7月23日、Pierluigi Paganiniが「Google Released Gemini 3.5 Flash Cyber AI, a Specialized AI Model for Vulnerability Hunting」と題した記事を公開した。Google DeepMindが脆弱性の発見・修正に特化したAIモデル「Gemini 3.5 Flash Cyber」を政府および信頼パートナー限定で公開したことを詳しく紹介している。
脆弱性ハンティング専用AI、一般公開なし
Google DeepMindは、セキュリティに特化したAIモデル「Gemini 3.5 Flash Cyber」を発表した。既存の3.5 Flashアーキテクチャをベースに、ソフトウェアの脆弱性の発見・検証・パッチ適用を目的としてファインチューニングされたモデルだ。
最大の特徴は、一般公開しないという判断である。Googleは発表文の中で次のように述べている。
"Given the dual-use nature of this technology, we have taken an intentional approach to deploying 3.5 Flash Cyber. The model will be exclusively available to governments and trusted partners via CodeMender soon as part of a limited-access pilot program."
「デュアルユース(軍民両用)」とは、攻撃にも防御にも転用できる技術を指す。Googleは、このモデルが攻撃的なセキュリティ作業において十分な能力を持つため、アクセスを制限することで広範な悪用を抑止すると明言している。政府や信頼パートナーに先行アクセスを与えることで、「防御側が脆弱性を先に発見・修正できるようにする」という設計思想だ。
なぜ今、政府限定なのか
この判断の背景には、AIによるセキュリティリスクの急拡大という業界全体の文脈がある。Googleは今回の発表の中で次のように述べている。
"AI models have become capable of finding security vulnerabilities faster than current systems can fix them."
AIが脆弱性を発見する速度が、現在のシステムが修正できる速度を上回りつつある、という認識だ。これは防御側にとっての好機であると同時に、悪意ある行為者が同等のAI能力を手にした場合のリスクを示してもいる。
こうした背景を踏まえ、GoogleはProject Zeroチームによる自動化された脆弱性研究(Big Sleep)など、AI活用の防御側アプローチをこれまでも推進してきた。Gemini 3.5 Flash Cyberはその延長線上にある取り組みだが、デュアルユース性がより明確に問題となる能力水準に達したことで、配布範囲を政府・信頼パートナーに限定するという判断に至ったとみられる。AIの兵器化・悪用リスクに対するガバナンスのあり方が問われる中、Googleが「能力を持ちながら公開しない」という選択肢を明示的に採ったことは注目に値する。
CodeMenderとの組み合わせで真価を発揮
3.5 Flash Cyberは、Google DeepMindが提供するコードセキュリティ向けAIエージェント**CodeMender**を通じて提供される。
CodeMenderは複数の3.5 Flash Cyberエージェントを並列実行し、1つの統合レポートを生成するマルチエージェント構成を採用している。3.5 Flash Cyberはトークンあたりのコストが大規模モデルより低く設計されており、並列実行との組み合わせによって1セッションあたりのコードカバレッジが大幅に拡大する。
評価にはCyberGymベンチマークが用いられており、CodeMenderのマルチエージェント構成内でフロンティアレベルの競争力ある性能を達成しているとされる。DeepMindのスポークスパーソンは、今後レッドチーミング機能やエンタープライズ向けエンドツーエンドの防御機能を追加する計画も明らかにしている。
同時発表の2モデル:3.6 Flashと3.5 Flash-Lite
3.5 Flash Cyberと同時に、汎用系のモデルも2本リリースされた。
Gemini 3.6 Flashは、コーディング・知識処理・マルチモーダル性能を強化しつつ、Artificial Analysis Indexによれば3.5 Flashより出力トークン数を17%削減した。価格は入力100万トークンあたり$1.50、出力100万トークンあたり$7.50。DeepSWEベンチマークではソフトウェアエンジニアリングで49%(3.5 Flashは37%)、MLE Benchで63.9%(同49.7%)、OSWorld-Verifiedで83.0%(同78.4%)と、いずれも前モデルを上回る。
Gemini 3.5 Flash-Liteは速度とスループット重視の設計で、Artificial Analysis計測で毎秒350出力トークンを実現。価格は入力$0.30/百万トークン、出力$2.50/百万トークン。コンピュータ操作機能がビルトインツールとして追加され、複数のエージェントベンチマークで旧3 Flashモデルを上回る。
3.6 FlashおよびFlash-Liteは、Google AI Studio、Gemini API、Gemini Enterprise Agent Platform、Geminiアプリから即日利用可能だ。なお、GoogleはGemini 3.5 Proがパートナーとのテスト段階にあること、Gemini 4の事前学習がすでに開始されていることも明らかにしている。
詳細はGoogle Released Gemini 3.5 Flash Cyber AI, a Specialized AI Model for Vulnerability Huntingを参照していただきたい。