7月24日、The Next Webが「AMD is investing $5 billion in Anthropic and deploying 2 gigawatts of Helios GPUs to run Claude」と題した記事を公開した。AMDがAnthropicに最大50億ドルを投資し、自社GPU群でClaudeを運用する戦略的パートナーシップを締結したという内容だ。規模感だけでも十分に大きいが、真の焦点はAMD長年の課題であるソフトウェアエコシステムの改善にある。
AMDがAnthropicに50億ドル投資、2GWのGPUでClaudeを動かす
AMDとAnthropicは火曜日、戦略的パートナーシップを発表した。AMDはAnthropicに最大50億ドルを出資し、最大2ギガワット(GW)分のAMD Instinct MI450シリーズGPUを「Heliosラックスケールソリューション」として展開してClaudeを運用する。第1弾の1GW分の展開は2027年上半期に開始される予定だ。
AnthropicはすでにアムドのMI355X GPUを実運用に使っており、今後はMI455XアクセラレーターとEPYC「Venice」CPU、Pensandoネットワーキングへとスケールアップする。なお、MI355XとMI455XはいずれもInstinct MI300/MI400系列に属するアクセラレーターだが、前者が現行世代、後者が次世代製品にあたる。現時点では両者が並存する形で記事中に登場しており、移行の文脈で読むと理解しやすい。
本題はROCm改善にある
ハードウェアの規模も大きいが、エンジニアリング面での協業の方が長期的なインパクトは大きい可能性がある。
AMDとAnthropicは、ClaudeをAMD Instinct GPU向けのワークロード最適化に活用し、**ROCm(AMDのGPUコンピューティングソフトウェアスタック)の開発を加速**させると発表した。AMDはまた、自社のエンジニアリング・製品開発チーム全体にClaudeを展開する。
ROCmはNvidiaのCUDAに相当するソフトウェア基盤だ。AMDのGPUがスペック上は競合できていても、AIエンジニアがNvidiaを選び続ける主因はこのソフトウェアエコシステムの差にある。カーネル最適化・ライブラリの充実度・デバッグツールの成熟度といった面でCUDAエコシステムとの乖離が長年指摘されてきた。
今回の協業でAnthropicがROCm改善にどう貢献するかについて、元記事は明示的に詳細を語っていないが、AMDが自社エンジニアリングチーム全体にClaudeを展開する点が一つの手がかりになる。AMDの開発者がClaudeをコード生成・ドキュメント作成・テスト自動化に日常的に用いることで、ROCmの開発サイクルそのものを加速させる狙いがあると読める。「自社顧客のAIを使って自社のソフトウェアを修正する」という構造が成立しており、長年AMDの足かせになってきた問題を解消できるかどうかが、今回の最大の注目点だ。
Anthropicのマルチベンダー戦略が鮮明に
今回の提携によって、Anthropicのコンピューティング調達戦略が本格的なマルチベンダー体制に移行したことも明確になった。
| ベンダー | 内容 |
|---|---|
| Google / Broadcom | 最大規模のコンピューティング契約 |
| Amazon | Trainiumチップ、5GW |
| CoreWeave | Nvidia GPU |
| SpaceX | Colossusデータセンター |
| AMD(今回) | Helios MI450、2GW |
Anthropicのチーフコンピュートオフィサー、Tom Brown氏は「適切なワークロードを適切なハードウェアにマッピングする能力を得た」とコメントした。フロンティアモデル開発においてコンピュートが最大の制約要因となっている現在、特定のチップベンダーへの依存を分散させるリスクヘッジの意味合いは大きい。推論・ファインチューニング・研究用途といった異なるワークロードごとに最適なハードウェアを使い分けられる体制を整えることは、コスト効率とレジリエンスの両面で合理的な判断だ。
Nvidiaが先行した「投資で需要を固める」手法をAMDも採用
AMDのCEO Lisa Su氏はこの提携を「次世代AIインフラの主要プラットフォーム」と表現した。戦略の構図としては、Nvidiaが先行してきた手法と同じだ。Nvidiaは複数のAIインフラ企業に出資し(直近ではNebiusに20億ドル)、自社ハードウェアの需要を確保してきた。AMDも顧客に投資することで、世界最高水準のAIモデルの一定シェアをNvidiaではなく自社チップで運用させる狙いだ。
HeliosがNvidiaのNVL72と本番スケールで真に競合できるかどうかは、最初の1GW展開が答えを出すことになる。その結果次第で、AMDがAIインフラ市場における本格的な第2極として機能し始めるかどうかも見えてくる。
詳細はAMD is investing $5 billion in Anthropic and deploying 2 gigawatts of Helios GPUs to run Claudeを参照していただきたい。