7月24日、PyMNTSが「Stripe Eyes $10 Billion Deal for AI Model Marketplace OpenRouter」と題した記事を公開した。Stripeが AIモデルマーケットプレイスのOpenRouterを約100億ドル(約1.5兆円)で買収する交渉を進めているという報道だ。
わずか数ヶ月で評価額が8倍に
Wall Street Journalの報道によれば、Stripeは2025年5月時点で評価額13億ドルだったOpenRouterを、約100億ドルで取得しようとしている。数ヶ月で評価額が約8倍に跳ね上がる計算だ。取引発表は近い可能性があるとされるが、交渉が破談になる余地や、別の買い手が現れる可能性も残っている。なお、OpenRouterの出資者にはMenlo Venturesと、Alphabet(Googleの親会社)の成長投資ファンドであるCapitalGが名を連ねている。
OpenRouterとは何者か
OpenRouterは、OpenAIやAnthropicをはじめとする複数のAIモデルに対して、単一のAPIで横断的にアクセスできるプラットフォームだ。数百種類の大規模言語モデル(LLM)をリストアップしており、開発者はモデルをコスト・性能で比較しながら柔軟に切り替えられる。オープンウェイトモデル(重みパラメータが公開されており、誰でもダウンロードしてローカル環境で実行できるモデル)にも対応しており、クローズドなAPIモデルとオープンな自己ホスト型モデルを同一インターフェースで扱える点が特徴だ。
Wall Street Journalはその立ち位置を「AIを開発する側と、それを使いたい企業の間で収益性の高いニッチを見つけたスタートアップ群の一角」と表現している。AIプロバイダーへの依存を分散させたい企業にとって、こうした「AIゲートウェイ」層の価値が急上昇しているわけだ。
なぜStripeがAIマーケットプレイスを買うのか
Stripeは現在、評価額1,590億ドルに達する決済インフラ企業だ。インターネット上の多くの取引を処理しており、OpenRouterもすでにStripeを使って顧客からの課金を行っている。両社はすでに顧客・パートナーの関係にある。
買収の戦略的な文脈としては、Stripeが近年進めているAIインフラやステーブルコイン決済への事業拡張がある。多くの企業が特定のAIプロバイダーへの依存を避けるためにマルチモデル戦略を採るようになっており、OpenRouterはその「入り口」に位置する。決済インフラとAIモデルルーティングを組み合わせることで、Stripeは企業のAI活用の課金・管理まで一体で提供できる構造を狙っていると読める。
PayPal買収交渉との並走
Stripeが今回の動きを見せているのは、PayPalへの大規模な買収提案と並行してのことだ。StripeはAdvent Internationalと組み、1株60.50ドルという条件で共同提案を出しており、その規模は約500億ドルの銀行融資を背景とした530億ドル超に上る(1株あたりの提案額と融資規模から算出される総取得額)。しかしPayPalの取締役会はこれを「不十分」と判断しており、Stripeとアドベントは次の手を検討中とされる。両社を合わせると年間約3.7兆ドルの取引を処理する規模感だ。
100億ドルのOpenRouter買収と530億ドル超のPayPal買収を同時並行で進めるStripeの動きは、決済企業からAI時代のインフラ企業への転換を急いでいることを示している。
詳細はStripe Eyes $10 Billion Deal for AI Model Marketplace OpenRouterを参照していただきたい。