7月23日、TFTC.ioが「OpenAI Raises Infrastructure Spend to $750B as Losses Hit $38.5B」と題した記事を公開した。TFTC.ioはビットコインおよびマクロ経済の観点から技術・金融インフラを分析することを編集方針とするメディアであり、AIデータセンターの電力消費がビットコインマイナーを含むエネルギー市場全体に与える影響を継続的に取り上げている。本記事では、OpenAIがインフラ支出計画を7500億ドルに引き上げる一方で2025年の純損失が385億ドルに達し、財務の持続可能性に根本的な疑問が生じていることを詳しく紹介している。
売上高の57倍に膨らんだコミットメント
OpenAIが2030年までのインフラ支出見通しを約7500億ドルに引き上げた。ウォール・ストリート・ジャーナルが7月22日に報じたもので、同紙が2026年初頭に伝えた計画値6000億ドルからの再引き上げとなる。
この数字の軌跡だけでも混乱ぶりが伝わる。2025年1月のStargate Project発表時が5000億ドル、その後サム・アルトマンが1.4兆ドルと発言、WSJが2026年2月に6000億ドルと報道、そして今回7500億ドルへと再エスカレーション。修正のたびに財務の裏付けは薄れている。
2025年の実績は厳しい。売上高130.7億ドルに対して純損失385億ドル、総費用・経費は340億ドル。CFOのサラ・フレアは非公式の場で、「収益成長が計画通り進まなければ、将来のコンピューティング契約を履行できない可能性がある」と懸念を示しているとWSJが報じた。
コミットメント(7500億ドル)を年間売上高(130.7億ドル)で割ると、その比率は約57倍。この数字が今の財務構造の核心だ。
拡大するコンピュートフットプリント
支出増加の主な要因は、OracleとAWSとの大型契約だ。
- Oracle:データセンター容量として約6ギガワット
- AWS:8年間で1380億ドル、Amazon Trainiumチップ容量2ギガワットを含む
コンピュートの実稼働容量も急拡大している。CFOフレアの発言として伝えられた数字によれば、2023年時点の約200メガワットから、2024年に600メガワット、2025年末には1.9ギガワットに達した。共同創業者のグレッグ・ブロックマンは、OpenAI対マスクの訴訟において「2026年単年のコンピューティング支出だけで500億ドルを見込む」と証言している。
新拠点として発表されたのが「Project Camellia」。ジョージア州エフィンガム郡への200億ドル規模のデータセンターキャンパスで、OpenAIが自ら主任設計・建設者となる初めての施設だ。同社はジョージア・パワー(電力会社)と契約を結び、2028年から2032年の間に3.2ギガワットの電力供給を受ける。施設責任者には、xAIのColossusデータセンター(メンフィス)の元ゼネラルマネージャーであるブレント・メイヨーを起用した。
OpenAIが2030年に設定している目標売上高は2800億ドル以上だ。
電力争奪:ビットコインマイナーへの直撃
エネルギー面での影響は、AI業界の外にも波及する。ジョージア・パワーとの契約で押さえた3.2ギガワットは、長期の電力購入契約(PPA)として固定される。この容量は柔軟に動かせない。
TFTC.ioがこの問題を重点的に取り上げる背景には、ビットコインマイナーが電力市場の構造変化に対して特に脆弱であるという同メディアの問題意識がある。ハイパースケールのAIデータセンターが長期PPAで大容量を確保するたびに、同じグリッド上の他の産業ユーザーが使える供給量は減る。影響を受ける代表例がビットコインマイナーであり、ERCOT(テキサス)、PJM(東部)、南東部の各グリッドでは、PPA価格そのものへの上昇圧力が構造的に高まっている。
エネルギー市場の再編という観点では、米エネルギー省のテキサスグリッド向け融資(32.6億ドル)や、AIデータセンターに関連した収用(エミネント・ドメイン)の動きもその延長線上にある。
収益モデルと調達規模の乖離が示すもの
CFOが非公式にリスクを認めているという事実そのものが、何かを示唆している。
楽観シナリオの条件は明確だ。2030年までにOpenAIが年間2800億ドルの収益をGAAP黒字の見通しとともに達成し、かつグリッド容量が電力不足や料金急騰なしに拡大できること。いずれも現状のトレンドは支持していない。
注視すべき指標は2つ。OpenAIの四半期収益の増加ペースが支出ペースとのギャップを縮めているか、そしてERCOTと南東部の卸電力価格の動向だ。CFOの懸念が公式な契約再交渉に発展した場合、OracleとAWSが最初の打撃を受け、その後ろにいる全ての産業電力ユーザーにリプルが広がる。
詳細はOpenAI Raises Infrastructure Spend to $750B as Losses Hit $38.5Bを参照していただきたい。