7月22日、Silicon Snarkが「Neo Raised $100 Million to Put a Bouncer on Your AI Agents」と題した記事を公開した。AIエージェントのエンドポイントセキュリティに特化したスタートアップ「Neo」が1億ドルの資金調達をステルスから抜け出す形で発表したことを伝えている。この問題の核心は逆説的だ——侵入者を防ぐのではなく、正規の認証情報を持ち、正規に見える操作をマシンスピードで実行する承認済みソフトウェアをどう制御するか、という全く新しい問いに企業は直面している。
AIエージェントは「正当な認証情報を持つ脅威」になりうる
ボストン拠点のサイバーセキュリティスタートアップNeoが7月20日、ステルス状態から抜け出し、1億ドルの資金調達を発表した。出資者はAndreessen Horowitz、Bessemer Venture Partners、Craft Ventures、Merlin Ventures。創業者はSentinelOne出身のNick WarnerとShlomi Salem、CTOにはEran Shiraziが就いている。設立は2025年だ。
なお、SentinelOneはNASDAQ上場のエンドポイントセキュリティ大手であり、従来型マルウェア検知からAI駆動の脅威対応までを手がける業界の代表的プレーヤーだ。WarnerとSalemがそこでスケーリングを経験してきたという事実は、Neoの創業チームの重みを理解する上で重要な背景となる。
Neoが解こうとしている問題は、従来のエンドポイントセキュリティの文脈では説明しにくい。
従来型のセキュリティツールは「どのプロセスが動いているか」「どのファイルが変更されたか」「既知のマルウェアが侵入していないか」を問う。AIエージェントが絡むと、問いが変わる。エージェントはブラウザ、開発ツール、SaaSプラットフォーム、プラグインを通じて動作し、ユーザーの権限を引き継いで複数ツールを連鎖させ、正規の認証情報で正規に見える操作をマシンスピードで実行する。侵入者が問題なのではなく、承認済みのソフトウェアが未承認のことをするのが問題だ。
エンドポイントに「センサー」を置く戦略
Neoの製品コンセプトは「agentic software control(エージェント型ソフトウェア制御)プラットフォーム」。具体的には以下を対象とした可視化と制御を提供する:
- AIエージェント、アプリケーション、プラグイン、ブラウザ拡張
- MCPサーバー(Model Context Protocol。AIエージェントが外部ツールやデータソースと連携するための標準プロトコル)
- 「自律モード」ボタンが追加された既存エンタープライズソフトウェア
Bessemer Venture Partnersの投資メモによれば、Neoのアプローチの核心はエンドポイントファーストだ。APIログに依存するのではなく、エージェントが実際に動作するデバイスにセンサーを置く。APIログは事後に「何が起きたか」を教えるが、エンドポイント制御は原理上、ツール呼び出しやデータ移動をリアルタイムで遮断できる。
また、Neoは「Neoverse」と呼ぶナレッジベースを持ち、ソフトウェアが何にアクセスできるか・設定が安全かどうかを継続的にカタログ化する。ポリシーは自然言語で記述・適用できるとしている。
ただし課題は明確だ。エンドポイントソフトウェアはOS、ブラウザ、開発環境、レガシーアプリケーションと共存しなければならない。セキュリティツールがラップトップを3%遅くしただけでユーザーは哲学的になる、と記事は皮肉る。
「エージェントセキュリティ」は独立した市場になるか
1億ドルの資金調達は、エージェントセキュリティが独立したカテゴリとして成立するという大きな賭けだ。
競合の構図も整理しておくと、同記事によればAkamaiがエッジ・パブリックインターネット側からエージェントセキュリティに取り組む一方、他ベンダーはID管理、モデルゲートウェイ、ランタイム監視、アプリケーションセキュリティから問題にアプローチしている。
記事はNeoのリスクについて率直に指摘する。既存のエンドポイント・ID・ネットワーク・クラウドセキュリティベンダーはそれぞれ「うちのプラットフォームで対応できる」と主張するだろう。Neoが市場を定義するか、「Advanced」タブに並ぶ一機能になるかは、センサーが既存ツールでは見えないものを本当に見せられるかにかかっている。
ボストンの「制御プレーン本能」
AIエージェントは、セキュリティチームが準備できているかどうかに関係なく、エンタープライズシステムに入り込んでいく。コードリポジトリ、顧客レコード、決済、社内文書にエージェントが近づくほど、可視性とロールバック機能の価値は上がる。業界が「自律性」を売り物にする一方で、企業が求めるのはその周囲の制御だ、という矛盾をNeoは狙っている。
この矛盾に向き合うチームとして、Neoの拠点がボストンである点も記事は強調する。SentinelOneでのスケーリング経験を持つWarner、検知エンジニアリングのSalem、サイバーセキュリティ研究と企業ソフトウェアの双方をカバーするShiraziの組み合わせは、AI・OS・ID・ポリシー・セールスをまたぐこの問題に合致している。同社は年内に20人以上を採用する計画と、Boston Business Journalは報じている。
詳細はNeo Raised $100 Million to Put a Bouncer on Your AI Agentsを参照していただきたい。