7月22日、Crunchbaseが「Led By DeepSeek, 10 Frontier Labs Rush Onto The Crunchbase Unicorn Board In June」と題した記事を公開した。2026年6月、DeepSeekを筆頭とする10社のAIラボを含む計34社がユニコーン企業リストに新たに加わり、1ヶ月で1,100億ドル超の評価額が積み上がった。AI投資の加速が数字として鮮明に表れた月となった。
DeepSeek、初の外部調達で評価額5兆円超
6月最大のトピックは、中国・杭州発のオープンソースモデル開発企業DeepSeekのユニコーン入りだ。同社は創業2年で74億ドルのシリーズAを実施し、評価額は500億ドル(約7.5兆円)に達した。これは同社にとって初の外部資金調達であり、スタートアップの初回外部調達としては異例の規模だ。ラウンドはCEOのLiang Wenfeng氏が主導した。
DeepSeekは2025年初頭に公開した推論モデル「R1」がOpenAIのo1と同等の性能を大幅に低いコストで実現したとして一躍注目を浴びた経緯がある。今回の資金調達は、同社が2027年第2四半期を目処に上海証券取引所へのIPOを計画しているとも報じられており、中国AIエコシステムの象徴的な動きとして位置づけられる。
今回ユニコーン入りした10社のAIラボの合計評価額は650億ドル。6月に加わった34社全体では1,100億ドル超の価値が積み上がった計算だ。
注目のAIラボ新興ユニコーン
DeepSeek以外にも、アーキテクチャや応用領域で個性的な企業が名を連ねる。
Flourish(ニューヨーク)は、神経科学に基づいた新しいAIアーキテクチャ「Cortex AI」(同社が開発中の低消費電力向け独自アーキテクチャ)を開発中。Jeff Bezos氏やGoogleのベンチャー部門GVらから5億ドルのシリーズAを調達し、評価額は25億ドル。創業1年未満でのユニコーン到達だ。
General Intuition(ニューヨーク)はロボティクス向けモデルを開発しており、トレーニングデータにゲーム動画を活用するという独自アプローチが特徴。姉妹会社のゲームクリップ共有サービス「Medal」の映像を学習に使う。Khosla Ventures主導で3億2,000万ドルのシリーズA、評価額は23億ドル。
Sarvam AI(インド・ベンガルール)はインドの「ソブリンAI(国家が外部依存なくAI基盤を自国で保有・運営する概念)」開発企業で、HCLTech主導のシリーズBで2億3,400万ドルを調達し評価額15億ドル。国家単位でのAI自立を目指す動きが資金を集め始めている。
Mirendil(サンフランシスコ)はAI研究自体を自動化するラボで、a16zとKleiner Perkinsが共同リードする2億ドルのシードで評価額10億ドル。創業1年未満でのユニコーン入りだ。
ロボティクスとAIインフラも急増
AIラボと並んで目立つのがロボティクスとAIインフラで、各4社がユニコーン入りを果たした。
ロボティクスでは、ドイツのNeura Roboticsがステーブルコイン発行企業Tetherを主要投資家に迎えた14億ドルのシリーズCで評価額70億ドルと、AIラボを除けば最大規模。中国勢では深圳のAstribotと広東省のDexForceがともに評価額15億ドルでヒューマノイドロボット分野に参入。DexForceは2026年中に1,000台出荷を見込む。
AIインフラでは、仮想通貨マイニングからデータセンター構築へピボットしたIonic Digital(評価額24億ドル)や、AMDチップをクラウドで提供するTensorWave(評価額16億ドル)など。Runpodは開発者向けAIクラウドとして100万人の開発者が利用しており、シリーズAで1億ドルを調達した(評価額は非公開)。
一方で総資産は1兆ドル超減少
新規ユニコーンの流入とは裏腹に、Crunchbaseユニコーンボードの総評価額は1兆ドル超の減少となった。最大の要因はSpaceXのIPOだ。ボードから最高評価額企業が抜けたほか、AIコーディングツール「Cursor」の開発元AnysphereがSpaceXに600億ドルで買収された(前回評価額は293億ドル)。SpaceXによる買収は宇宙・防衛領域でのAIコーディング活用を目的とした戦略的投資と報じられており、ソフトウェア企業がハードウェア・インフラ企業に取り込まれる新たな潮流を示す事例として注目されている。
また、GPU上のソフトウェアスタックとして動作するAIインフラ企業Modular(MojoやMAXエンジンの開発元として知られる)はQualcommに買収された。カスタマーサポート向けAIエージェントFinはSalesforceに買収され、Agentforceプラットフォームへの統合が想定される。いずれも直近の私募評価額を大幅に上回る金額での売却とされており、大手テック企業によるAIスタートアップ取り込みの動きが買収という形でも加速していることを示している。
地域別の分布
新規34社の内訳は、米国が16社、中国が8社と2強の構図が続く。インドと英国、ドイツからそれぞれ2社、オランダ・ベルギー・カナダ・サウジアラビアから各1社が加わった。中国勢はAIラボ・ロボティクス・動画生成と幅広いセクターでユニコーン入りを果たしており、AIの地政学的な競争が資金調達の場でも鮮明に表れている。
詳細はLed By DeepSeek, 10 Frontier Labs Rush Onto The Crunchbase Unicorn Board In Juneを参照していただきたい。