7月25日、pbxscience.comが「AMD Maps Its Roadmap Through 2030: Zen 7, Zen 8, and Next-Gen Instinct GPUs Unveiled at Advancing AI 2026」と題した記事を公開した。AMDがサンフランシスコで開催した「Advancing AI 2026」カンファレンスにおいて、Zen 7・Zen 8 CPUアーキテクチャおよび次世代InstinctアクセラレータをはじめとするAI向けロードマップを2030年まで公開したことについて詳しく紹介されている。
MI300X比1,000倍という推論性能の推移
今回のロードマップで最も具体的な数字として示されたのが、Instinct MI500シリーズにおけるAI推論性能の目標値だ。2027年にリリース予定のMI500はCDNA 6アーキテクチャを採用し、HBM4E(HBMの第5世代規格であるHBM4をさらに高速化した拡張版メモリ規格)と銅・光インターコネクトの両オプションを備える。AMDは、MI500が2023年投入のMI300X比でおよそ1,000倍の推論性能を達成すると述べており、これは同社が以前のロードマップで示した4年間の性能推移の延長線上にある目標値だ。
その翌年2028年にはMI600シリーズが続く。次世代CDNAアーキテクチャを採用し、同時期に投入が見込まれるNvidiaのフラッグシップアクセラレータと正面から競合する位置づけになる。Nvidiaは近年、BlackwellアーキテクチャのB200・GB200を軸に年次リリースサイクルへの移行を推進しており、AMDもこの領域で同等のロードマップ可視性を示すことで、エンタープライズ・クラウド顧客に対する調達計画上の安心感を訴求する狙いがある。なお、AMDとNvidiaの計算・グラフィクスアーキテクチャを統合した「UDNA」ブランドへの移行が一部で噂されていたが、AMDはデータセンターGPUラインにおいてはCDNAの名称を維持することを明言した。
Zen 7(2028年)とZen 8(2030年)の確認
CPUアーキテクチャ側でも2030年までの計画が公式に示された。
第7世代EPYCプロセッサはコードネーム「Florence」と呼ばれ、Zen 7およびZen 7cアーキテクチャを採用して2028年にリリースされる予定だ。プロセスノードはTSMCの2nmクラス技術への移行が広く見込まれており、行列演算アクセラレーションのx86命令セット標準化を目指すAMD・Intel共同イニシアティブの成果であるACE(AI Compute Extensions)を新たに導入する。
ACEはx86エコシステム全体に対しても重要な意味を持つ。AIワークロードにおけるSIMD・行列演算の命令セット仕様をAMD・Intel双方が共通化することで、ソフトウェアベンダーがアーキテクチャごとに最適化コードを書き分けるコストが削減され、x86プラットフォーム全体のAI競争力底上げにつながると期待されている。ソケットは既存のSP7・SP8プラットフォームを継続するため、現行EPYCユーザーのアップグレードパスは比較的スムーズになりそうだ。メモリはMRDIMM(メモリバス帯域幅を大幅に拡張するRegistered DIMMの次世代仕様)およびLPDDRの次世代規格に対応する。
さらに今回初めて公式に認められたのがZen 8の開発着手だ。コードネーム「Ravenna」と伝えられる第8世代EPYCプラットフォームとして、2030年ごろの投入が見込まれる。プロセスノード、コア数、メモリ仕様といった詳細は未公開だが、過去世代と同様に高性能コアと高効率の「Zen 8c」バリアントに分かれる見通しだ。
ラックスケールプラットフォーム「Helios」も同期更新
チップの世代交代に合わせ、AMDのラック規模AIインフラ向けプラットフォームHeliosも段階的に刷新される。ネットワーク接続にはPensando(AMDが2022年に買収したPensando Systemsのスマートニック製品群)のシリコンが充てられており、世代ごとに以下のように更新される。
- Helios 500(2027年):低消費電力版のZen 6ベースEPYC「Verano」とLPDDR5X、MI500 GPUを組み合わせ、Pensando「Como」「Monza」ネットワークシリコンで接続
- Helios 600(2028年):Zen 7ベースEPYCとMI600 GPUを搭載し、Pensando「Palma」「Levanzo」の次世代ネットワークコンポーネントに更新
CPU・GPU・ネットワークシリコンを一体で世代更新するこの構成は、AMDが単体チップ販売からシステムレベルのソリューション提供へとポートフォリオを拡張していることを示している。
年次リリースサイクルの明示的なコミットメント
今回のロードマップが示す最大のメッセージは、AMDが年次リリースサイクルを2030年まで公式にコミットした点にある。CPUもAIアクセラレータも毎年更新し続けるという計画をここまで明示的に公表することは、数年前のAMDでは考えにくい動きだった。Nvidiaが年次ロードマップの可視性でエコシステムの信頼を獲得してきた手法に対し、AMDが同じ土俵に立つ姿勢を明確にした格好だ。
Zen 8の技術詳細はまだ乏しいが、存在そのものを公式に認めた事実は、AMDがどれだけ先を見据えた公開ロードマップ戦略にシフトしたかを示している。顧客・パートナー企業が複数年の調達・開発計画を立てやすくなるという点で、この透明性戦略はチップ性能の向上と並ぶ競争軸になりつつある。
詳細はAMD Maps Its Roadmap Through 2030: Zen 7, Zen 8, and Next-Gen Instinct GPUs Unveiled at Advancing AI 2026を参照していただきたい。