7月24日、Matthias Bastianが「Sakana claims its AI model router Fugu Ultra v1.1 now beats Fable 5 without even including it in the pool」と題した記事を公開した。この記事では、Sakana AIのAIモデルルーター「Fugu Ultra v1.1」が、ルーターの選択プールに含まれていないAnthropicの最新モデル「Fable 5」を複数のベンチマークで上回ったとSakana AIが主張していることを詳しく紹介している。
最も注目される点は逆説的な構図だ。「プールに加えていないモデルを、プール全体の組み合わせで上回った」という主張は、ルーティング戦略そのものの有効性を示す根拠として持ち出されている。ただし数値はすべてSakana AI自身によるもので、独立した第三者検証は存在しない。この構図をどう評価するかが、本記事全体のテーマになる。
Fugu Ultraとは何か
Fugu Ultraは、Sakana AIが開発したAIモデルルーターだ。単一の大規模言語モデル(LLM)を使うのではなく、複数のトップクラスの公開モデルをプールとして保持し、各クエリを最適なモデルに振り分けるアーキテクチャを採用している。Sakana AIは東京を拠点とするAI企業で、元Google Research研究者らが設立した。
モデルルーターというアプローチ自体は、コスト最適化や性能向上を狙う手法として業界内で注目されてきた。単一の最強モデルを使い続けるより、タスクの難易度や種類に応じてモデルを切り替える方が効率的な場面があるためだ。
比較対象となるFable 5は、AnthropicのClaudeブランドで提供されているモデルの一つだ。Anthropicの公開するモデルラインナップの中で現時点のトップクラスに位置づけられており、Sakana AIはこのモデルを比較の基準に据えている。記事本文中ではFable 5という製品名で一貫して言及されているが、AnthropicはClaudeブランドでモデルを展開しており、Fable 5はその系列に属する。
v1.1での主な変化
Sakana AIによれば、Fugu Ultra v1.1はv1.0と比較して最大7.9ポイントの性能向上を達成した。特に伸びが大きかったのはProgramBenchとTerminalBench 2.1の2つのベンチマークで、コーディング・ターミナル操作系のタスクにおける改善が中心だ。
今回のアップデートで追加された機能として、Claude Code互換のエンドポイントがある。ターミナルから直接Fuguを呼び出せるようになった。Sakanaのコンソールから利用可能で、既存のClaude Codeのワークフローにそのまま組み込める。
アーキテクチャの詳細は技術レポート(arXiv: 2606.21228)で公開されている。この技術レポートでは、複数モデルをどのようにルーティングするかの設計方針や評価手法が説明されている。OpenRouterやVercelといったプラットフォームでの提供はローンチ当初から継続している。
「プールに入れずに超えた」という主張の意味
今回の発表で最も注目されるのが冒頭でも触れた点、すなわちFable 5をルーターの選択プールに含めていないにもかかわらず、ほとんどのベンチマークでFable 5を上回ったというSakanaの主張だ。
通常のモデルルーターなら、より強力なモデルをプールに追加することで性能向上を図る。しかし今回は、Fable 5をプールに加えないままその性能を超えたと主張している。これはプール内モデルの総合的な組み合わせ最適化によって単一の強力モデルに匹敵できる、というルーティング戦略の有効性を示す文脈で使われている。
ただし、これらの数値はすべてSakana AI自身によるものであり、第三者による独立した検証は現時点で存在しない。この点は記事内でも明記されており、数値の扱いには留意が必要だ。
価格・制約・初期評価との比較
料金体系はv1.0から変わらず、入力100万トークンあたり5ドル、出力100万トークンあたり30ドル。新しいトップモデルをプールに追加するまでには約2週間のトレーニングと評価が必要だという。
一方で制約も変わっていない。EUおよびEEAでの提供は引き続き行っていない。理由としてGDPRおよび「EU固有の規制」を挙げている。
初代Fuguのローンチ時はThe Decoderの以前の記事でも触れられているように、批判的な反応が目立った。高いトークン使用量、処理速度の遅さ、期待外れな精度が主な批判点として挙がっていた。v1.1がこれらの懸念にどこまで応えているかは、現時点では自己申告のベンチマーク以上の情報がない。
独立した第三者検証がない中での大きな主張という構図は、AI業界でよく見られるパターンだ。Sakana AIの技術的な主張が外部の評価にどう耐えるかは、今後の独立検証の結果次第だ。
詳細はSakana claims its AI model router Fugu Ultra v1.1 now beats Fable 5 without even including it in the poolを参照していただきたい。