7月25日、The Newsが「How Samsung Electronics $200 billion Broadcom deal could reshape the AI chip market」と題した記事を公開した。Samsung ElectronicsがBroadcomと2000億ドル規模・2030年までの戦略的パートナーシップを締結したというニュースは、TSMCが圧倒的なシェアを握るファウンドリ市場に、Samsungが真正面から挑む宣言として注目を集めている。メモリ・ファウンドリ・先端パッケージングを横断する大型契約が、カスタムAIチップの製造覇権にどう影響するかが焦点だ。
2000億ドルの提携が意味するもの
Samsung ElectronicsがBroadcomと2000億ドル規模の戦略的パートナーシップを締結した。提携期間は2030年までとされており、対象範囲はメモリチップ、ファウンドリ(受託製造)、先端パッケージングと幅広い。
Samsungの公式コメントによれば、「この拡大された協業は、AIおよびハイパフォーマンスコンピューティング向けのエンドツーエンド半導体技術において顧客をサポートするSamsungの方針を反映したものだ」としている。単なる製造委託契約ではなく、設計から製造・封止工程までを一体で提供する体制を構築しようという意図が読み取れる。
なぜ今、カスタムAIチップなのか
背景にあるのは、テック企業によるASIC(Application-Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)シフトの加速だ。汎用GPUに頼る構図から脱却し、各社が自社ワークロードに最適化したカスタムAIアクセラレータを内製・調達する方向に動いている。GoogleのTPUやAmazonのTrainiumが代表例であり、Broadcomはその設計を請け負う主要プレイヤーの一角として知られる。
今回の提携はまさにこの潮流に乗るものだ。Broadcomが持つASIC設計のノウハウと、Samsungが持つ製造能力を組み合わせる構図であり、データセンター向けカスタムシリコンの需要拡大を両社が取り込もうとする動きといえる。
技術的なポイント:サブ2nmプロセス
記事が明示している技術面のハイライトは、Samsungのサブ2nmプロセス技術の活用だ。このプロセスを用いてBroadcomの次世代通信チップおよび高速データ転送ソリューションを製造するとされている。
サブ2nmは現時点で量産立ち上げが進行中の最先端ノードだ。TSMCが2nmプロセス(N2)の量産を2025年に開始し先行している中、Samsungがこの領域でBroadcomという大口顧客を確保できれば、ファウンドリ事業における競争力の回復に直結する。歩留まりと製造コストの安定化が今後の焦点になるとみられる。
TSMCとの差を埋められるか
半導体受託製造(ファウンドリ)市場では、TSMCが圧倒的な市場シェアを持ち、AppleやNVIDIAなど主要顧客の大半を押さえている。Samsungのファウンドリ部門はここ数年、歩留まり問題や顧客流出で苦境に立たされてきた経緯がある。
今回の提携について記事は、「Samsungが大企業顧客を確保することでTSMCとの競争上の差を縮める助けになる可能性がある」と指摘している。さらにSamsungは、主要テック企業との協議を経て2nmノードのファウンドリ受注をすでに複数確保しているとも述べられている。Broadcomとの長期契約はその流れを加速させる布石と位置づけられる。
ファウンドリ事業の競合構図については、SemiAnalysisのファウンドリ市場分析なども参照すると理解が深まるだろう。
提携の構造と両社のメリット
この提携から両社がそれぞれ何を得るのかを整理しておきたい。Broadcom側にとっては、先端製造ノードへのアクセス確保と、TSMC一社への依存を分散させるリスクヘッジの意味合いが大きい。Samsung側にとっては、ファウンドリの稼働率向上と、急拡大するASICカスタムチップ市場での存在感獲得が主な目的だ。対象領域はメモリ、ファウンドリ、先端パッケージングと3層にわたり、単一の取引では得られない垂直統合的な関係が構築されることになる。
AIインフラへの投資が拡大する中、カスタムシリコンの製造能力をどこが握るかはサプライチェーン全体に波及する問題だ。SamsungとBroadcomの今回の提携は、その覇権争いにおける重要な一手として市場から注目されている。提携が計画通りに進み、サブ2nmプロセスの歩留まりが安定すれば、ファウンドリ市場の勢力図が書き換わる可能性も排除できない。
詳細はHow Samsung Electronics $200 billion Broadcom deal could reshape the AI chip marketを参照していただきたい。