7月23日、Roboflowが「Gemini 3.6 Flash for Vision: Evaluation and Benchmarks」と題した記事を公開した。Googleが2026年7月21日にリリースしたGemini 3.6 Flashのビジョン性能を、独自の非公開ベンチマークで実測評価した結果だ。結論から言えば、動画理解ではリーダーボード1位を獲得し、物体検出を除くほぼ全タスクで前世代以上のコストパフォーマンスを発揮している。
Googleは3.6 Flashを「ワークホース(主力)モデル」と位置付けており、前世代のGemini 3.5 Flashより高速・低コストで、同じタスクに対する出力トークン数を約17%削減している。
Roboflowはこのモデルを独自のRoboflow Vision Evalsにかけた。このベンチマークは非公開で、テスト画像と正解データの大部分は公開されていない。モデルがベンチマーク用にチューニングされる「ベンチマックス」を防ぐためだ。
要点:物体検出を除けば、Gemini 3.6 Flashは3.5 Flash以上のコストパフォーマンスを発揮する。特に動画理解では全モデル中1位を獲得した。
動画理解でトップ
最大の収穫は動画性能だ。Gemini 3.6 Flashは動画リーダーボードで1位(**スコア69.35%**)を獲得し、2位のGemini 3.5 Flash(67.77%)を上回った。

評価にはVantageBenchとVideoNetという2つの公開ビデオ理解ベンチマークのサブセットを使用した。Roboflowは強力な公開ビデオevalが少ないとして、独自の動画評価も開発中だという。
唯一の弱点:物体検出
物体検出(Object Detection)だけは明確な後退だ。精度指標のmAP@50でGemini 3.6 Flashは下位グループに沈み、Gemini 3.5 Flashはおろか、廉価版のGemini 3.5 Flash-Liteにも劣る結果となった。
記事では「3.6 Flashは怠惰になった(got lazy)」と表現している。多くの画像で、複数の正確なバウンディングボックスを返す代わりに、大きくてズレた1つのボックスを返す挙動が見られた。また、JSONが壊れた形式で出力されるケースも頻発し、モデルが明らかにオブジェクトを認識しているにもかかわらず、パース失敗でレスポンスが失われることもあった。
この単一ボックス問題は、リリース直後から他のユーザーからも同様の報告が上がっているという。


興味深いのは、カウンティング(物体の個数を数えるタスク)では3.6 Flashがリーダーボードのトップに立った点だ。検出スコアが低くても、物体を「見る」能力が落ちたわけではなく、あくまでボックスを「描く」部分がおかしくなったという構図が見える。
画像タスク全体と価格比較
物体検出以外の画像タスクでは、3.6 Flashは上位か同水準に収まっている。
- データ抽出:トップタイ
- 推論(Reasoning):中位
- カウンティング:トップ(3.5 Flashをわずかに上回る)
廉価版の3.5 Flash-Liteは最速・最安だが、推論タスクでは全モデル中最下位。合計や価格差の計算など、1ステップの思考が必要な問いを取りこぼしやすい。
価格は以下の通りだ。
| モデル | 入力 | 出力 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash | $1.50/MTok | $9/MTok | 物体検出が最強 |
| Gemini 3.6 Flash | $1.50/MTok | $7.50/MTok | 安く速く、動画で最強 |
| Gemini 3.5 Flash-Lite | $0.30/MTok | $2.50/MTok | 最速、推論が弱い |
出力コストで比べると、3.6 Flashは3.5 Flashより約17%安い。
使い分けの指針
Roboflowは以下の判断基準を示している。
- 使うべき場面:一般的な画像理解、データ抽出、カウンティング、動画理解。コストを抑えつつ3.5 Flash同等以上の性能が必要な場合のデフォルト候補。
- 使わない方がいい場面:正確なバウンディングボックスが必要な物体検出。この用途では、汎用ビジョンモデルではなくRF-DETRを自前データでファインチューニングすることを推奨している。精度・コスト・レイテンシの全てで汎用モデルを上回り、構造化された出力を安定して返せるとしている。
詳細はGemini 3.6 Flash for Vision: Evaluation and Benchmarksを参照していただきたい。