7月25日、Not a Tesla Appが「Tesla Acquires AI Hardware Company for $2 Billion」と題した記事を公開した。TeslaがAIハードウェア企業を約19.5億ドルで買収したことが正式に確認されたが、被買収企業の社名はいまだ非公開のままだ。さらに異例なのは、総額のうち2億2,200万ドルが特許取得だけに充てられている点で、これはTeslaが今回取得した知財をいかに高く評価しているかを如実に示している。垂直統合を徹底し、外部買収を極力避けてきた同社が、なぜここまでの額を出して外部企業の知財を買い取る必要があったのか——その背景が注目を集めている。
社名は非公開のまま、19.5億ドルの買収が完了
Teslaが今年4月に予告していたAIハードウェア企業の買収が、第2四半期中に正式に完了した。SECへの10-Q(四半期報告書)によると、取引総額は19.5億ドルで、支払いは現金ではなく普通株式および株式報酬によって行われた。
内訳を見ると、17.3億ドルがパフォーマンス目標やサービス条件の達成に連動した形で計上され、残りの2億2,200万ドルは「特許および関連開発技術」という特定資産の取得費用として支払われた。技術の展開が段階的に完了するにつれて、残額が認識される仕組みだ。
この買収を最初に指摘したのは、資産運用会社Brilliant AdviceのCIO、Cern Basher(@CernBasher)で、X上での投稿がきっかけとなって広まった。
Teslaにとって異例の外部買収
Teslaの過去の買収履歴を振り返ると、この規模感の異常さがよくわかる。同社はこれまでの歴史全体で買収した企業は約10社にとどまり、その大半は電池技術または製造自動化に特化したターゲットだった。自社技術のほぼすべてを内製するVertical Integration(垂直統合)を徹底してきた会社であり、AIチップについてもSpaceXやIntelと組んだ「TERAFAB」プロジェクトなど、独自開発路線を進めていた。
さらに言えば、Elon MuskはxAIというAI専業企業を別途創業しており、xAIはSpaceXのAI部門「SpaceXAI」として統合・再編されることが発表されている(※xAIはTeslaではなくMusk個人が設立したAI企業であり、Teslaとは別法人である点に注意)。それにもかかわらず、今回はそのグループ内リソースも活用せず、外部から特許ごと会社を買い取った。つまり、内製もグループ内調達も不可能だった特殊な知財が存在したことを意味する。
候補企業は? テック界隈で憶測が飛び交う
10-Qでは被買収企業名が一切明かされていないため、SNSを中心に憶測が飛び交っている。ただし、以下の候補はいずれも公式に確認された情報ではなく、あくまで推測の域を出ないことに留意されたい。
候補の一つとして名が挙がっているのがDensityAIだ。TeslaのDojoスーパーコンピュータ(大規模AI学習用の自社開発クラスタ)チームの元メンバーが創業したスタートアップで、大規模言語モデル(LLM)の推論処理に特化したアクセラレータとフルスタックシステムの開発を手掛けているとされる。
もう一つの名前として挙がっているのがAtomic Semiだ。伝説的なチップアーキテクトとして知られるJim Kellerが共同創業した、半導体ツーリングおよびミニファブのスタートアップとされている。Jim Kellerは過去にAMDやApple、Intelでも主要チップの設計に携わった人物で、その名前が候補として取り沙汰されること自体、取得した知財の技術レベルを示唆している。
何に使われるのか
記事では2つの主要な用途が示されている。
一つは、Tesla Optimusヒューマノイドロボット向けのカスタムシリコン開発だ。リアルタイム処理能力が求められるロボット制御において、汎用チップでは対応しきれない部分を、今回取得した特許技術で補う狙いがあるとみられる。
もう一つは、次世代の完全自動運転(FSD)モデルへの適用だ。監督なしでの自律走行を実現するためには、現行世代を超えるオンボード推論性能が必要とされており、専用ハードウェア特許の獲得はその加速に直結しうる。

Tesla Optimusの手部分(Not a Tesla App)
被買収企業の名前は依然として不明のままだが、2億2,200万ドルを特許取得だけに充てたという事実は、Teslaが今回の知財を相当高く評価していることを示している。社名・知財の具体的な内容・用途のいずれも現時点では不明な部分が多く、元記事では関連する続報や開示情報についても詳しく触れられている。
詳細はTesla Acquires AI Hardware Company for $2 Billionを参照していただきたい。