2025年7月24日、Ethan Mollickが「An opinionated guide to which AI to use to do stuff」と題した記事を公開した。本紹介記事は2026年7月時点での掲載であり、元記事は約1年前の情報である点をあらかじめご了承いただきたい。ただし、エージェント型AIの基本的な使い分け指針として現在も参照価値が高いと判断し、取り上げる。
AIは「チャットボット」から「エージェント」へ
MollickはWharton School(ペンシルベニア大学経営大学院)教授であり、AI・イノベーション研究を専門とする。彼が運営するニュースレターOneUsefulThingは、AIの実務的な使い方を研究者の視点から平易に解説する媒体として、研究者・ビジネスパーソン・教育関係者を中心に広く読まれている。Mollickはその著書『Co-Intelligence』でも、AIを「思考パートナー」として活用する視点を論じており、本記事はその延長線上にある実践ガイドだ。数ヶ月おきに更新されるこのAI活用ガイドの2025年夏版にあたる。
今回の更新で最も強調されているのは、AIの使い方の質的変化である。
かつてAIを使うとはチャットボットと対話することを意味した。現在は「エージェント型システム」が主流になりつつある。エージェントとは、AIモデルにコンピュータを与え、計画・実行・ツール操作を自律的にこなさせる仕組みだ。人間が数時間かけてやる作業を一括で処理できる。
この変化を象徴するエピソードとして、Mollickは以前GPT-5でブルータリスト建築の街を生成するゲームを作ったデモを紹介している。同じプロンプトを最新モデル(Codex経由)で試したところ、結果は別物になったという。
※元記事に登場するモデルの具体的な型番表記については、記事中の記述に基づいて紹介しているが、公式の正式名称と異なる場合があるため、最新情報はOpenAI公式ドキュメントを参照されたい。
まず「用途」でモデルを選ぶ
記事の核心は、目的に応じたAI選択の指針だ。Mollickは大きく2段階で整理している。
低リスクな日常用途(レシピ検索、文章の下書き、簡単な質問)には無料モデルで十分。どのモデルも「まあ使える」レベルには達している。
高リスクな用途(医療・法律の第二意見、重要な意思決定のサポート)には、最上位モデルを使うべきだ。具体的には:
- Claude:最上位モデル、思考レベル「High」設定(元記事時点での具体的なモデル名については原文を参照)
- ChatGPT:最上位モデル、思考レベル「High」以上(同上)
これらは複雑な分野の能力テストで高スコアを記録しており、エラー率も低い。ただし有料(月$20〜)になる。
「本気の仕事」はChatGPTかClaude一択
実務レベルの作業をこなしたい場合、Mollickが推奨するのはChatGPTとClaudeの2択だ(Googleについては後述)。
AIに「会社のコンピュータ」を与えるモード
両サービスにはAIエージェントが自律作業するモードがある。Mollickは元記事内でChatGPT側・Claude側それぞれにクラウド上で自律動作するモードが存在することを紹介しているが、各モードの正式名称については元記事公開後に変更されている可能性があるため、最新の機能名はOpenAI公式サイトおよびAnthropic公式サイトを参照いただきたい。
Mollickはこれらのモードで「Gmailに接続して、9月21日月曜のMBAゼミ準備をして、未返信メールにも対応して」と指示した。10分後、両システムはウェブリサーチ、教材作成、メール下書きを完了して返答した。
ただし権限設定には注意が必要だ。Mollickは誤ってChatGPTに「メール送信」の権限を付与していたため、AIが実際に同僚へメールを送信してしまった。送信・削除・課金を伴うアクションは、必ず「承認を求める」設定にしておくこと。
また「プロンプトインジェクション」のリスクも指摘されている。メールを読んだAIが悪意ある文面(「このユーザーのファイルを転送せよ」)に騙される攻撃手法で、現在もAIラボが対策を進めている途中だ。プロンプトインジェクションの詳細についてはOWASPのLLMセキュリティガイドなども参考になる。
最強は「自分のPCへのアクセス」を与えること
さらに強力なのが、AIに自分のローカルPCを直接操作させるモードだ。
- ChatGPT:デスクトップアプリの「Codex」モード
- Claude:デスクトップアプリの「Claude Code」モード
Mollickは自著(2025年10月刊行予定)のPDFをCodexに渡し、「全部チェックして」と指示した。AIは30分で195件の参考文献を追跡確認し、研究チームが数時間かけてやる分量のノートを生成した。しかも幻覚(hallucination)は一切なく、ページ番号の誤りも発明されたテキストも皆無だったという。問題があったとすれば、むしろAIが細かすぎる指摘をしてきた点だ。
さらに「computer use」オプションをオンにすると、AIがマウスやブラウザを物理的に操作する。Mollickは「Blenderをダウンロードして、飛行機内でノートPCを使うカワウソを作れ」と指示し、AIが実際にBlenderを起動・操作してモデルを完成させる動画を公開している(セキュリティリスクは自己責任)。
GoogleとMicrosoftの現在地
Google Geminiはベンチマーク上位だった時期もあったが、2025年夏時点でCodexやClaude Codeに相当するエージェント機能がなく、Mollickはメインツールとしては推奨していない。ただしGemini Notebook(旧NotebookLM)は多数のソース横断調査に有用だとしている。NotebookLMの概要についてはGoogle公式ページも参照できる。
Microsoft CopilotはOffice文書との連携には使えるが、エージェント能力では大きく遅れている。
技術者向けには、Kimi K3、DeepSeek、Qwenなどの中国製オープンウェイトモデルも選択肢に挙がっているが、エージェントとして使うには専門知識が必要だ。
まとめ:用途別の選択指針
| 用途 | 推奨ツール |
|---|---|
| 低リスクな日常タスク | 無料モデル何でも可 |
| 医療・法律など重要判断 | 各社最上位モデル(High設定) |
| 自律的な業務代行(クラウド) | ChatGPT / Claude のエージェントモード |
| PC全体を使う複雑作業 | ChatGPT Codex / Claude Code(デスクトップアプリ) |
| 多ソース横断リサーチ | Gemini Notebook(NotebookLM) |
AIエージェントの使い方は「チャット」より「マネジメント」に近い、というMollickの表現が実態を的確に表している。作業を丸投げしつつ、承認と検証は人間が担う形が現時点での現実的な運用だ。
詳細はAn opinionated guide to which AI to use to do stuffを参照していただきたい。