモダリティを増やしただけでなく、競合の動画生成モデルを上回る定量結果を携えてのリリースである点が、本発表の核心といえる。
画像・動画・音声・ロボット制御を単一モデルで扱う
FLUX 3は、画像・動画・音声の生成と理解を1つのアーキテクチャ・1セットの重みで担うマルチモーダル基盤モデルだ。
BFLのチームが掲げる設計思想はシンプルだ。「画像は空間構造のスナップショット、動画は時間と物理的な動きを復元し、音声は機械的な出来事と音の因果関係を示す。これらはすべて、同一の現実世界の"損失ある射影"に過ぎない」。複数モダリティを同時学習させることで、モダリティ間が互いの制約条件になる——音は衝突に対応し、動きは質量に従う——という考え方だ。
従来の動画生成モデルの多くは画像生成と別個のモデルとして設計されており、音声は後付けで合成するアーキテクチャが主流だった。FLUX 3はこれを単一モデルで統合し、モダリティをまたいだ相互学習によって物理的整合性を高める点が設計上の差別化となっている。
基盤手法:Self-Flow
FLUX 3の骨格となるのが、BFL独自の手法**Self-Flow**(2026年3月発表)だ。フローマッチング(flow matching)目標関数と自己教師あり特徴再構築目標関数を組み合わせる手法で、拡散モデル系の生成品質を保ちながら学習効率を高めることを狙いとしている。
- GitHubのリファレンス実装はApache-2.0ライセンスで公開
- バックボーンはSiT-XL/2(Scalable interpolant Transformer、大規模ビジョントランスフォーマーの一種)、トークンごとのタイムステップ条件付けを採用
- **マスク率25%**でトレーニング。マスク率は学習時に入力の何割を隠すかを示す割合で、自己教師あり学習の難易度・汎化性を調整するパラメータ
- EMA(指数移動平均)ティーチャー(レイヤー20)からスチューデント(レイヤー8)への自己蒸留。EMAティーチャーとは、重みの時間移動平均を保持する安定した教師モデルで、小型スチューデントモデルへの知識転移に使われる
なお、GitHubで公開されているチェックポイントはImageNet 256×256の研究モデルであり、FLUX 3本体ではない。BFLは「同じアプローチのまま、コンピュートとデータを大幅にスケールアップした」と述べている。Self-Flow自体は今回新たに発表された手法ではなく、今回の目新しさはスケールにある。
FLUX 3 Videoの仕様
FLUX 3 Videoが生成できる動画の主な仕様は以下のとおりだ。
- 最大20秒のクリップをネイティブ音声付きで1回の生成で出力
- 対応モード:テキスト→動画、画像→動画、参照クリップからの動画→動画、キーフレーム→動画、入力映像+音声からの動画・音声継続生成
- 多言語ダイアログ、エージェント的なクリップ連結によるマルチショット生成、アニメーションデザインへのタイポグラフィ組み込み
- 人物の表情表現と、物理イベントと音の対応付けに強みを持つとBFLは報告している
学習コンピュートの内訳も公開されており、動画予測が全体の95%超を消費し、音声はトークン全体の0.5%未満にとどまる。
競合比較:人間評価の結果
BFLが公表した人間選好評価(720p・10秒・テキスト→動画)の結果は次のとおりだ。
| 比較対象 | FLUX 3が選ばれた割合 |
|---|---|
| Luma Ray 3.2 | 93% |
| Runway Gen-4.5 | 77% |
| Grok Imagine Video | 69% |
| Kling v3 Pro | 60% |
| Happy Horse v1 | 59% |
| Happy Horse 1.1 | 57% |
| Seedance 2.0 | 52% |
| Gemini Omni Flash | 52% |
比較対象の顔ぶれを補足すると、Luma Ray 3.2はLuma AIが提供する動画生成サービスの最新世代、Runway Gen-4.5はRunway MLの商用動画生成モデルで、いずれも現時点での商用動画生成モデルの上位に位置づけられる。Grok Imagine VideoはxAIによる動画生成機能、Kling v3 ProはKuaishou(快手)の動画生成モデル、Happy Horse v1/1.1はByteDance系とされる動画生成モデル、Seedance 2.0はByteDance傘下のSeed系モデル、Gemini Omni FlashはGoogleのGeminiシリーズの軽量マルチモーダルモデルだ。主要プレイヤーが並ぶ中で、SeedanceとGemini Omni Flashに対しては52%とほぼ拮抗しており、上位陣との差と比べれば競争の難しさも見える。一方でLuma・Runwayという商用動画生成の代表格に対して大差をつけた結果は、問いへの答えとして明確だ。現時点での人間選好評価においては、FLUX 3は競合を圧倒していると言える。
ロボット制御への展開:FLUX-mimic
同じバックボーンがロボット制御ポリシーFLUX-mimicにも転用されている。FLUX 3 x mimicの技術ポストによると、RTX 5090 1枚で80ms未満の推論レイテンシを達成しているとされる。生成AIのバックボーンをロボットアクション予測に直接適用するアプローチは、mimic roboticsとの連携によるものだ。生成モデルの表現力をそのままロボット制御に転用できるかを検証する試みとして、研究コミュニティからも注目を集めている。
アクセス状況
現時点でのリリース状況は段階的なゲート方式だ。
- Video・Action:早期アクセス(申請制)
- Image:続いて公開予定
- オープンウェイト:最後
オープンウェイトの公開が最後に置かれている点は、商用展開を優先するBFLの方針を示している。Stable Diffusionの開発者らが創業した経緯から、コミュニティはオープンウェイトへの期待を持って見守っているが、現段階では商用APIによる段階公開が先行する形となっている。
詳細はBlack Forest Labs Releases FLUX 3: A Multimodal Flow Model for Image, Video, Audio and Robot Action Predictionを参照していただきたい。