7月24日、CNBCが「Moody's says 'unprecedented' AI spending threatens credit quality of Amazon, Meta, Alphabet and others」と題した記事を公開した。格付け機関Moody'sが大手テック企業のAIインフラ投資急増による信用力低下リスクを警告したもので、「循環型AIエコシステム」という業界構造そのものへの懸念が核心にある。
「循環型AIエコシステム」という構造的リスク
Moody'sが今回の警告で最も強調するのが、AI業界内部に形成された「循環性」だ。
ハイパースケーラー(Microsoft・Amazon・Alphabet・Metaのような超大規模クラウド・AI基盤企業)各社は、OpenAIやAnthropicといったIPO前のAIラボに数十億ドルを投資している。そのAIラボは受け取った資金を、同じハイパースケーラーのクラウドコンピューティングサービスに費やす——という相互依存の構造が出来上がっている。Moody'sはこれを「循環型AIエコシステム」と表現した。
各社が同じAI顧客・同じ需要予測に依存するこの構造は、一社の前提が崩れたとき、業界全体に連鎖するリスクをはらんでいる。旺盛に見えるAI需要が、実は業界内部の資金循環によって下支えされている側面があるとすれば、外部需要の鈍化が生じた際の影響は予測以上に大きくなりかねない。
ソフトウェア企業が「重厚長大」モデルへ転換
Moody's Ratingsは今週、ハイパースケーラー各社のAI設備投資が前例のないペースで膨張しており、フリーキャッシュフローの圧迫と財務リスクの増大を招いていると警告した。
Moody'sが追跡する6社はMicrosoft、Amazon、Alphabet、Meta、Oracle、CoreWeave。これらの企業のキャピタルエクスペンディチャー(capex:データセンター等の物理資産への設備投資)は、2026年に7,850億ドルに達し、2027年には約1兆ドルに迫るとMoody'sは予測する。
この状況の本質は、シリコンバレーが数十年間守ってきたビジネスモデルの崩壊にある。ソフトウェアは複製コストがほぼゼロで、スケーラブルなクラウドサービスとあわせて「資産軽量(アセットライト)モデル」を実現してきた。それが今、生成AIによって「資産重量(アセットヘビー)モデル」への転換を強いられている。大量の電力を消費するGPU(画像処理装置)サーバーを詰め込んだデータセンターは、ソフトウェアとは比べ物にならない物理的・財務的コストを伴う。
負債は直接・間接あわせて巨額に
資金調達のため、各社はウォール街への依存を強めている。Moody'sによれば、6社の直接負債はすでに約4,600億ドルに達している。さらにAlphabetは先月、AIインフラ拡充のため850億ドル規模の資金調達を発表した(元記事の原文表現はequity offeringとされており、株式発行による調達を指すが、詳細な条件は元記事を参照されたい)。
より問題が大きいのが「オフバランスシート」の負債だ。オフバランスシートとは、通常の貸借対照表(バランスシート)上に計上されない債務・資産のことを指す。直接借入を避けるため、各社はデータセンターの長期リース契約を多用しているが、Moody'sはこれらのリース債務を1.2兆ドルと試算しており、そのうち8,200億ドル超はまだ建設が始まっていないデータセンターのリースだ。会計上は負債として計上されないが、Moody'sは「実質的な負債相当の債務」とみなして評価している。
信用力への影響:大手4社 vs Oracle・CoreWeave
Moody'sはMicrosoft、Alphabet、Amazon、Metaの4社については、「世界最強クラスの財務基盤を持つため、投資適格格付けが直ちに引き下げられるリスクは低い」としている。フリーキャッシュフローの縮小と借入余力の低下は進んでいるが、差し迫った脅威とは見ていない。
一方、OracleとCoreWeaveへの圧力は即時的かつ深刻だ。
- Oracle:格付けはBaa2(ネガティブアウトルック)。投資適格の最低水準までわずか2ノッチ。投資適格を割り込めば機関投資家による売却圧力が生じ、資金調達コストが急上昇するリスクがある。
- CoreWeave:高利回り(ジャンク)市場に位置するBa3格付け。ジャンク債とは投資適格未満の債券を指し、利回りが高い反面、信用リスクも高い。CoreWeaveはGPUハードウェアの調達をプライベートデット(非公開市場での私募融資)という複雑な構造で賄っており、市場環境の変化に対する脆弱性が高い。
需要は底堅いが、構造変化は不可逆
もちろん、AI需要そのものは旺盛で、クラウドビジネスも成長を続けている。各社は数千億ドル規模の長期顧客契約を締結済みで、これが収益の予見可能性を高め、信用プロファイルを支えている。
それでもMoody'sは、「テック業界の財務プロファイルはクラウド時代には見られなかった構造的変化を遂げつつある」と結論づける。
「投資家はますます、これらの企業が投資に見合ったリターンを実現できるかに着目するようになるだろう」——Moody's
詳細はMoody's says 'unprecedented' AI spending threatens credit quality of Amazon, Meta, Alphabet and othersを参照していただきたい。