7月23日、The Next Webが「Monday.com is cutting 20 percent of its workforce as it pivots to an AI work platform」と題した記事を公開した。株価が52週高値から約75%下落し、「SaaSpocalypse」とも呼ばれる業界全体の売り圧力に直撃されたMonday.comが、全従業員の約20%、620人規模のレイオフと「AIワークプラットフォーム」への事業転換を同時に発表した。コスト削減なのかAI戦略なのか——問いかけ自体が今のSaaS業界の構造的な苦境を映している。
株価は52週高値から約75%下落、「SaaSpocalypse」の直撃
Monday.comは7月22日(米国時間)、米SEC(証券取引委員会)にForm 6-Kを提出し、レイオフを正式に開示した。同社の共同創業者兼共同CEOのEran Zinman氏はLinkedInへの投稿で「創業以来最も痛みを伴う決断」と表現した。
この発表の背景には、同社株価の急落がある。2026年に入り株価は半値以下に低下し、52週高値からは約75%下落。時価総額は現在約30億ドルまで縮小しており、パンデミック期のSaaSブームで享受していた水準の影は薄い。
業界全体でも「SaaSpocalypse」と呼ばれる売り圧力が続いている。AIエージェントやいわゆる「バイブコーディング(vibe coding)」(AIに自然言語で指示してコードを生成させる開発スタイル)が普及することで、従来型のSaaSツールが陳腐化するという投資家の懸念が、エンタープライズソフトウェア株全般を直撃している構図だ。
「守りではなく攻め」——再編の中身
Zinman氏は今回の再編を「守りの変化ではなく、攻めの変化」と位置づけた。同社は過去9ヶ月で中核ビジョンを「仕事を管理する」から「顧客のために仕事をこなす」へとシフトしており、人間とAIエージェントが同一ワークスペースで協働する「AI Work Platform」の実現を目指すという。
具体的な組織構造の変更は3点だ。
- 管理階層の削減:より少ないマネジメントレイヤーを持つフラットな組織へ
- 自律的なチーム体制:より広い裁量と責任を持つ自律的なチームへの移行
- 新たなGo-to-Marketモデル:顧客がAIを採用する際により近い位置でサポートできる営業・展開体制へ
リストラ費用として4,500万〜5,500万ドルを見込んでおり、うち退職金・福利厚生が3,000万〜3,500万ドル、残りはオフィスの減損処理などが占める。費用の大半は2026年下半期に計上される見通しだ。一方でZinman氏は「削減によって生まれた財源の大部分を、人材・製品・成長への再投資に充てる」とし、採用自体を停止するわけではなく、戦略的な重点領域での採用は継続するとしている。
SaaS各社に共通するパターン
同様の動きはMonday.comに限らない。同じイスラエルのWixは5月に従業員の20%を削減(AIとのシェケル高が圧迫要因)し、AtlassianもCTO交代を伴う1,600人規模のレイオフを3月に実施した。「過去最高水準の売上→大規模な人員削減→浮いた原資をAIへ」という構図は業界全体で繰り返されている。
Monday.com自体の業績が悪いわけではない。2026年第1四半期の売上は3億5,100万ドル(前年同期比24%増)と、2年前なら投資家を喜ばせた成長率を維持している。問題は、それでも「AIに置き換えられるかもしれない」という懸念が株式市場の評価を押し下げている点だ。
「AIウォッシング」という問いかけ
記事は「AI washing(AIウォッシング)」という概念にも言及している。AIを建前に掲げながら実態は別の理由(コスト削減など)で行われる意思決定を指す言葉で、昨今のテック業界で広く使われるようになった批判的な視点だ。
Zinman氏はFAQの中で「今回の決定はコスト削減のためでも、人をAIで置き換えるためでもない」と明言しているが、今回の発表が本質的な戦略転換なのか、それともコスト削減に「AI」というラベルを貼っただけなのかは、市場が判断することになる。
詳細はMonday.com is cutting 20 percent of its workforce as it pivots to an AI work platformを参照していただきたい。